普通自動二輪免許で乗れるトライアンフの新型モデル「スピード400」と「スクランブラー400X」について、ジャーナリストの伊丹孝裕さんが解説します。

バランスの良さが光る「スピード400」

トライアンフ・モーターサイクルズから完全新規開発のモデル「SPEED 400(スピード400)」と「SCRAMBLER 400 X(スクランブラー400X)」が登場。先日、都内で発表会が開催され、会場周辺をひとまわりできたため、報告します。

トライアンフ「スピード400」に乗る筆者(伊丹孝裕)
トライアンフ「スピード400」に乗る筆者(伊丹孝裕)

 スピード400とスクランブラー400Xは2023年6月に本国イギリスで発表され、日本への上陸を心待ちにしていた人も多いでしょう。なぜなら、車名の数字からもわかる通り、いずれも400cc(正確には398cc)のエンジンを搭載。二輪免許所持者の中、最も取得率が高い普通自動ニ輪免許(125cc超〜400cc以下)で乗れる海外モデルだからです。

トライアンフ「スクランブラー400X」に乗る筆者(伊丹孝裕)
トライアンフ「スクランブラー400X」に乗る筆者(伊丹孝裕)

 近年は、この排気量帯に属する輸入車が増えてきたとはいえ、なかなか手を出しづらかったところに、全国各地にディーラー網を敷くトライアンフが進出。しかも、戦略的な価格が掲げられているため、国産メーカーにとってもかなりの脅威になりそうです。

 今回は各車30分足らずの時間でしたが、実際に乗ってみた第一印象をレポート。ストップ&ゴーを繰り返す都内のスローペースゆえ、エンジンやハンドリングの評価は限定的になったことをおことわりしておきます。

トライアンフ「スピード400」と筆者(伊丹孝裕)
トライアンフ「スピード400」と筆者(伊丹孝裕)

 そんな中でも、スピード400は車体のサイズ、重量、ライディングポジション、操作系のタッチ、パワー感などにマイナス要素はなく、すべてがほどよくバランス。サッとまたがって気軽に走り出すことができ、その時の乾いた排気音や適度な鼓動感に安普請なところは見受けられません。

 乗車中に視界に入る燃料タンクやメーターまわり、灯火類などの質感は高く、トライアンフらしいシックなイメージにマッチ。サスペンションやブレーキキャリパーこそ、製造国であるインドのサプライヤーのものながら、その作動フィーリングに取り立ててネガはありませんでした。

 ハンドリングもナチュラルで、入力に対して軽やかに反応。純正装着タイヤにはピレリのディアブロロッソIIIが選択されていることもあり、素早い倒し込みやレーンチェンジにも高い接地感をともなって追従してくれます。

 足つき性に優れる790mmのシート高と、171kgの軽い車重は街中でも持て余す場面はなく、モダンクラシックのカテゴリーにありながら、キビキビスイスイと走れる、純然たるスポーツバイクに仕上がっています。

トライアンフ「スピード400」
トライアンフ「スピード400」

 それゆえ、少々アンバランスに感じるところもありました。車体の反応のよさにつられてスロットル開度がつい大きめになるのですが、9000rpm付近(タコメーターの数字とバーグラフの動きが大雑把で定かではない)で唐突に回転がカットされるのです。

 そこまでの吹け上がりはシャープなため、慣らしモードが搭載されているのかと思いきや、どうやら普通にレブリミッターが作動している模様。タコメーターの数字自体は、12(=12000rpm)まで刻まれ、さらにその上にレッドゾーンを思わせる表示があるため、盛り上がった気持ちにやや水を差される感覚が否めません。

 他には、バーエンドミラーの横方向の視野が若干狭いかな、という程度で、スピード400の完成度は及第点を大きく超えていると言えるでしょう。

対して「スクランブラー400X」の完成度は?

トライアンフ「スクランブラー400X」
トライアンフ「スクランブラー400X」

 では、スクランブラー400Xはどうか。前後に17インチホイールを組み合わせるスピード400に対し、こちらは前に19インチを採用。細身のホイール幅とサスペンションストロークの延長などによって、走破性を高めた仕様です。

 また、タイヤはメッツラーのカルーストリートに換装され、シート高は45mmアップの835mm、車重は9kgプラスの180kg、ホイールベースは45mmロングの1420mmと、サイズがひとまわり大きくなっています。

トライアンフ「スクランブラー400X」に乗る筆者(伊丹孝裕)
トライアンフ「スクランブラー400X」に乗る筆者(伊丹孝裕)

 ハンドリングにもそれはあらわれ、スピード400がスパッと寝る場面でも、スクランブラー400Xはゆったりと、一定の手応えをともなって旋回を開始。タイヤからはゴツゴツとした接地感とノイズが伝わってきます。

 もっとも、こちらはハードな走りに備えたモデルであり、その武骨さが頼もしく感じられるほど。足つき性に問題がなければ、よりアップライトなライディングポジションのおかげで、おおらかな気分で流すことができます。

トライアンフ「スクランブラー400X」。ブレーキのフィーリングに大きなネガを感じました
トライアンフ「スクランブラー400X」。ブレーキのフィーリングに大きなネガを感じました

 ただし、ひとつ大きなネガがあり、それがブレーキの容量不足です。特にフロントが顕著で、レバーに入力しても思ったような減速感を得られず、タッチはスポンジーそのもの。そこからググッと握り込んでようやく制動力が立ち上がってくる味つけで、現代的とは言えません。ブレーキディスクは、スピード400のφ300mmからφ320mmへ大径化されているものの、パッドが異なり、それもなんらかの影響につながっているようです。

 好意的に解釈しようとすれば、不整地でのコントロール性を狙っているのかもしれませんが、アスファルト上でのハイペースを思えば、この特性は疑問。400Xに試乗した他の幾人かに聞いてみると、テスト車両によっても意見がまちまちで、もしも個体差がそれほどあるならば、それはそれで問題でしょう。

 また幾人かは、車両のオドメーターがほとんど進んでいない、つまり完全なる新車だったことを差し引いていましたが、一般のユーザーは誰しもがそこから走り出すわけで、特にエントリー層やビギナー層も狙うモデルなら、そういう部分にこそ、きちんと配慮が行き届いているべきだと考えます。

トライアンフ「スクランブラー400X」(左)と「スピード400」(右)
トライアンフ「スクランブラー400X」(左)と「スピード400」(右)

 いずれにしても、両モデルとも高いファッション性があり、基本的には扱いやすさもパフォーマンスもお値段以上。現段階ではなんとも言えないクオリティコントロールに関しては、もう少し時間と距離を重ね、あらためて評価したいと思います。

トライアンフ「スクランブラー400X」。ブレーキのフィーリングに大きなネガを感じました
トライアンフ「スクランブラー400X」。ブレーキのフィーリングに大きなネガを感じました

 発売は2024年1月26日から全国の正規販売店で始まっており、価格はスピード400が69万9000円(消費税10%込)、スクランブラー400Xが78万9000円(消費税10%込)。車体色は、それぞれ3色ずつ用意されています。