イオングループで不祥事が立て続けに起きている。ただでさえ主力のスーパーが苦戦を強いられているというのに、不祥事の連発でスーパーのさらなる業績悪化につながりかねない。イオンはガバナンス(企業統治)のあり方が改めて問われている。

 イオンが7月5日に発表した2019年3〜5月期連結決算は、最終損益が43億円の赤字(前年同期は 65億円の黒字)だった。子会社の施設管理大手、イオンディライトで発覚した不適切な会計処理問題の影響額を一括計上したことが響いた。

 今春、イオンディライトの子会社で家事代行サービスを手がけるカジタクで、不適切な会計処理が発覚。イオンはその処理費用を19年3〜5月期に一括計上。これが響き、最終損益は79億円押し下げられた。

 イオンの売上高にあたる営業収益は、前年同期比0.6%増の2兆1163億円、営業利益は30.0%減の277億円だった。

 主力のスーパーが苦戦した。総合スーパー(GMS)事業は営業収益が0.4%増の7542億円にとどまった。営業損益は8億円減益の54億円の赤字となった。食品スーパー事業は営業収益が0.8%減の7920億円、営業損益は38億円減益となる17億円の赤字だった。

 GMSは利益率の高い衣料品の販売が落ち込んだことが響いた。ユニクロなどのファスト ファッションやネット通販などとの競争激化で苦戦を強いられた。イオンは衣料品改革を打ち出して対抗しようとしているが、有効打が打てていない状況だ。

 食品スーパーは競合との競争で客数が減り、既存店を中心に苦戦した。また、販促を強化したが、販売増につながらず、利益をむしばんだ。

 イオンはスーパーの改革を進めているが、目立った成果を出せていない。

 GMSに関しては、各商品分野の専門性を高めて競合に対抗する考えだ。展開する衣料品や家具・雑貨などの専門店を分社化するなどして専門性を高め、衣料品店「ユニクロ」や家具・雑貨店「ニトリ」など競合の専門店に対抗する狙いがある。だが、本格的な施策はこれからで、まだ成果が出せていない。

 食品スーパーに関しては、「地域に密着した経営」と「食のSPA(製造小売業)化」で競合に対抗する。地域密着経営では、年売上高が5000億円程度になるよう地域のグループ企業の統合を進め、地域の特性に合ったビジネスを推進するほか、物流などの最適化を図る。食のSPA化では、自社農場などから原材料を調達し、生産、物流、販売までを自社で一貫して手がけたい考えだ。だが、どちらも道半ばで、GMS同様にまだ成果が出せていない。

 こうしたイオンのスーパーの苦境は今に始まったことではないので、ここで詳細を綴ることはしない。特筆すべきは、冒頭で挙げた子会社のカジタクでの不適切な会計処理問題だ。

 カジタクは中古複写機の再販ビジネスにおいて、ユーザーに未設置の案件を売上高に計上したほか、架空の売上高を計上した。また、中古複写機の下取り時の仕入れや証明写真機の仕入れを計上してもいなかった。ほかにも不適切な会計処理が明るみに出た。こうしたことを受け、イオン決算では19年3〜5月期に修正分を一括計上、最終損益が79億円押し下げられることとなった。

 会計処理をごまかすというのは言語道断で、あってはならないことだ。二度と同じことを繰り返してはならない。ただ、イオンディライトはほかにも問題を起こしており、同社のガバナンスには疑問符がついている。

 イオンディライト子会社の警備会社、イオンディライトセキュリティは17年、違法な長時間労働をさせたとして労働基準監督署から是正勧告を受けた。勧告対象になった社員の一部が加入する労働組合「プレカリアートユニオン」によると、過労死ラインとされる月100時間を超える残業が繰り返されていたという。非常に悪質だ。

不祥事続出のイオングループ

 実は、イオングループではほかにもさまざまな問題が起きている。

 イオン子会社のイオンペットは今年4月、ペットの預かりサービスで「屋外で散歩をさせる」と宣伝しながら実際にはしていないケースがあったとして、消費者庁から景品表示法違反(優良誤認)にあたるとして再発防止の措置命令を受けた。

 17年には、イオン子会社のイオンライフが、葬儀サービスについて新聞広告で「追加料金不要」と宣伝しながら実際には別料金がかかるケースがあったとして、消費者庁から景品表示法違反(優良誤認)に当たるとして再発防止命令を受けている。

 イオンペットとイオンライフの件は、どちらも消費者を欺く行為で非常に悪質だ。「うっかり」では済まされないだろう。イオンは「お客様第一」を謳っているが、「お客さま第一」どころか「お客様軽視」も甚だしい。

 このように、イオンではグループ会社で不祥事が繰り返し起きている。イオンは傘下企業のコントロールができていないと言わざるを得ない。ガバナンスに大きな問題があると言えるだろう。

 イオンは前身のジャスコ誕生から50年を迎えた。これまで積極的なM&A(合併・買収)を実施し、数多くの企業を傘下に収めてきた。その数は、国内外でおよそ300にもなる。年間の営業収益は8兆円を超え、国内小売り最大手の地位に登り詰めた。

 これほどまでに膨張した組織を管理することは簡単なことではないのかもしれない。だが、消費者にしてみればそれは関係のないことだ。

 一連の不祥事により、「イオンは怪しい会計処理をしている」「イオンはブラック企業」「イオンの広告は信用できない」との印象を与え、イオンのイメージ悪化につながっていることは否めない。このことが主力のスーパーにも影響を及ぼしかねない。そうなればスーパーの立て直しはおぼつかない。

 もっとも、イオンのスーパーのブランド力は、今も高いものがある。調査会社のニールセンカンパニーが18年に実施した調査によると、GMSと食品スーパーにおけるブランド力は、国内の全地域でイオンが1位だったという。イオンのブランド力は多少の不祥事では揺るがないのかもしれない。

 とはいえ、同調査では、どの地域にもイオンを脅かす強力なスーパーが存在し、「ヨークベニマル」や「オーケー」など複数のスーパーの顧客定着率はイオンを上回っているといい、イオンはうかうかしていられない。今後、さらなる不祥事が起きてしまえば、イオンのブランド力は低下し、傘下スーパーの顧客離れが加速しかねない。

 イオンは巨大な企業集団に成長した。業界の盟主に君臨し権勢を振るっているわけだが、一方でガバナンスに緩みが生じており、そのことがいずれ致命的な問題を起こさないとも限らない。そうなる前に、ガバナンスの緩みを是正するための抜本的な対策を講じるべきだろう。
(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)

●佐藤昌司 店舗経営コンサルタント。立教大学社会学部卒。12年間大手アパレル会社に従事。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。企業研修講師。セミナー講師。店舗型ビジネスの専門家。集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供。