モタードといえば、オフロードバイクのようなスタイルを持つオンロードバイクです。何故このようなバイクが登場したのでしょうか? その背景を解説します。

アメリカ生まれ、フランス育ちのレース

 オフロードバイクをベースに、前後17インチホイールとオンロードタイヤを履いているのが、一般的なモタードのイメージです。近年では車両メーカーが純正モデルとしてモタードを発売していますが、そのルーツはカスタムマシン、しかもレースにあります。

2019年にイタリア・ミラノで開催されたバイクの見本市「EICMA」にドゥカティが持ち込んだ「スクランブラー・モタード・コンセプト」。細部は異なるものの、2021年10月に「スクランブラー・アーバン・モタード」として発表され市販化されています
2019年にイタリア・ミラノで開催されたバイクの見本市「EICMA」にドゥカティが持ち込んだ「スクランブラー・モタード・コンセプト」。細部は異なるものの、2021年10月に「スクランブラー・アーバン・モタード」として発表され市販化されています

 一般的には1970年代終わりからアメリカで開催されたレース「スーパーバイカーズ」が、そのルーツと言われています。これはロードレース、モトクロス、ダートトラックなど、さまざまなバイクレースカテゴリーのなかで誰が一番速いかを決める、まさにバイクレースのオールスターゲーム。コースはオンロードとダートの混成です。

 レースを有利に運ぶため、オフロードマシンをベースに前後小径ホイールを装着したオリジナルレーサーが誕生したのです。ちなみに初期のスーパーバイカーズでは、ダートトラックレーサーをベースにしたマシンもあったようです。

 アメリカで人気を博したスーパーバイカーズは、その後ヨーロッパに渡り、特にフランスで大人気となりました。そこでフランス語に訳した「スーパーモタード」が、その名称として使われるようになったのです。

 そして2000年代に入ると、スーパーモタードは日本でも人気のジャンルとなりました。

ストリートバイクブームの一翼を担う

 2000年代といえば、日本ではトラッカーが大人気。しかし街中を軽快に走れるスタイルは、スーパーモタードも同じです。そこで人とは違うバイクに乗りたい若いライダーたちは、いち早くスーパーモタードに着目。CRM250R/ARやKLX250などをベースに、前後ホイールを17インチ化したモタードカスタムに乗り出したのです。

カワサキ・DトラッカーX。国内のモタード人気を牽引しましたが、名称には何故か「トラッカー」が使われていました
カワサキ・DトラッカーX。国内のモタード人気を牽引しましたが、名称には何故か「トラッカー」が使われていました

 そんな人気を見逃さなかったのはカワサキです。スーパーモタードがまだそこまで注目されていなかった1998年、すでにKLXをベースにしたスーパーモタードモデル「Dトラッカー」を発売しました。当時、まだ世間での認知度が低かった証拠がその車名にあります。そう、「モタード」ではなく、より早くストリートバイクとして認知されていた「トラッカー」を使用しています。

 その後、各メーカーからもスーパーモタードモデルがリリースされ、今なお人気の高さを維持しているのはご存知の通り。今では「スーパーモタード」ではなく「モタード」として呼ばれることの方が多いですね。

 モタードはレースからカスタム、そして純正モデルへと変遷していった稀有なジャンルと言えるでしょう。