ペッパーフードサービスは11月14日、同社が展開する「いきなり!ステーキ」44店舗の閉鎖を発表し、衝撃が走った。大量出店の結果、自社競合が起きて収益性が悪化したと説明している。それを解消するために店舗閉鎖を進めるという。

 発表後も、しばらくは閉鎖する店舗名を明らかにしてこなかったが、このほどホームページ上で対象の店舗を公表した。12月25日時点で26 店舗の閉鎖計画が確認できる。具体的な閉鎖店舗は以下の通りだ。

 釧路店(北海道釧路市)、秋田横手店(秋田県横手市)、米沢万世町店(山形県米沢市)、山形 東根店(同東根市)、石岡店(茨城県石岡市)、千葉誉田店(千葉市)、千葉こてはし店 (同)、我孫子店(千葉県我孫子市)、行田店(埼玉県行田市)、銀座六丁目店(東京都中央 区)、虎ノ門店(同港区)、新橋店(同)、国立店(東京都国立市)、鶴ヶ峰店(横浜市)、足 柄店(神奈川県足柄上郡)、三条東新保店(新潟県三条市)、飯田店(長野県飯田市)、フレス ポ大町店(同大町市)、浜松三島店(静岡県浜松市)、浜松プラザフレスポ店(同)、福井種池 店(福井市)、和歌山永穂店(和歌山市)、神戸北泉台店(神戸市)、ヒルステップ生駒店(奈 良県生駒市)、フレスポ大洲店(愛媛県大洲市)、フレスポ西条店(同西条市)。

 さらに、HP上には記載されていないが、店頭で閉店を公表している店舗もある。

 閉店予定の店舗を見てみると、大量出店を行った18年にオープンした店が多いことがわかる。需要予測をきちんと行った上での出店であればよかったが、需要を甘く見積もり、結果として少ない需要を自社の店舗で奪い合うかたちになってしまった。また、郊外ロードサイド型の店舗が多いのも特徴的だ。

郊外店で家族連れの取り込みに難航

 ところで、いきなりステーキは郊外ロードサイドで家族連れの取り込みが遅れている。同店は男性1人客を主要ターゲットとして取り込むことで成長してきたためだろうが、メニューが家族連れ向けになっていないほか、家族がゆっくりくつろげる店舗の造りになっていないことが大きい。

 郊外ロードサイドで家族連れの取り込みが遅れているというのは致命的だ。なぜなら、一般的に郊外ロードサイド型の飲食店は家族連れがメインターゲットとなるためだ。閉店するいきなりステーキの店舗に郊外ロードサイド型が多いのは、家族連れの取り込みに失敗したことも要因だろう。

 ペッパーフードサービスは閉店を進める理由として自社競合を挙げているわけだが、自社競合が大きな要因となって閉店すると思われる事例を挙げてみたい。

 まず、19年4月30日にオープンし同年12月31日に閉店した浜松三島店の事例を紹介する。同店は1年たたずしていきなり閉店するわけだが、同店から車で30分以内に行ける距離に浜松有玉店(静岡県浜松市)と浜松湖東町店(同)がある。この2つの店舗は浜松三島店と商圏が被っているといえるだろう。また、浜松有玉店と浜松湖東町店も車で20分程度の距離だ。この3店は、お互いに顧客の奪い合いが起きていると考えられる。

 浜松三島店の近くにはペッパーフードサービスが別に展開するステーキ店 「ペッパーランチ」2店も存在する。さらに、車で30分のところにイオンモール浜松志都呂店(静岡県浜 松市)とイオンモール浜松市野店(同)がある。浜松三島店はこの2店とも多少の競合があったとも考えられる。

 ただ、この2店との競合はそれほど大きな影響ではないだろう。どちらも商業施設「イオンモール」内にある店舗で家族客がメインターゲットとなるが、郊外ロードサイドに立地し、家族客が手薄な浜松三島店とは客層が異なるためだ。同店を閉店するのは、浜松有玉店と浜松湖東町店との競合を解消することが主目的だろう。

自社競合以外の要因

 一方で、自社競合の影響は小さそうな店舗の閉店もある。たとえば、20年1月13日に閉店するフレスポ大洲店がそうだ。同店に1番近い自社のステーキ店は、車で40分のところにあるペッパーランチ92s-クニズ-エミフルMASAKI店(愛媛県伊予郡)となるが、この2店はある程度距離が離れているし、どちらも別々の商業施設内に入居しているので住み分けができていると考えられる。自社競合の度合いは低いだろう。フレスポ大洲店が閉店するのは、入居している商業施設内のほかの外食店との競争に敗れたためと考えられる。

 同じく20年1月13日に閉店する秋田横手店も、自社競合が主な閉店理由とは考えにくい。同店に1番近い自社のステーキ店は、車で30分のところにある商業施設内のペッパーランチイオンモール大曲店(秋田県大仙市)となるが、家族客が手薄ないきなりステーキの秋田横手店とは客層が異なるため、自社競合はそれほど大きくないだろう。

 都心部の店舗で閉鎖するところもある。たとえば、虎ノ門店がそうだ。同店は自社競合を解消するために閉店すると思われるが、浜松三島店のケースとは意味合いが異なるだろう。

 虎ノ門店の近くにある店舗として、徒歩20分のところに新橋日比谷口店(東京都港区)があるが、新橋日比谷口店がオープンしたのは17年8月と18年の大量出店より少し前だ。ほかに、徒歩20分のところに14年8月にオープンし20年1月13日に閉店する新橋店(同)、徒歩30分のところに14年2月にオープンし20年1月13日に閉店する銀座六丁目店(同)があるが、いずれも18年よりも前から存在する店舗だ。18年以降に出店した店舗で虎ノ門店と大きく自社競合する店舗は見当たらない。

 つまり、虎ノ門店は時間の経過とともに競争力が低下し収益性が低下したので、閉店せざるを得なくなったと考えられる。自社競合と競争力の低下は表裏一体の関係で、競争力が低 下したことで、これまで問題にならなかった自社競合が問題化してきたにすぎないのではないか。つまり、自社競合は副次的な問題といえるだろう。

 いきなりステーキの競争力が低下したのは、値上げにより割高感が出てきたことが大きい。コスパが悪くなり、客離れが起きたのではないか。そのため、自社競合の解消は必要だが、それだけでは不十分だ。値下げや肉の品質向上でコスパを良くするなど、競争力を高める必要がありそうだ。
(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)

●佐藤昌司 店舗経営コンサルタント。立教大学社会学部卒。12年間大手アパレル会社に従事。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。企業研修講師。セミナー講師。店舗型ビジネスの専門家。集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供。