ユニクロを運営するファーストリテイリングの先行きに、暗雲が垂れ込めている。韓国の不買運動などで海外事業が不振に陥り、1月9日に2020年8月期の業績見通しの下方修正を発表した。これを受けて株価は大きく下落。翌10日の終値は前日比1770円(2.8%)安の6万1990円となった。

 ファストリは1月9日、20年8月期の連結業績(国際会計基準)の下方修正を発表。売上収益を従来予想と比べて600億円少ない2兆3400億円(前期比2.2%増)、本業のもうけを示す営業利益を同300億円少ない2450億円(同4.9%減)、純利益を同100億円少ない1650億円(同1.5%増)に引き下げた。

 下方修正の大きな要因となったのが、韓国の不買運動だ。昨夏以来の不買運動により、19年9〜11月期の韓国事業の既存店売上高が大きく落ち込んだ。また、営業利益は計画を大きく下回り、赤字に陥っている。通期は大幅な減収減益となる見込みで、赤字になるとしている。こうした状況を受け、海外ユニクロ事業の下期の期初予想を減額修正するなどし、それに伴い連結業績を下方修正するに至った。

 韓国の不買運動は、日本による半導体素材の輸出管理の厳格化がきっかけで起きた。反日感情が高まり、日本製品の不買運動が起きた。代表格のユニクロは主な標的となってしまった。さらに、ファストリの岡崎健・最高財務責任者(CFO)が「不買運動は長くは続かない」と発言したことで「韓国の消費者を軽視している」との批判が上がり、ユニクロに対する不買運動は大きくなった。

 韓国は同社にとって重要な市場だ。ユニクロは韓国で186店(19年11月末時点)を運営するが、海外における店舗数は中国に次いで多く、海外全体の1割強を占める。韓国事業の18年8月期の売上収益は約1400億円にも上る。日本(約8600億円)や、中国本土・香港・台湾で構成するグレーターチャイナ(約4400億円)には及ばないものの、東南アジア・オセアニア(約1400億円)と同等の規模で、欧州や北米(いずれも約900億円)よりも大きい。今後の成長も期待されていただけに、不買運動でつまずいてしまったことは大きな痛手だ。

 海外でのつまずきで、ファストリの19年9〜11月期連結決算は厳しいものとなった。売上収益は前年同期比3.3%減の6234億円、営業利益は12.4%減の916億円、純利益は3.5%減の709億円だった。

 もっとも、19年9〜11月期は販売が苦戦した韓国と香港を除くと、増収増益だったという。なお、同期の国別の業績数値は公表していない。事業別では、国内ユニクロ事業は売上収益が前年同期比5.3%減の2330億円、営業利益が1.6%増の385億円だった。海外ユニクロ事業は売上収益が3.6%減の2807億円、営業利益が28.0%減の378億円だった。カジュアル衣料品店「GU(ジーユー)」の事業は大幅な増収増益、買収ブランド群の事業は大幅な減収減益だった。

国内ユニクロ事業も不振

 だが、海外ユニクロ事業だけではなく国内ユニクロ事業の不振も懸念だ。国内ユニクロ事業の既存店売上高は前期(19年8月期)までは好調だった。同期の既存店売上高は前期と比べて1.0%増え、7年連続で前年超えを達成。好調が続いていた。ところが、今期に入ってからは不振が続いている。19年9〜12月はすべての月が前年を下回った。累計の前年同期比の増減率は4.5%減と苦戦している。

 19年9〜12月は気候や天候といった外部要因が大きく影響したため、減収はある程度は致し方ない面がある。同期間は暖冬の影響で気温が例年と比べて高い日が多く、防寒衣料の販売に苦戦した。こうした流れはユニクロに限ったことではなく、衣料品専門店各社に共通している。

 また、10月は台風19号の影響でユニクロの国内全店舗の4割強に当たる352店が一時的に営業停止を余儀なくされている。

 こうした外部要因が大きく影響したため、19年9〜12月の既存店売上高が落ち込んだのはある程度は致し方ない。ただ、すべてを外部要因のせいにはできない。そして、このことから国内ユニクロ事業の課題が浮き彫りになったともいえる。

 課題とは、過剰在庫の抑制だ。過剰在庫をさばくには値引き販売する必要があるが、値引き販売は利益減少につながってしまう。そのため、過剰在庫は望ましいことではない。だが、19年9〜11月期は暖冬で秋冬商品がだぶつき、過剰在庫となってしまった。早期の値引き販売を余儀なくされたため、値引率は前年同期と比べて拡大したという。

 たとえ暖冬であっても過剰在庫が発生しない仕組みを構築することが必要だ。つまり必要な分だけを生産することであり、そのためには、需要予測の精度を高め、追加発注にかかる時間を短縮するほか、商品化のサイクルを短縮し、ニーズに合った商品をこまめに投入できる体制を築かなければならない。それを実現できれば、必要最小限の在庫で済むようになり、過剰在庫を抑制できる。

 この分野で先進的なのが、「ZARA」を展開するインディテックスだ。消費者ニーズや市場動向を読み取って商品化するまでの期間は2〜3週間と、圧倒的な短サイクルを実現している。機動的に生産量や在庫を調整することを可能にしているのだ。これにより、トレンドの変化などに柔軟に対応することができている。

 ユニクロがZARAのように超短サイクルで製品の開発・生産ができれば、過剰在庫を大幅に抑制できるだろう。たとえば、暖冬が続くと判断した場合には、暖冬に適した製品を即座に開発して店舗に投入するといったことが可能になり、無駄に在庫を持たなくて済むようになる。

 ユニクロは、国内外で新たな問題と課題に直面している。はたして適切に対処できるのか。
(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)

●佐藤昌司 店舗経営コンサルタント。立教大学社会学部卒。12年間大手アパレル会社に従事。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。企業研修講師。セミナー講師。店舗型ビジネスの専門家。集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供。