トライアンフ「SPEED 400(スピード400)」と「SCRAMBLER 400 X(スクランブラー400エックス)」は、2023年6月に本国イギリスで発表され、日本では2024年1月26日に発売開始された排気量400ccクラスの話題の新開発モデルです。発売直後にスペインで行なわれたワールドローンチに参加し、イギリス本社のスティーブ・サージェント氏にその本質を聞いてみました。

400ccクラスに新型2モデルを投入したトライアンフ

「トライアンフから400ccクラスのモデルが発表される」。2023年6月、そんなニュースが飛び込み、世界中で話題になりました。そのタイミングで僕(筆者:小川勤)は「スピード400」と「スクランブラー400X」の発表会が行なわれるイギリスへ飛び、現車を確認。発表会では試乗はできませんでしたが、その質感の高さに随分と驚かされました。

「TR(トロフィー)」シリーズと名付けられたエンジンは、排気量398.15ccの新設計。40psを発揮するDOHC4バルブの単気筒です。フィンガーフォローワーバルブトレインなどスポーツバイクならではの機構を設け、高回転でのパフォーマンスも重視しています。最大トルクは37.5Nm、ミッションは6速です
「TR(トロフィー)」シリーズと名付けられたエンジンは、排気量398.15ccの新設計。40psを発揮するDOHC4バルブの単気筒です。フィンガーフォローワーバルブトレインなどスポーツバイクならではの機構を設け、高回転でのパフォーマンスも重視しています。最大トルクは37.5Nm、ミッションは6速です

 そして2024年初頭にこの2台は日本にも上陸し、発表会も実施されました。発表会の直後からトライアンフのWEBサイトへのアクセスが急騰しているそうです。

 確かに、これまで400ccクラスと言えば国産メーカーが力を入れていたセグメント。そこへ見た目はもちろん、価格もパフォーマンスも魅力的なトライアンフの存在は、多くのライダーに大きなインパクトを与えたことでしょう。

 国内の発表会では、僕も「スピード400」と「スクランブラー400X」にそれぞれ10分ほど試乗。ただ、バイクは新車で各部にアタリがついておらず、なかなか本質を見極めるのが難しかったのが正直なところ。

 早々に切り上げてその2日後にワールドローンチが開催されたスペインのバレンシアを訪れました。トライアンフの新章がスタートするこのタイミングで、本国のスタッフにも色々と話を聞いてきました。

スタイルはクラシック。ハンドリングはとてもスポーティ

 試乗はバレンシアの市街地を抜けワインディングへ、途中ダートも走るルートです。エンジンは「スピード400」と「スクランブラー400X」ともに共通で、市街地では3000〜6000rpmを常用するイメージ。単気筒らしいパルス感のあるエキゾーストノートを楽しみながら、スロットルを開けます。「単気筒らしい」と言いつつもレスポンスは並列ツイン並みに良く、かなりの速さも披露してくれます。

ワールドローンチが開催されたバレンシアで、トライアンフ新型「スピード400」に試乗する筆者(小川勤)。前後17インチホイールを装備し、ワインディングロードではかなりの速さも披露してくれました
ワールドローンチが開催されたバレンシアで、トライアンフ新型「スピード400」に試乗する筆者(小川勤)。前後17インチホイールを装備し、ワインディングロードではかなりの速さも披露してくれました

「スピード400」の車格はかなりコンパクト。車重171kgでシート高790mmの車体は、どんなシチュエーションでも扱いやすさが光ります。一方の「スクランブラー400X」は車重180kgでシート高は835mmと、数値を見ると高めですが、シート幅が狭いため身長165cmの僕でも不安なシチュエーションはありませんでした。

 ハンドリングはタイヤサイズとフレームの違いが生み出しており、「スピード400」はその車名の通り、スポーティでバイク自身が曲がりたがる印象。

 対して「スクランブラー400X」はおおらかです。ツーリングの途中に林道などを組み入れたい方は迷わず「スクランブラー400X」を選ぶのが良いでしょう。

フロント19インチホイールを装備するトライアンフ新型「スクランブラー400X」は、ワインディングからダートまで、おおらかな乗り味で楽しませてくれました
フロント19インチホイールを装備するトライアンフ新型「スクランブラー400X」は、ワインディングからダートまで、おおらかな乗り味で楽しませてくれました

 また、ワインディングではかなりのアベレージまで試しましたが、スポーティさで2台に優劣はありません。スポーツ性のキャラクターは異なりますが、アベレージを上げても2台ともサスペンションやタイヤはしっかりと路面を追従。ブレーキやスロットルでの車体姿勢のコントロールも容易でした。

 400ccクラスと言うと、キャリアの浅いライダーに向けている印象が強いカテゴリーですが、この2台はベテランのダウンサイジングもしっかり想定。それを見越したハンドリングの作り込みがとても好印象でした。

イギリス本社のスティーブ・サージェントさんに話を聞いてみました

 今回の試乗会には、トライアンフのチーフ・プロダクト・オフィサーのスティーブ・サージェントさんも参加。色々と話を聞いてみました。

トライアンフのチーフ・プロダクト・オフィサーのスティーブ・サージェントさん(左)と筆者(右/小川勤)
トライアンフのチーフ・プロダクト・オフィサーのスティーブ・サージェントさん(左)と筆者(右/小川勤)

──「スピード400」と「スクランブラー400X」はインドのバジャージで生産していますね。インドでは昨年から先行発売していましたが、どんな声が上がりましたか?

「バジャージとパートナーシップを結んだのは、その生産能力からです。開発はイギリスで行なっています。現在はタイの自社工場やブラジルなどでも生産をしています。

 インドはとても大きなマーケットで、大きなチャンスがあります。乗った誰もがパワーに驚いていましたね。ライバルの350ccクラスはパワーが低いですから。

 またパワーだけでなく、非常に広いパワーバンドにも驚いていました。販売はとても好調で、現在は月産5000台ですが、2カ月後には月産1万台に増やします」

400ccクラスだけれど、一目でトライアンフとわかる高級感は誰もが納得のクオリティ。この高い品質と戦略的な価格をバランスさせることに、とても苦労したそうです
400ccクラスだけれど、一目でトライアンフとわかる高級感は誰もが納得のクオリティ。この高い品質と戦略的な価格をバランスさせることに、とても苦労したそうです

──どの国での反応が良かったですか?また、どんなキャリアのライダーからの声が多かったですか?

「世界中で大きな反響がありました。25〜35歳くらいの声が大きく、それは興味深いものでした。しかし、アメリカ、イギリス、フランスの年配のライダーからの声が想像以上に多かったのです。彼らはいま乗っているバイクが重くて、押し引きが難しいというのです。しかしトライアンフの新しい2台は軽くて、さらに低いのです。

 願わくば日本の声ももっと大きくなると良いですね(笑)」

──開発において、最も難しかったポイントは?

「競争力のある価格にすることが一番大変でしたね。なぜなら400ccクラスとは言え、誰もがトライアンフというブランドに期待をしているからです。質感とパフォーマンスの追求に尽力しました。トライアンフらしい質感とパフォーマンスを与えつつ、この価格を実現するのはとても大変でした」

トライアンフはインドのバジャージと2020年にグローバルパートナーシップを結びました。それがいよいよ形になり走り出します
トライアンフはインドのバジャージと2020年にグローバルパートナーシップを結びました。それがいよいよ形になり走り出します

──このエンジンを使った、他のバイクに期待していても良いですか?

「もちろん。私たちはこのTR(トロフィー)シリーズのエンジンを手に入れたんです。仕事をしていると『他にこのエンジンで何ができるだろう?』といつも考えます。

 将来のモデルも考えていますが、そのことを語るのはもう少し待ってください(笑)」

※ ※ ※

 インドで先行発売されていた「スピード400」と「スクランブラー400X」は、すでに生産体制を強化。世界中で話題となっているようです。

 2023年、販売台数を前年比21%も向上させたトライアンフ。「400」セグメントへ2機種を導入することで、2024年もその勢いは続きそうです。