全国にスーパーマーケットを400店舗以上展開するイオンは、2019年2月期の連結決算で、売上高8兆5182億円(前年同期比1.5%増)、営業利益2123億円(同0.9%増)、経常利益2151億円(同0.6%増)となったことを発表。売上高は9期連続で過去最高を記録。営業利益、経常利益も2期連続での最高益を更新するなど、好調であることがうかがえる。

 しかし、イオンのベースともいえる小売業に関しては不調が続く。部門ごとに業績を見てみると、総合スーパー事業は売上高3兆806億円(同0.0%)、営業利益115億円(同2.3%増)となっているものの、スーパーマーケット事業は売上高3兆2351億円(同0.2%減)、営業利益252億円(同18.0%減)。サービス・専門店事業は売上高7685億円(同1.2%増)、営業利益198億円(同9.9%減)とその業績は芳しくない。

 7月5日発表の3〜5月期(第1四半期)連結決算では、イオンディライトの子会社で発生した不適切会計の処理費用を一括計上したため、前年同期比で営業利益30.0%減、経常利益39.8%減で、連結純損益は約43億円の赤字に転落。総合スーパー事業は前年同期比で約9億円減益し約54億円の営業損失、スーパーマーケット事業は約38億円減益し約18億円の営業損失、サービス・専門店事業は約143億円減益し約77億円の営業損失を計上するなど、小売業の不振ぶりは深刻だった。

 では、なぜイオンの小売業はここまで業績を落としてしまっているのか。ジャーナリストの寺尾淳氏に話を聞いた。

小売業不振の原因

 そもそもイオンはなぜ400を超える店舗を出店するまで、チェーン展開の規模を大きくすることができたのか。

「イオンの成功の要因は、まず、アメリカからの対日構造改革要求で大店法改正など小売業の規制緩和が進んだ1980〜90年代に、大店舗中心主義に進みつつ、合併・買収による拡大路線を敷いたからでしょう。それに加え、94年から展開しているプライベートブランド『トップバリュ』に見られる強い低価格志向などが、うまく相互作用を発揮できたからだと考えられます。特に低価格戦略は、大都市圏よりも経済成長に取り残された地方で支持されました。現在、地方にイオンがある印象が強いのはそのためです」(寺尾氏)

 そんなイオン、金融部門や不動産部門といった他部門は好調だが、肝心の小売業に関しては不調。その理由として次のようなことが挙げられるという。

「今年2月期の連結純利益は前年同期比3.6%減で、総合スーパー事業・スーパーマーケット事業共に営業減益でした。特にスーパーマーケット事業に含まれる、コンビニエンスストア『ミニストップ』は、5億円以上の営業赤字に転落しています。

 考えられる要因として、低価格で食品を取り扱うようになったドラッグストアの台頭に加え、アマゾンなどのネット通販も食品を取り扱うようになったことが挙げられます。イオングループ内のドラッグストアは営業利益を伸ばしていることから、グループ内で共食いが起きていることも、スーパーマーケット事業の18.0%減益に反映されているといえるでしょう」(同)

全体で黒字でも小売業の不振は危険、負のスパイラルの予兆

 小売部門だけが振るわないのには、他にも理由があるのだろうか。

「指摘すべきは、イオンの小売部門には業績の足を引っ張る子会社が多いということ。実は先ほど例に挙げたミニストップ以外にも、スーパーマーケットの『ダイエー』はなんと7期連続の赤字で、衣料品店の『コックス』も営業赤字。靴店の『ジーフット』は最終赤字です。赤字ではなくても、総合スーパーの『イオン北海道』、ホームセンターの『サンデー』など、大幅最終減益の企業も多数あります。

 小売部門は店舗の土地・建物といった不動産を持っているので、不振子会社は事業だけでなく、店舗の減損損失の計上でも最終利益の足を引っ張ってしまうのです」(同)

 確かに足を引っ張る子会社は現在のウィークポイントなのかもしれないが、それはかつて強気な合併・買収を進めていたツケとも考えられる。しかし、会社としては9期連続で過去最高を記録するほど好調なのも事実。小売業の不振はイオンにとって懸念すべき点なのだろうか。

「イオンは、大きな商業施設を軸に展開していくビジネスモデルが当たりました。例えば、『イオンリテール』などの総合スーパーの旗艦店を軸に、ディベロッパーの『イオンモール』が優良テナントを多数集めることで、集客力をさらに高めていったのです。こうして総合スーパーは販売増、イオンモールはテナント料増、ゲームセンターなどを運営する遊戯施設の収入増といったように、プラスがプラスを呼ぶ好循環で回していく連邦経営を取っています。

 しかし、その好循環は中心軸である総合スーパーの好調があればこそ。総合スーパーが不振に陥ると、集客力が落ちることでその循環が逆回転してしまい、マイナスがマイナスを呼ぶ悪循環に陥る恐れがあります。現在、営業利益の約6割を占めている総合金融、ディベロッパーの両事業に、この小売不振の悪影響が時間差で及べば、今期の営業利益8.4%増という目標も達成が危ぶまれるでしょう」(同)

低価格路線で起死回生なるか、小売業に見切りをつけるべき?

 そういった小売業の不振を受けて、イオンは次のような対策を行っているという。

「今年4月、プライベートブランドであるトップバリュの低価格ブランド『ベストプライス』の品目を、7割増の500品目に増やすと発表しました。同ブランドの売り上げを前期比で1割以上増やそうという計画です。

 イオンの伝統的な低価格路線は、今年10月に見込まれる消費増税なども考えると、悪くない選択だといえます。増税により、個人消費は少なからず減っていくでしょうから、低価格をこの時期から改めて強調することで、客足の維持に期待ができるでしょう」(同)

 もちろん、低価格を前面に打ち出すというシンプルな施策だけで、イオンの小売業が再び調子を取り戻せるとは言い切れないだろう。実際、多くのアナリストは「イオンは小売業を切り離すべき」と唱えていることも事実だ。しかし、寺尾氏はそれは得策ではないと断言する。

「連邦経営のかたちをとっているイオンにとって、業績が悪いという理由で小売業を切り離すのは、もしそれで数字として一時的に好転したとしても、悪手でしょう。ただでさえ、“寄り合い所帯”と評されることもあり、ギクシャクしているグループ内部が、それをきっかけにバラバラになってしまうことが考えられるからです。

 現状、金融や不動産業で儲けが出ているので、できの悪い子会社に見切りをつけて切ったりするのではなく、我慢とテコ入れを繰り返しながら、業績回復に期待することが今のイオンに求められていると思います。従来路線からの大転換はリスクが大きすぎるので、構造改革のペースが上がらず業績の足を引っ張る子会社も、地道に収益を改善させていき、派手なことに手を出さずに運営していくべきではないでしょうか」(同)

 合併・買収を繰り返すことで大きくなってきたイオンにとって、不採算事業を切り離すことは簡単ではなく、会社として過去最高益を達成している現在でも、解決すべき問題を抱えているようだ。現在の経営を支えている黒字の部門が、マイナスの悪循環に巻き込まれる前に、小売業の業績を回復させることはできるのだろうか。今後の動向にも注目したい。

(文=A4studio)