バイクのカタログや、メーカーHPに掲載されている「スペック」や「仕様」、「諸元」の表には、購入時の参考やライバル車との性能比較など、役立つ情報が含まれています。長い文字列の「エンジン種類」に含まれる「気筒数と配列」について解説します。

高回転、高出力を狙って気筒数が増えた!

 スペック表の「エンジン種類」の項目を見ると、バイクメーカーによって多少違いがありますが、たとえばヤマハの場合は「原動機種類」と「気筒数配列」の2項目に分けて表記しています。この「気筒数配列」の部分が、そのエンジンの基本的な形状を表しています。実際の表記や口頭で呼ぶ場合は「直列4気筒」や「V型2気筒」のように「配列→気筒数」の順が一般的です。まずは「気筒数」から見てみましょう。

スペック表の「エンジン種類」を見ると、ホンダ「CB1300 SUPER FOUR」の気筒数と配列は「直列する4気筒」となる
スペック表の「エンジン種類」を見ると、ホンダ「CB1300 SUPER FOUR」の気筒数と配列は「直列する4気筒」となる

 バイクやクルマの内燃機関(エンジン)は、ガソリンと空気を混ぜた混合ガスをシリンダー内に吸い込み、ピストンで圧縮して点火・爆発し、そのエネルギーを回転力に変換しています。

 このシリンダー(=筒)とピストンは、4ストローク・エンジンであれば動弁系などの1セットが「1気筒」になります。これが2セットあるエンジンは2気筒、3セットあれば3気筒……となるわけです。ちなみに1気筒のエンジンは「単気筒」と呼ぶのが慣例です。

 同じ排気量なら、気筒数が多い方が高回転までエンジンが回ります……と言うより、ハイパワーを得るために高回転まで上げるのが目的で多気筒化が進みました。(同排気量なら)気筒数を増やせば1気筒当たりの排気量が少なくなるので、ピストンなど各部品が小型・軽量になり、圧縮行程では反発力が小さくなり、専門的にはピストンが上下するスピードも遅くなるため、結果として高回転まで回しやすくなるからです。

【図解】4ストローク・エンジンの構造。図はDOHC方式の単気筒(1気筒分)で、このセットがいくつあるかが気筒数の表記になる
【図解】4ストローク・エンジンの構造。図はDOHC方式の単気筒(1気筒分)で、このセットがいくつあるかが気筒数の表記になる

 ただし気筒数が増えるほど、各部品が小さくなるとはいえエンジン全体のサイズは大きくなって重量も増え、高回転・高出力になるぶん燃費も悪くなります。また部品点数や組み立てる手間が増えるため、車両の価格が高くなる傾向があります。

シリンダーの配列が、乗り味に影響する

 エンジン配列は単気筒エンジンを基準に、シリンダー(気筒)を直線的にふたつ並べたものが直列2気筒となり、現行市販モデルでは直列3気筒、直列4気筒、直列6気筒まで存在します。ちなみに日本メーカーではホンダ、ヤマハ、スズキは「直列」と表記し、カワサキだけが「並列」と呼んでいますが、配列的には同じものを指しています。

【図解】エンジンの気筒数も配列も、まずは単気筒が基本。単気筒をふたつ並べると直列(並列)2気筒になる
【図解】エンジンの気筒数も配列も、まずは単気筒が基本。単気筒をふたつ並べると直列(並列)2気筒になる

 単気筒エンジンはコミューター等の小排気量車から250ccクラスのライトスポーツ、軽さが求められるオフロードモデルが多く採用しています。

 直列2気筒は250ccから1000ccオーバーまで、現在は国内外を問わずもっともメジャーなエンジン型式になりつつあります。それぞれの気筒が爆発するタイミング(爆発間隔)に様々な種類があり、乗り味が多様化しているのも特徴です。

 直列3気筒は、日本ではヤマハの「MT-09」や「XSR900」などが搭載し、海外メーカーもトライアンフやMVアグスタなどが採用しています。

 そして日本のお家芸ともいえる直列4気筒は、排気量を問わず高回転・高出力エンジンの主軸を担ってきましたが、現在はスーパースポーツや大排気量モデルが中心で減少傾向……。ただしカワサキが250/400ccクラスで復活させ、人気復活の兆しもあります。

 直列6気筒も、かつてはホンダやカワサキが作っていましたが、現在はBMWモトラッドの大型ツアラー「K1600」シリーズのみになっています。

 ふたつのシリンダーをV型に配置したのがV型2気筒で、このエンジンを横並びに配置するとV型4気筒になります。V型エンジンは直列エンジンに比べ、気筒数が同じならエンジン幅を狭くできるため、車体もスリムでシャープな乗り味(ハンドリング)に作れます。かつては日本メーカーもV型2気筒やV型4気筒エンジンを数多く作っていましたが、現在国内販売モデルで生産しているのはスズキの「Vストローム1050/650」シリーズと「SV650/X」のV型2気筒のみです。

【図解】ふたつのシリンダーをV型に配置したV型2気筒と、向かい合わせた水平対向2気筒
【図解】ふたつのシリンダーをV型に配置したV型2気筒と、向かい合わせた水平対向2気筒

 V型2気筒と言えばハーレーダビッドソンが有名です。またドゥカティはVの挟み角が90°で、右側から見るとシリンダーがL字型に見えるため「Lツイン」と呼ぶこともあります。またV型4気筒はドゥカティやアプリリアが生産しています。

 そして、ふたつのシリンダーを向かい合わせて配置するのが、BMWモトラッドでお馴染みの水平対向2気筒で、高い安定性と機敏な乗り味を併せ持っています。その水平対向2気筒を3連装したような配置が、四輪車のポルシェでお馴染みの水平対向6気筒エンジンで、ホンダのゴールドウイングが搭載しています。

気筒数と配列が、バイクの性格とルックスを決める

 エンジンは「冷却方式」や「動弁方式」、バルブ数でもエンジンの特性が変わりますが、もっとも影響するのが、この「気筒数と配列」でしょう。同じ直列配置でも気筒数によってエンジンのフィーリングだけでなく、バイクの乗り味(ハンドリング)もけっこう異なり、V型や水平対向になるといっそう変わります。

水平対向2気筒エンジン(通称:ボクサーツイン)を搭載するBMW Motorrad「R 1250 R」
水平対向2気筒エンジン(通称:ボクサーツイン)を搭載するBMW Motorrad「R 1250 R」

 またバイクは四輪車と違ってエンジンが剥き出しなので、エンジンの造形自体がバイクのスタイル全体に大きく影響することは言うまでもありません。乗り味もルックスも、自分に合ったエンジンを見つけるのが、バイクライフを豊かにする要素のひとつでしょう。