レーシングドライバーの木下隆之さん(筆者)は、カワサキのストロングハイブリッドには驚かされると言います。どういうことなのでしょうか?

航続距離はさておき、バイクに採用するとは……

「ハイブリッド」とひと口に言っても、さまざまな種類があります。

 軽カーなどで採用されている「マイルドハイブリッド」は、駆動用バッテリーがありません。減速の回生エネルギーをバッテリーに蓄えはしますが、それは動力には活用せず、ただオルタネーターのサポートをするだけにとどまります。

「ストロングハイブリッド」は、駆動用バッテリーと内燃機関が複雑に連携しながら、加速や減速を繰り返します。トヨタの「THS II(トヨタ・ハイフリッド・システムII)」や、ホンダ「e:HEV」がそれに該当します。制御が緻密で、もっとも燃費の良いハイブリッドと言えるでしょう。

『第40回 大阪モーターサイクルショー2024』(2024年3月15日〜17日開催)で展示された、カワサキのストロングハイブリッドモーターサイクル「Ninja 7 Hybrid」(右)と、ピュア電動モーターサイクル「Z e-1」(左)
『第40回 大阪モーターサイクルショー2024』(2024年3月15日〜17日開催)で展示された、カワサキのストロングハイブリッドモーターサイクル「Ninja 7 Hybrid」(右)と、ピュア電動モーターサイクル「Z e-1」(左)

 その中間のハイブリッドシステムの代表例は、日産の「e-POWER」です。エンジンを搭載しますが、それはあくまで発電機としての機能に限定しています。そのエンジンがバッテリーに蓄えた電力で、電気モーターを駆動させています。

 加速すればエンジンが唸りを上げますが、それは急いで充電しているに過ぎません。走りそのものはEVなのです。「レンジエクステンダー式ハイブリッド」と呼ばれています。

 ロータリーエンジン復活で注目されているマツダMX-30ロータリーEVもガソリンエンジンを搭載していますが、それも日産の「e-POWER」と同様に駆動輪と直結しておらず、レンジエクステンダー方式なのです。

 というように、クルマにはさまざまなハイブリッドシステムが存在します。搭載スペースに余裕があり、コストを紛れ込ませやすいモデルはストロングハイブリッドを採用しますが、元々軽量な軽カーのような、重量増を招きたくないカテゴリーではシンプルなマイルドハイブリッドを選択する傾向にあるようです。

 それが常識のクルマ業界の人間(筆者:木下隆之)からすると、カワサキの「Ninja 7 Hybrid」がストロングハイブリッドであることに腰を抜かしかけます。

 エンジンは排気量451ccの水冷4ストローク並列2気筒であり、電気モーターが組み合わされます。しかも、マニュアル操作が可能な6速オートマチックと公表されています。クルマのストロングハイブリッドでさえ、さすがにマニュアルミッションは組み込まれません。スペース的な制約があるバイクなのに「そこまでやるか!?」と、驚かされました。

 車体は600ccクラスのスポーツタイプになります。普段は「エコハイブリッド」モードを選択し、燃費を節約しながらライディングを楽しめそうです。その気になった時には「スポーツハイブリッド」モードでエンジンを軽快に唸らせます。市街地や深夜は「EV」モードで電気モーターのみを使って静かに走行します。そんな凝ったストロングハイブリッドがバイクで採用されるなんて、予想していませんでした。

 しかも驚きは、それほどの技術が込められたバイクが184万8000円で購入できることです。まだ試乗前ですが、とてもリーズナブルだと感じました。

 クルマのストロングハイブリッドの車両価格が下がってきたのは、量産効果を得られるようになったからです。ところが「Ninja 7 Hybrid」はまだ希少な存在です。コスト抑制は簡単ではありません。

 それが、200万円以下でこれほどのスーパーバイクにまたがることができる……その点でも夢のような出来事ですね。