福山駅周辺で最近注目を浴びているのは、工事を終えた福山城の外観復元、とくに天守北面の鉄板張りが公開された話題です。

2022年8月28日の築城400年の記念日に向けたカウントダウンに足並みをそろえるように、駅前再生の関連イベントも相次いで開かれています。

さて今回は、駅西部の三之丸町周辺エリアにスポットを当てましょう。

2020年に同エリアの拠点、エフピコRiMの閉店が及ぼす影響から周辺の人通りが減り、駅前再生の先行きを懸念する声もありました。

しかし現在、エフピコRiMが担っていた役割の一部(駐車場)を引き継ぐ形で、駅前再生に刺激を与える、ある事業が始動しているのです。

今秋グランドオープン!iti SETOUCHI

2022年9月、エフピコRiMの跡地にグランドオープンを迎える新施設。

iti SETOUCHI(イチ セトウチ)は、新しい価値観や未来の暮らしを見据え、多様性と可変性に富むコンテンツ展開を行うとプレス発表がありました。

福山の未来をつくるクリエイティブ・プラットフォームをうたっています。

大円柱が支える重厚なファサード(正面エントランス)は、いまや福山の産業遺産のおもむき
大円柱が支える重厚なファサード(正面エントランス)は、いまや福山の産業遺産のおもむき

2020年に惜しくも閉店した複合商業施設エフピコRiMの1階部分を改装し、再生事業を手がけるのは地元の福山電業株式会社です。

iti SETOUCHIのロゴ

特徴的な名称「iti SETOUCHI」に込めたのはどんな想いなのでしょう。

それは施設の所在地である西町1丁目1-11階に着想の種がありました。

1を人「i」に見立てて「i+i」でその結びつきを表し、また1を「」と読み替えて多くの人が集まる、文化的な公共空間の創造を目指しています。

主要コンテンツの一例は次のようなものです。

  • 瀬戸内の食材が堪能できる個性的かつ体験型の飲食店街
  • まちの交流・関係人口を増やすソーシャル・コワーキングスペース
  • DIYやデジタルファブリケーションを体験できるシェアアトリエ
  • 瀬戸内エリアにおけるアートの生産と発信拠点となるアートセンター

ただいま、絶賛工事中。Under Constraction

iti Setouchiのプレオープン企画のひとつが、Under Construction(アンダー コンストラクション)という大胆、かつユニークなイベント。

側道の歩行者が二度見しそうな、大きく印字された壁面のメッセージ
側道の歩行者が二度見しそうな、大きく印字された壁面のメッセージ

関係者以外の立ち入りを禁じたUnder Construction=工事中の掲示を見つけると、余計に中のようすが気になりますよね。

そんな内なる好奇心に対し、気軽にのぞくもよし、イベントへの参加、自主開催も歓迎という期間限定の試みです。

実際にワークショップで使用した端材ボードが、工事中のフロアを仕切るパーティションとなり、その穴から中のようすが見えるようになっています。

工場現場の一角が自由に利用できるのは、「ただいま」だけの希有な特権
工場現場の一角が自由に利用できるのは、「ただいま」だけの希有(けう)な特権

9月の開業に向けて、交流や対話の場づくりに平日も利用可能(午前10時〜午後4時8月中旬まで)。

利用の詳細は、福山電業株式会社 エリアマネジメント事業室(TEL 084-959-3481)に問い合わせてください。

オープンまで待てない。尾道発!せとうちサイクルフリマ

せとうちサイクルフリマはUnder Constructionの一環で、iti SETOUCHI内に出店する「BETTER BICYCLES(ベター バイシクルズ:尾道市土堂)」の企画で開かれたイベント。 

ペダリングの効率を上げるための、先進的なパーツをメインに出品するブース
ペダリングの効率を上げるための、先進的なパーツをメインに出品するブース

今回のサイクルフリマは2回目にあたり、前回はONOMICHI SHARE(オノミチ シェア)での「しまなみサイクルフリマ」が好評を得ています。

什器(じゅうき)を使わず直置きすることで、お宝の眠るガレージセール感が上がります
什器(じゅうき)を使わず直置きすることで、お宝の眠るガレージセール感が上がります

自転車業界では、現在コロナ禍による自転車部品の供給不足が深刻さを増す一方で、余剰パーツをもつサイクリストの多いアンバランスな状況。

そこで、不足部品を必要とする人とのマッチングの場を提供するのがイベントの趣旨です。

アクティヴなシニアサイクリストの姿も、ちらほらとお見かけしました
アクティヴなシニアサイクリストの姿も、ちらほらと見かけしました

BETTER BICYCLESは消耗品として扱われる自転車を看過せず、メンテナンスを重視し、大切に乗り続ける価値観の浸透を目指すサイクルショップ。

習慣的なメンテナンスにより、見た目が良いばかりか不具合の発見も早く、安全性の向上にもつながります。

そうした利益優先にとらわれない姿勢は、iti SETOUCHIの理念に通じるものです。

こどもたちのキャンバスは、ロードレーサーのサコシェ(補給食・飲料を入れるバッグ)
こどもたちのキャンバスは、ロードレーサーのサコシェ(補給食・飲料を入れるバッグ)

「これまで尾道で、自転車のある暮らしや楽しみ方を模索してきました。iti SETOUCHIオープン後は、新たに福山でも、当地のサイクリストの皆さんと自転車に乗る喜びを共有したいと考えています」と主催者の言。

オーナーの愛着がにじむ、フランスはプジョー社製の70'sヴィンテージ
オーナーの愛着がにじむ、フランスはプジョー社製の70’sヴィンテージ

歩きやすい・歩きたくなるウォーカブルを推進する福山駅前周辺。
それに加え、サイクリストの安全に配慮し自転車に乗りやすい環境が整備されれば、歩行者と自転車の快適な共存が可能になるでしょう。

そのような環境になることを期待しつつ、iti SETOUCHI正式オープン後に、BETTER BICYCLESが自転車に乗る喜びを伝えてくれることを楽しみにしています。

店頭に並ぶサイクリストの愛車が、図らずも優れた省スペース性をPRするの図
店頭に並ぶサイクリストの愛車が、図らずも優れた省スペース性をPRするの図

変化から、未来が見える。Wander SANNOMARU

福山市が駅前再生を同時多発的に推進する上で設定している、各々異なるビジョンを持つ4つのエリア「福山城周辺・三之丸町周辺・伏見町周辺・中央公園周辺」があります。

iti SETOUCHIのある三之丸町周辺では、“変化”と“未来”を伝える、エリアプロモーションプロジェクト「Wander SANNOMARU(ワンダー サンノマル)」が始動中。

回遊する人の軌跡から、日々変化する街の躍動感を表現した街中サイン
回遊する人の軌跡から、日々変化する街の躍動感を表現した街中サイン

働く・住む・にぎわい」が一体となった福山駅前のウォーカブルエリア実現に向け、市民参加型イベントを展開しています。

まちを歩こう、未来をはじめよう」をキャッチコピーに、市民が集い、憩える空間の創出など、エリア全体の価値を高めるプロジェクトです。

三之丸町周辺を歩いた人の数だけ未来像が描かれます。
三之丸町周辺を歩いた人の数だけ未来像が描かれます。

“変化”と“未来”を伝える取り組みのひとつが、まさにリノベーションの進捗状況を公開するイベントUnder Constructionといえます。

また「三之丸オープンテラス」は、路上に設けられたテラス席で飲食が楽しめるサービス。

コロナ禍以降の外食スタイルも見据えた屋外事業は、ベビーカー利用者、ペット同伴者のかたに喜ばれています。

コンクリートに囲まれた市街にあって、三之丸公園の風物詩は一服の涼を感じさせます
コンクリートに囲まれた市街にあって、三之丸公園の風物詩は一服の涼を感じさせます

他にも旧キャスパなど跡地で工事現場が一般に開かれ、集いと憩いの場づくりを随時展開していく予定。

三之丸町周辺の通行の道すがら、街中の変化に意識を向け未来の予兆を求めて、三之丸町周辺をWander(ぶら歩き)してみてはいかがでしょう。

福山駅前広場の未来像(各機能の配置計画案イメージイラスト)も公開されていますので、そちらも参考にしてください。

おわりに

駅前再生ビジョンを分立する4つのエリアのなかで、三之丸町周辺にはどうしても一歩出遅れた印象をいだいてしまいます。

要因に挙げられるのは、オフィスやマンションが多く、エリア価値を高める特性、つまり文化施設や個性的な飲食街といった端的に核となるものを見つけにくいといった点です。

しかし一定のくくりにしばられない分、多様な価値を創出していく可能性が高いといえそうです。

たとえばフリーマーケットは、ある人にとって不用になった物を通じて、資源の大切さ、シェアの心得やポストコロナの流通などに考えをめぐらせる機会を生んでいます。

そうした物の新旧や値段の高低にとらわれず、訪れる人それぞれの価値を発見しあう交流の場こそ、新施設iti SETOUCHIの目指す姿なのでしょう。

福山から瀬戸内エリアまで、広く、多様なアプローチによる、新たな価値の共創に関心が高まります。

著者:久米真也