セブン&アイ・ホールディングス(HD)の大黒柱、コンビニエンスストアのセブン−イレブン・ジャパンが揺れている。セブンは、本部の同意を得ずに営業時間の短縮を続けていた大阪府東大阪市のフランチャイズチェーン(FC)加盟店オーナー、松本実敏氏との加盟店契約を、19年12月31日付で解除した。接客での苦情などを理由にしている。松本氏に貸し出している土地や店舗を明け渡すよう要求。応じない場合は法的措置をとる。松本氏は店の明け渡しを拒否し、1月6日までに地位の確認などを求める仮処分を大阪地裁に申し立てた。セブン本部は「コメントは差し控える」としている。

 本部からの商品の納入はなくなり、当面は残った商品を売りつつ、独自に商品を仕入れることも検討。レジなどのシステムは使えなくなるが、自前のものを用意して対応。先月31日と元日は休業し、営業を1月2日から始めた。

 コンビニの「脱24時間営業」の流れをつくった東大阪南上小阪店の店主とセブン本部の対立は法廷闘争に移る。松本氏は報道陣に「法的に決着するまで石にかじりついてでも独自の営業を続けたい」とコメントした。

 セブンによる「もの言うオーナー」の口封じ、という厳しい意見も出ている。松本氏は昨年、人手不足を理由に営業時間の短縮を強行し、コンビニの24時間営業というビジネスモデルにノーを突きつけた。全国に約5万8000店あるコンビニ加盟店では、人手不足を背景に24時間営業の限界が表面化。セブン、ファミリーマート、ローソンの大手3社は対応を迫られている。

 大手コンビニのFC契約では、人件費は加盟店側の負担だ。人件費の高騰で、深夜もアルバイトに頼らずオーナーが働いている店が増えている。加盟店オーナーの劣悪な労働環境にスポットライトが当たり、コンビニの24時間営業は社会問題になった。セブン本部は深夜営業のガイドラインを新たに制定し、昨年11月からは一部店舗が深夜の休業を始めた。

 昨年4月、親会社のセブン&アイHDの井阪隆一社長は、セブンの古屋一樹社長を更迭、永松文彦氏を社長に据えた。永松社長は松本氏との関係清算という道を選び、契約解除を通告した。営業時間短縮は本部主導で行い、“加盟店の反乱”は強権をもって鎮圧すると宣言したが、決着までには時間がかかるとみる法曹関係者が多い。

失態相次ぐ

 昨年は「キャッシュレス元年」と呼ぶべき年だった。19年10月の消費増税に伴うポイント還元が起爆剤になった。主戦場はQRコード決済だ。ソフトバンクグループ傘下でスマホ決済のPay Payは後発組だったが、大規模な還元キャンペーンで知名度を上げ、人海戦術をとる。数千人規模の営業スタッフを動員、中小・零細店を開拓し創業1年で登録者数は2000万人に達した。LINEのLINE Pay(3600万人)に次いで第2位のシェアを確保した。

 11月、ヤフーを傘下にもつZホールディングスとLINEが経営統合を発表した。Pay PayとLINE Payを傘下にもつ両社の統合により、スマホの決済登録者数は5600万人と圧倒的なシェアを握る。

 キャッシュレス顧客の争奪戦でセブン&アイHDは決定的に出遅れた。7月に始めた「7(セブン)Pay」はサービス開始直後から不正利用が相次ぎ、3カ月でサービス停止に追い込まれた。7Payの社長が「二段階認証」を知らず、記者会見でしどろもどろになるという醜態をさらした。

 11月には、セブン加盟店支援担当の本部社員がオーナーに無断でおでん具材を発注していたことが明らかになり、12月にはパートやアルバイトなど店舗で働く従業員の残業未払が発覚した。記録が残っているだけで約3万人、約4億9000万円の未払いが発生していた。2001年に労働基準監督署から未払いを指摘されていたのに、当時はこの事実を公表していなかった上に対応しなかった。セブン&アイHD元会長の鈴木敏文氏はこうした事実を認識していなかったと証言しており、事態の経緯も不明だという。

社是「誠実でありたい」は空文化

 セブン&アイHDの「会社案内」の巻頭には、井阪社長の「セブン&アイグループは流通サービスのリーディングカンパニーとして、豊かで心躍る明日を築くイノベーションにチャレンジしています」という「ごあいさつ」とともに、グループの社是を載せている。

「私たちは、お客様に信頼される、誠実な企業でありたい。

私たちは、取引先、株主、地域社会に信頼される、誠実な企業でありたい。

私たちは、社員に信頼される、誠実な企業でありたい。」

 本部社員がオーナーに無断で発注することは、オーナーシップの否定につながりかねない。営業体制の見直しではファミマやローソンが先行し、セブンは後手に回る。セブンの本音は24時間営業の継続なのではないか。セブン&アイHDは鈴木元会長の時代から中央集権的な経営体質であり、過去の成功体験に縛られているとの指摘もある。課題が山積しているなか、社是の「誠実でありたい」に立ち戻って再出発する必要があるのかもしれない。

(文=編集部)