排気量を上げることでエンジンのパワーを上げるのが「ボアアップ」です。エンジンチューニングにはさまざまな技法や種類がありますが、馬力の源である排気量を上げるというのは考え方としてはじつにシンプルなものだと言えるでしょう。

「内径×行程」のうち、内径(=ボア)をアップする

 ボアアップとは、シリンダーの直径を広げて排気量をアップさせるチューニング手法です。エンジンの排気量はシリンダーの内径(ボア)とピストンが動く距離(行程=ストローク)によって決まります。

筆者(佐賀山敏行)がかつて乗っていたYAMAHA SR400改534。500純正クランクでストローカー、さらにボーリング加工でボアアップを施し、排気量を534ccにアップしています
筆者(佐賀山敏行)がかつて乗っていたYAMAHA SR400改534。500純正クランクでストローカー、さらにボーリング加工でボアアップを施し、排気量を534ccにアップしています

 例えばヤマハ「SR400」の場合、内径は87.0mm、行程は67.2mmです。つまり内径87.0mmのシリンダー内をピストンが67.2mm動くということ。すると1回のストロークで399ccの混合気をシリンダー内に吸い込むのです。

 ちなみに計算式は『(内径×1/2)の2乗×円周率×行程×気筒数』となります。SR400にφ89mmピストンを入れた場合、排気量は418ccにアップするという計算です。

シリンダーボーリングやスリーブ打ち替えが必要

人気モデルであれば、パーツメーカーからボアアップキットが発売されていることもあります。その場合、ボーリングやスリーブの打ち替えなどは不要です
人気モデルであれば、パーツメーカーからボアアップキットが発売されていることもあります。その場合、ボーリングやスリーブの打ち替えなどは不要です

 しかし、シリンダー内径とピストン径のクリアランスは車種によって多少異なりますが、多くの場合0.06〜0.08mmと、ほぼ隙間はありません。そのため、ボアアップを行うためにはシリンダーボーリングやスリーブの打ち替えなど、エンジンに大幅な加工が必要です。

 その結果、シリンダーの内壁が薄くなり、エンジンの耐久性が低くなるなどのデメリットも生じます。

筆者(佐賀山敏行)がかつて乗っていたHonda DAX50改88。もちろん原付二種登録済みです
筆者(佐賀山敏行)がかつて乗っていたHonda DAX50改88。もちろん原付二種登録済みです

 また、先述のSR400の場合、399ccから418ccへ排気量がアップすることで必要な運転免許が変わります。他にも125ccを150ccにアップすれば、免許区分はもちろん、バイク自体にかかる税金が変わりますし、車両区分も原付二種から軽二輪クラスに変更しなければなりません。

 排気量をアップさせることでパワーを上げる……その考え方は非常にシンプルですが、実際の作業やその後の手続きなどは意外と大変だと言えるでしょう。

行程をアップするのは「ストローカー」

排気量アップのもうひとつの方法が行程を長くする=ストロークアップです。ヤマハ「SR400」に「SR500」の純正クランクシャフトを装着することで排気量を499ccまで拡大できます
排気量アップのもうひとつの方法が行程を長くする=ストロークアップです。ヤマハ「SR400」に「SR500」の純正クランクシャフトを装着することで排気量を499ccまで拡大できます

「排気量アップ=ボアアップ」と思っている人がいますが、これは間違いです。ボアアップはあくまでも内径を広げることを指します。

排気量アップのもうひとつの方法が行程を長くする=ストロークアップです。ヤマハ「SR400」に「SR500」の純正クランクシャフトを装着することで排気量を499ccまで拡大できます
排気量アップのもうひとつの方法が行程を長くする=ストロークアップです。ヤマハ「SR400」に「SR500」の純正クランクシャフトを装着することで排気量を499ccまで拡大できます

 SR400の定番チューニングのひとつが500cc化です。SR500の純正クランクシャフトを装着することで排気量を499ccにアップするのですが、クランクを交換するということは、行程を長くするこということ。この場合は「ボアアップ」ではなく「ストローカー」と呼びます。