小売り大手ユニー・ファミリーマートホールディングス(HD)とディスカウント大手のドンキホーテホールディングス(HD)の資本提携深化の記者会見は、10月15日午後に設定されていた。場所は、東京・中央区日本橋室町のマンダリンオリエンタル東京。

 ところが、10日14時過ぎに「日経ビジネスオンライン」が『ファミマ、ユニー全株をドンキに売却を検討』とスクープ記事を流し、大混乱に陥った。

 ユニー・ファミマHDとドンキHDは11日午前に臨時取締役会を急遽開き、資本提携の深化と株式の異動を決議。同日午後2時から東京・東池袋のサンシャイン60のユニー・ファミマHD本社の会議室をぶち抜いた部屋で会見となった。

 もともとユニー・ファミマHDの上期(18年3〜8月)決算の発表が予定されており、午後2時から決算発表。その後、ドンキHDの大原孝治社長も出席して、提携の深化の発表となった。ユニーの佐古則男社長、ファミリーマートの澤田貴司社長は会見に出席しなかった。

 ユニー・ファミマHDは11月上旬からドンキHD株のTOB(株式公開買い付け)を実施。1株6600円で買い付け、総額は2119億円。ドンキHD株を最大20.17%取得し、同社の筆頭株主となり、持ち分法適用会社に組み込む予定だった。しかし、ドンキHDの株価が6600円を上回り続け、TOBは不調に終わった。それでもユニー・ファミマHDの高柳浩二社長は「常識的な時間軸で持ち分法適用会社化を進めたい」と日本経済新聞の取材に答えている。

 ユニー・ファミマHD傘下の総合スーパー(GMS)、ユニーの全株式(発行済み株式の60%)を、2019年1月にドンキHDに売却する。売却額は282億円。ドンキHDとユニー・ファミマHDは17年8月、資本・業務提携し、ドンキHDはユニーに40%出資していた。残り60%を買い入れ、完全子会社とする。TOBが不調に終わったことと関係なく、ドンキHDは12月20日、「2019年1月4日にユニー・ファミマHDが持つユニーの全株式を予定通り取得する」と発表した。

●格安でユニーを手に入れたドンキHD

 ここに至るまでの経緯を振り返っておく。

 ユニーは10月9日、愛知県稲沢市から名古屋駅の複合高層ビル「グローバルゲート」に本社を移転してお披露目を行ったばかりだった。四半世紀ぶりの本社移転は、ユニー・ファミマHDの連携強化を図るためのものだった。ユニーにとって「日経ビジネスオンライン」のスクープ記事が出るのは晴天の霹靂だった。ユニーは組合への説明も、15日の正式発表から逆算して週末(12、13日)に行うことにしていたからだ。そこで11日の記者会見で「ユニーの社員の雇用条件は変わらない。組合は存続する」とドンキHDの大原社長に、あえて発言してもらうことになった。組合対策である。

 ユニー・ファミマHDの高柳社長は「コンビニ一本足打法」と言われることを嫌っていた。「20%出資したのは、コンビニ、GMS、ディスカウントストアの3本立ての経営にするため」と力説したが、ユニーの社員には動揺が広がった。

 確かに、ユニーの若手社員は「MEGAドン・キホーテUNY」に転換して店舗に研修に行き、ドンキ流のやり方を理解、共感していた。しかし、中堅以上は「先行きはどうなるのか」と、不安に思っていた。「5年間でユニーの100店舗をドンキのような店舗にする」(ドンキHDの大原社長)。ということは、新たに100人の店長が必要になるということだ。ユニーで眠っている人材を生かすことができるかどうかが成功のカギを握る。

 実は、ユニー・ファミマHDの高柳社長は、GMSを切り離したがっていた。18年8月、ユニー・ファミマHDへの出資比率を50.1%に高めて子会社にした伊藤忠商事の岡藤正広会長兼CEO(最高経営責任者)の意向に沿うかたちで、ユニーをドンキHDに売り払った。

 この交渉の過程で、ドンキHDのしたたかさばかりが目立ったといわれている。

 今回の資本提携でもっとも恩恵を受けるのは、282億円という破格の値段でユニーを手に入れるドンキHDだ。18年2月末のユニーの純資産の60%相当分は540億円。差額(258億円)の一部を「負ののれん代」として、19年2月期に利益に計上することになる。全額計上すれば、利益は急増する。

 ドンキHDとユニーの売上高を単純合算すると、1兆6543億円。これはイオンの8兆3900億円、セブン&アイ・ホールディングスの6兆378億円、ファーストリテイリングの2兆1300億円に次ぐ国内4位の小売業者になる。安売りという“すき間”からスタートしたドンキHDは、メジャーに昇格した。今後2〜3年でユニクロのファーストリテイリングに追いつき、追い抜い抜くことが視野に入ってきた。

 株式市場ではユニーとの相乗効果を見込んだ買いが先行。ドンキHDの株価は11月26日、一時、7800円の上場来高値を更新した。

●海外展開を加速させるドンキHD

 では、ドンキHDの真の狙いはどこにあるか。ドンキHDは19年2月1日付で「パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス」に社名を変更する。「ドンキが日本にとどまらず冠たる業態を築き上げる決意の表れ。その場所にあった業態をつくっていく」(大原社長)と、海外展開に強い意欲を示した。シンガポールの「DON DON DONKI」出店の陣頭指揮を執っている創業者の安田隆夫氏が19年1月に取締役(非常勤)に復帰することを決めた。

 DON DON DONKIはシンガポールや米国で39店舗展開しているものの、海外の知見は乏しい。中間所得層が伸びる中国や東南アジアなど、海外展開のノウハウでは伊藤忠に一日の長がある。伊藤忠の海外ネットワークをフルに活用しながら、海外事業の拡大に取り組む。仕掛け人が安田氏であることは言うまでもない。「ドンキHDが伊藤忠を取り込んだ」(ライバルの総合商社の首脳)との見方が出ている。

 ユニー・ファミマHDは、TOBを実施してドンキHD株の20%を取得する計画で、12月19日をもってTOBを終了した。TOB価格(1株6600円)をドンキHDの株価が常に上回っていたことから、買い付け株数の上限(3120万8700株)に対して、応募はわずか2万4721株にとどまった。ドンキHDの3割の株を保有する大株主の安田氏から「20%相当の議決権を借りる」ことも考えていたが、これを見送った。貸株でほぼすべてをまかなうかたちで持ち分法適用会社の要件を満たし、ドンキの利益(の持ち分)を業績に上乗せするのは望ましくないという判断に傾き、安田氏の持ち株を借りることを止めた。ユニー・ファミマHDからドンキHDへの取締役1人以上の派遣も中止する。

 伊藤忠はドンキHDをほかに取られたくなかった。楽天や三菱商事もドンキHDとの接点を求めていた。「先にドンキHDを事実上、取り込んだことでホッとしている」(伊藤忠の幹部)と本音が漏れる。

 安田流の必勝法は、捨て身で相手の懐に飛び込み自家薬籠中のものにすることだ。TOBが不調に終わったが、ユニー・ファミマHDはドンキHDをグループ会社化する方針に変更はないとしている。だが、これほどTOBの応募株数が少なかった(それだけドンキの株価が堅調だった)ことが、今後の両社の関係に微妙に影を落とす可能性がないとはいえない。
(文=編集部)