高速道路の側面には、騒音対策として「遮音壁」が設置されています。コンクリート製やガラスのように透明なものなど素材や形状はさまざまですが、どのような種類があるのでしょうか。

高速道路に設置された遮音壁の使い分け

 高速道路はバイクをはじめとした多くの車両が高速で行き来することから、一般道よりも騒音が起こりやすい傾向にあります。

 そんな道路を走行する騒音を低減させるための取り組みとして、NEXCOなどの高速道路を管理する企業は、環境省の定める環境基準を超える箇所を中心に、道路の状態に合わせて高機能舗装の舗設や遮音壁の設置、環境施設帯の整備などを検討、実施しています。

 なかでも遮音壁は騒音に対する最も一般的な対策となっており、主に高架道路や高速道路に設置されています。

高速道路の遮音壁には様々な種類がある
高速道路の遮音壁には様々な種類がある

 ちなみに、高速道路に初めてコンクリート製の遮音板が設置されたのは、昭和38年の名神高速道路。その後、徐々に設置数が増やされています。

 国土交通省近畿地方整備局の公式サイトによると、遮音壁は走行するクルマから直接伝わる騒音が5デシベル程度、低減される効果があるそう。ただし、遮音壁の設置については沿道の住居への日照や沿道の交通状況、土地の利用状況など、設置に伴う周囲への影響を総合的に判断する必要があるようです。

 そして現在高速道路に設置されている遮音壁は、コンクリートでできた堅牢なものや、ガラスやアクリルが使用された透明なものなど多種多様。一体、どれくらいの種類があるのでしょうか。

高速道路の遮音壁の種類は大きく分けて3タイプ
高速道路の遮音壁の種類は大きく分けて3タイプ

 遮音壁に用いられる遮音板は大別すると「反射型」と「吸音型」、「先端改良型」の3つのタイプが存在。まず反射型はコンクリートなどでできており、道路の片側だけに人家があり、音が反射しても問題のないところに設置されます。

 高架橋が長区間連続する場合は、遮音壁による閉塞感からの解放や眺望確保のために、アクリルやポリカーボネートといった透光性能を有する遮音板を採用する場合もあるそう。ただ、透光性遮音板は主に沿道の日照阻害対策として使用されており、現状ではコストも高くなることから、景観対策として採用する場合は十分に検討したうえでの採用となるようです。

 なお、透光部材には太陽光や温度、湿度や雨といった自然環境に耐えうる耐候性に加え、擦れても傷がつきにくい耐擦傷性の基準を満たす材料が求められます。

 これらには必要に応じて防汚処理が施されますが、粉塵や排ガスなどによって徐々に透光性能が低下するという課題もあるため、前述のコスト面を踏まえても、採用にはかなりの条件が課されます。

高速道路の遮音壁に採用される素材は周辺の環境によって決定される
高速道路の遮音壁に採用される素材は周辺の環境によって決定される

 吸音型の遮音壁は、現在多く用いられているタイプ。金属製で表面に穴が空いており、中に詰めてあるガラス繊維によって音を吸収する仕組みです。主に道路の両側に人家がある所など、音が反射すると問題がある箇所に設置される傾向にある素材となっています。

 そして先端改良型は、ノイズリデューサーといった部材を遮音壁先端に設置することで遮音性能を向上させたもの。遮音壁の高さを抑えて日照障害や電波障害などの問題を軽減させたり、事故などで破損した場合も部分的な取り替えが可能な構造になっていたりと、大きなメリットがあるタイプと言えるでしょう。

 このように、近年は各種性能や経済性、耐久性などに優れたさまざまな材質を用いた遮音壁が開発されており、周辺地域の地形や景観などを総合的に検討したうえで採用されています。

 遮音壁が高いほど外に漏れる音を遮る効果があるため低くすると音が外に漏れてしまうので、景観を良くするために遮音壁を低くすることは難しいなど、設置場所によって問題は様々。コスト面の問題もあるため、一概にタイプを統一することは難しいようです。