レーシングドライバーの木下隆之さん(筆者)は、バイクもロータリーエンジンが復活して欲しいと言います。どういうことなのでしょうか?

バイクのエンジンは、バラエティ豊か!

 クルマ用のレシプロエンジン形式は限られています。直列ならば3気筒と4気筒、および6気筒まで。V型では6気筒と8気筒が主流です。V型10気筒や12気筒ユニットも存在はしていますが、絶滅が危惧されています。

わずか1年で生産中止となった、ロータリーエンジンを搭載するスズキ「RE-5」(1974年)
わずか1年で生産中止となった、ロータリーエンジンを搭載するスズキ「RE-5」(1974年)

 ポルシェとスバルはシリンダーが水平に向かい合う水平対向の4気筒と6気筒を量産しています。マツダがこだわり続けているロータリーエンジンは極めて稀なパワーユニットです。かつてはスポーツカーのエンジンとして活躍していましたが、燃費と排ガスに課題を抱えているために生産が途絶えていました。ですが、2023年に「マツダMX-30ロータリーEV」で復活し、注目されています。

 一方、バイクのエンジンは、クルマより種類が豊富なようです。クルマのように大排気量である必要がないことが理由で、6気筒以上のマルチシリンダーは稀ですが、単気筒から水平対向6気筒まで存在しています。

 主流の2気筒だけを見ても、横に並ぶ並列2気筒や、V型2気筒などがあります。そのV型でさえも横置きや縦置きが存在しますし、搭載の角度などもさまざまです。BMWは水平対向ユニットに積極的なようです。

 バイクは絶対的なマスが限られていることで、最大の重量物であるエンジンの搭載位置次第で、操縦性が大きく変化します。どう傾けて搭載するかも走りを完成させる上で重要ですね。

 クルマの場合は100%水冷ですが、バイクでは空冷も水冷も存在します。流れる風でオイルを冷し、エンジンを冷却するという、空油冷エンジンも存在します。

 レーサーのようにエンジンをカウルで覆い隠すタイプは例外ですが、バイクのエンジンは基本的に剥き出しです。眺めているだけで楽しいですし、うんちくを戦わせたらキリがありません。それがライダーを惹きつける要素のひとつのように感じます。

 バイクのロータリーエンジンは皆無です。1973年から1976年という短い期間には、世界には多くのロータリーエンジン搭載のバイクが存在していましたが、すべて淘汰されてしまいました。日本ではスズキが唯一、ロータリーエンジン搭載の市販車「RE-5」を発売しましたが、短命で終わっています。それを最後に、ロータリーエンジン搭載のバイクは姿を消してしまったのです。

 ロータリーエンジンは、ピストンが上下運動するレシプロエンジンとは異なり、円運動です。ですから回転フィールが滑らかです、高回転まで澱みなく上昇することも特徴です。マツダではサバンナRX-3やRX-7などのスポーツカーに搭載していました。そもそも、少ない排気量で約1.5倍の出力が得られます。逆に言えば、とてもコンパクトなのです。

 ですが、熱効率が悪いことで燃費にも問題を抱えていました。排気ガス規制をクリアすることも困難なことで、スポーツカーエンジンとしての歴史を終えたのです。それがレンジエスクテンダーEV、つまり、ハイブリッドの発電機として復活したというわけです。

 ロータリー党のマニアは、スポーツカーの動力源としてのロータリー復活を望んでいたのでしょう。僕(筆者:木下隆之)もそのうちの1人ですが、発電機だとしてもロータリーが絶滅しなかったことを喜ぶべきかもしれません。

 世界で唯一、ロータリーエンジンを量産しているマツダには豊富なノウハウがあるはずです。マツダがバイクの生産に進出すれば、あるいは「マツダ・ロータリー400」などという興味深いバイクがデビューするかもしれません(その気配は全然ありませんが……)。

 バイクの世界でも、ぜひ復活して欲しいものです。