日常生活の気軽な乗り物として活躍する自転車ですが、その快適な走りを支えているのが、じつは小指の先ほどの小さなゴムパーツだということは意外と知られていないかもしれません。縁の下の力持ち、「虫ゴム」について解説します。

ただのゴム片じゃない、縁の下の力持ち

 自転車のペダルを漕いだ時に、軽快に進むための最重要ポイントのひとつとして「タイヤの空気」が挙げられます。もちろん車体の形状や軽さなども影響してきますが、タイヤの中に収められたチューブの適正空気圧が保たれていることで、走行中の負荷や衝撃が吸収され、スムーズなタイヤの転がりが実現されます。そんな重要な役割を果たしているチューブから、空気が漏れないように抑えているのが「虫ゴム」と呼ばれる小さなゴムパーツです。

「プランジャー」に被せてある小さなゴムのチューブが「虫ゴム」
「プランジャー」に被せてある小さなゴムのチューブが「虫ゴム」

 自転車のチューブは、空気を入れる部分の「バルブ」の形状によって、英式・仏式・米式の3タイプに分かれますが、「虫ゴム」が使われているのは英式バルブのみです。「じゃあ自分の自転車は違うかも」と、思うかもしれませんが、英式バルブは日本国内で最も普及していて、市販されているママチャリ(シティサイクル)は基本的に英式バルブが使われています。

 英式バルブの仕組みはいたってシンプルです。チューブから「バルブステム」という鉄の筒がニョキッと出ており、そこに「プランジャー」とよばれる鉄やアルミ製の“空気を入れる所(筒)”が刺さっていて、それをヤスリのようにザラついた「袋ナット」で押さえつけているだけです。

 この「プランジャー」に巻き付いているゴムが、「虫ゴム」です。黒や黄色、白、緑などさまざまな色がありますが、役目は同じです。“空気を入れる所”と説明した「プランジャー」は単純な筒ではなく、先端は閉じていて筒の横に穴が開いた形状になっています。ここに「虫ゴム」を被せて密接させることで、チューブの中からの空気漏れを防いでいます。

 普段はプランジャーの横の穴に密着している「虫ゴム」ですが、勢いよく空気を吹き込むとぶわっと開いてチューブの中に空気が入り、吹き込む空気が止まると再び密着して穴を塞いでくれます。とても原始的で単純な仕組みですが、それゆえに洗練され、パーツも安価に抑えられたため、英式バルブの普及に貢献したと言えます。

 この「虫ゴム」が劣化して伸びきってしまったり、破れたりすると空気漏れを防ぐことができず、パンクと同じような状況が起こります。つまり、この小指の先ほどのサイズで、知らない人が見たらただのゴム片にしか見えないような「虫ゴム」が、自転車が快適に走ってくれるかどうかの命運を握っている、ということになります。

 ちなみに、自転車屋に持ち込まれるパンク修理の何割かは、チューブに開いた穴ではなく「虫ゴム」の劣化による空気漏れが原因です。

「虫ゴム」の交換はパンク修理よりも簡単で、劣化した「虫ゴム」を新品に差し替えるだけです。最近では100円ショップなどでも販売しており、自分でも簡単に作業できます。「パンクかも」と思った時は、まず「虫ゴム」をチェックしてみましょう。

 ちなみに、バルブコアに刺さったプランジャーを押さえる役目の「袋ナット」も重要です。袋ナットが緩んでいると、たとえ「虫ゴム」が正常でも空気が徐々に漏れていきます。空気を入れたら、袋ナットがしっかり締まっているかどうかの確認も忘れずに。

 なお、バルブの先端に被せてあるゴム製のキャップですが、空気漏れを防ぐ機能はなく、これが無くても空気が抜けることはありません。細かい砂粒や水などの侵入から内部の劣化を防ぐ役割があるので、あった方が安心です。