ナンバー付きの電動キックボードが徐々に世の中へ浸透し始めていますが、交通ルールやマナーに関するトラブルの事例は後を絶ちません。法も改正されましたが、まだまだ理解していない人は多い様子。 では、電動キックボードと原付一種バイクには交通ルールに違いはあるのでしょうか。

無法地帯!?電動キックボードの交通マナーの悪さが問題に

 自転車や原付一種バイクのように気軽に乗ることができる電動キックボードは、便利な交通手段として近年人気を集めています。しかし、運転をする際には原付一種バイクと同じように、二段階右折やヘルメットの着用義務、さらには免許証が必要なのかなど、明確なルールがよくわからないという人もいる多いと思います。

 実際に、犬の散歩に電動キックボードを利用したり、しゃがみながら運転するなどの危険行為がニュース報道されているのを目にすることがあるでしょう。電動キックボードのなかには原付並みにスピードが出るモデルもあり、安易な気持ちで乗ると大きなケガや事故になりかねません。

 そこで、電動キックボードと原付一種バイクの、交通ルールの違いをまとめてみました。

定格出力0.60キロワットの電動キックボードは原動機付自転車(原付一種)と同じ車両区分に該当する。
定格出力0.60キロワットの電動キックボードは原動機付自転車(原付一種)と同じ車両区分に該当する。

 2023年5月現在、定格出力0.60キロワットの電動キックボードは原動機付自転車(原付一種)と同じ車両区分に該当します。

 しかし同年7月1日から、改正道路交通法の一部が施行されることが決まりました。

 それによると、電動キックボード等について、原付一種の車両区分が細分化。「特定小型原動機付自転車」が新設され、新たな交通ルールが適用されることとなります。そのため、現段階での電動キックボードは、原付一種と同じルールが適用されており、通行が認められているのは車道のみで、歩道を走る事はできません。

 また、公道で運転する際は免許証が必要で、ヘルメットの着用も必須です。

現状の電動キックボードは、原付とまったく同じルールが適用されている
現状の電動キックボードは、原付とまったく同じルールが適用されている

 そのほかにも、前照灯やバックミラー、方向指示器などの保安基準を満たす必要があり、ナンバープレートの登録や取り付け、自賠責保険への加入をしなければ、公道を走行することはできません。さらに、原付独自のルールである、二段階右折や法定速度30km/hも同様で、遵守る必要があります。

 つまり現状の電動キックボードは、原付とまったく同じルールが適用されているというわけです。

 ただ、電動キックボードのシェアリングサービスをおこなっているLUUPの電動キックボードの場合、小型特殊自動車扱いになっているため交通ルールが異なります。

 利用する場合は、事前に公式サイトでルールを十分に読み込んで確認するようにしましょう。

新たに施行される電動キックボードの交通ルールとは?

 では、7月1日から施行される電動キックボード等に関する新ルールは、どのような内容になっているのでしょうか。

2023年7月1日から電動キックボードの運転に運転免許は不要でヘルメットの着用は努力義務となる
2023年7月1日から電動キックボードの運転に運転免許は不要でヘルメットの着用は努力義務となる

 施行後は、電動キックボード等の車両区分は「一般原動機付自転車(以下、一般原付)」と「特定小型原動機付自転車(以下、特定小型原付)」に分けられます。

 そして一般原付はこれまでの原付ルールとまったく同じですが、特定小型原付には新たなルールが設けられています。原付ルールと大きく異なるのは、運転免許は不要でヘルメットの着用は努力義務となる点。ただし、16歳以上でなければ運転は認められません。

 また、特定小型原付として公道を走行するには、道路交通法施行規則で定める以下の基準をすべて満たす必要があります。

 ・車体の大きさは長さ190cm以下、幅60cm以下
 ・定格出力が0.60キロワット以下の電動機であること
 ・時速20km/h以下を超える速度を出せない構造であること
 ・走行中に最高速度の設定変更ができないしくみであること
 ・AT機構がとられていること
 ・緑色の最高速度表示灯を点灯させること

 さらに、前照灯やバックミラー、方向指示器などの道路運送車両の保安基準に適合していなければなりません。そのほか、自賠責保険への加入や、ナンバープレートの装着も必須です。

特定小型原付として電動キックボードで公道を走行するには自賠責保険への加入やナンバープレートの装着が必須。
特定小型原付として電動キックボードで公道を走行するには自賠責保険への加入やナンバープレートの装着が必須。

 もし上記の基準をひとつでも満たしていない場合は、見た目が電動キックボードであっても一般原付に該当し、原付の交通ルールが適用されます。

 また、特定小型原付は歩道の走行は認められておらず、通行できるのは車道と自転車専用レーンとなるので、走行する際は道路の左側を通行する必要があります。特に住宅街など車両通行帯のない道路では、左側端を走行することが必須。車両通行帯のある道路においても、原則として一番左側の車両通行帯の左側に寄って走行しなければなりません。

 では、特定小型原付の右折方法はどうなるのかというと、原付ルールで二段階右折が必要となる場所は、信号機などで交通整理がおこなわれている交差点や、片側3車線以上ある交差点。そのほか、「原動機付自転車の右折方法(二段階)」の標識がある交差点も対象です。

 一方で、特定小型原付で右折する際は、すべての交差点で二段階右折をしなければなりません。つまり、片側一車線であろうと道路幅の大きさ、信号の有無にかかわらず二段階右折が必須です。

 二段階右折のやり方は原付と基本的に同様で、信号のある交差点では交差点の30m手前で右ウインカーを出します。そして青信号で直進し、その先で向きを変えて、前方の信号が青に変ったら進みます。信号がない交差点は、周囲の安全を確認して交差点の30m手前で右ウインカーを出します。

 そして、できるだけ道路の左端に寄りながら交差点を直進し、交差する道路を渡り切った側で速度を十分に落としてから曲がります。

 クルマや原付一種以外のバイクと同様に、小回りで右折をすると違反になるので注意してください。

※ ※ ※
 
 法改正により2023年7月1日から、電動キックボードに関するルールが細分化され、新たに創設される特定小型原付では、すべての交差点で二段階右折をしなければなりません。これから電動キックボードの購入を検討している人は、それぞれのルールをしっかりと理解した上で運転するようにしましょう。