バイクをよく観察してみると、前輪と後輪で太さが異なる車種があるのに気づきます。これには何か理由があるのでしょうか。

バイクの前輪と後輪の太さが違う!?いったいナゼ?

 路面と接しているタイヤは、バランスを取りながら走るバイクにとって非常に重要なパーツと言えるでしょう。

 クルマのタイヤは4本ともサイズが同じですが、バイクは2本あるタイヤの太さや直径などが違う場合がほとんど。これに対して、「タイヤは前後で統一したほうがバランスが良いし、交換する際も一種類のタイヤを覚えておけばよいので簡単なのでは…」と思う人もいるかもしれません。

 では、前輪と後輪でバイクのタイヤの大きさが違うのは、いったいなぜなのでしょうか。

ほとんどのバイクは前輪と後輪の大きさや太さが違う
ほとんどのバイクは前輪と後輪の大きさや太さが違う

 スペック表を見るとわかりますが、50ccのスクーターや小排気量の一部のモデルを除いて、ほとんどのバイクは前輪と後輪の大きさが違います。タイヤは、車両の重量を支えて、エンジンやブレーキからの力を路面に伝える役割があります。

 また、進みたい方向に曲げたり直進を維持したりといったバイクのコントロールを助け、路面からの衝撃を吸収するなど、多くの重要な役割を担っているパーツです。

 さらに、幅の違いによってもタイヤの特性が違ってきます。細いタイヤほど抵抗が減り軽くなるので寝かしやすくなり、燃費が良くなる傾向がありますが、そのぶん安定感とグリップ力が落ちるのがデメリットです。

 一方、太いタイヤは、路面との接地面積が増えるのでグリップ力や安定感が高くなる傾向がありますが、抵抗が増えるので重くなり寝かしにくくなり燃費が悪化します。

太いタイヤは、路面との接地面積が増えるのでグリップ力や安定感が高くなる傾向がある
太いタイヤは、路面との接地面積が増えるのでグリップ力や安定感が高くなる傾向がある

 足まわりの迫力がアップして見た目が良くなるという理由で、太いタイヤに履き替えるライダーも少なくありません。ただ、どちらが優れているというわけではなく、バイクの車重やパワーなどによってベストなサイズがあるので、メーカーで指定された適切なタイヤを装着することが重要です。 

 そして、バイクのタイヤは前輪と後輪でそれぞれ役割が異なります。これが、前後のタイヤの大きさの違いが生まれる主な理由で、とくに排気量が大きくなるほど、前後のタイヤの太さの差が大きくなる傾向があります。

 バイクは前輪で操舵し、後輪で駆動する仕組みで、走行中に進みたい方向に車体を傾けることで曲がることができます。このとき、自然にハンドルが進行方向に切れて曲がれるわけですが、この現象を「セルフステア」といいます。ライダーは無意識のうちにこの動作をおこなっており、前輪が進行方向に向くことで曲がれるようになっているというわけです。

 また後輪は、エンジンから伝わる駆動力を受け止めて車体を押し進めるのが主な役目。このときの、バイクを前に押し出そうとする力のことを「トラクション」といいます。大排気量でパワーがあり車体が重いバイクほどトラクションが大きくなるので、そのぶん路面との摩擦抵抗も大きくなります。そこで後輪には、路面の接地面積が広い太いタイヤが必要になるようです。

 つまり、操舵が主な役割となっている前輪は、コントロールしやすいように接地面積の小さい細いタイヤが必要で、一方の後輪はエンジンからの大きなパワーに耐えてしっかりグリップするように、接地面積の大きな太いタイヤが必要になるというわけです。

タイヤの外径についても、バイクによって前輪と後輪の大きさが違うケースがある

 外径が大きなタイヤほど直進の安定性が得やすくなり、路面のショックを吸収するので悪路の走破性がよくなりますが、そのぶん旋回性が損なわれるのがデメリットです。

長距離を走るときは疲れにくくなるので、アメリカンバイクやツアラーモデルなどは、前輪に18インチや19インチの大きめのタイヤが装着されている
長距離を走るときは疲れにくくなるので、アメリカンバイクやツアラーモデルなどは、前輪に18インチや19インチの大きめのタイヤが装着されている

 長距離を走るときは疲れにくくなるので、アメリカンバイクやツアラーモデルなどは、前輪に18インチや19インチの大きめのタイヤが装着されています。また、悪路走行が想定されるオフロードバイクも、障害物の衝撃を吸収し、ハンドルの安定感に優れコントロールしやすいという理由で、21インチの大きなフロントタイヤが一般的です。

 そのほかの、ネイキッドタイプやスーパースポーツなどのモデルは、現在では前後17インチのタイヤが主流になっています。

 ただし、後輪のほうが太くて高さのあるタイヤが装着されているので、前後17インチでもタイヤのサイズは同じではありません。タイヤの外径が小さくなるぶん直進の安定性は落ちますが、旋回性が良くなるのでコーナリングがスムーズにできるメリットがあります。

前輪に16インチ、後輪に18インチホイールを装備していたホンダ「MVX250F」
前輪に16インチ、後輪に18インチホイールを装備していたホンダ「MVX250F」

 ちなみに、80年代にブームとなったレーサーレプリカモデルでは、前輪16インチが流行した時期がありました。それまで前後18インチが主流でしたが、レーシングマシンに採用されたのをきっかけに、各メーカーがこぞって新型車に前輪16インチを採用したのです。

 外径が小さいぶんカーブでクイックなハンドリングが可能でしたが、思った以上に寝てしまうため、慣れるまで大変だったようです。ただ、公道ではレーサーのように走るわけでもなく、そんなに倒さなくてもカーブは曲がれるので、その後は現在の前後17インチのタイヤに落ち着いたという歴史があります。

 バイクの前輪と後輪のタイヤの大きさの違いは、良くも悪くも時代の流れによって今後も変化していくのかもしれません。

※ ※ ※ 

 バイクは、前輪と後輪でタイヤの大きさが違うケースがほとんどです。前後のタイヤのそれぞれの役割の違いやカテゴリーの特性によって、ベストなタイヤがセッティングされています。

 交換する際に間違った大きさのタイヤを取り付けてしまうと、バイクの挙動がおかしくなる可能性があるので非常に危険です。サイズ表記をしっかりと確認して、メーカーで決められたサイズのタイヤを正しく装着するようにしましょう。