食の可能性を追求してきた者たちの知恵が、新型コロナウィルスが拡大する今、活きていく。3月24日放送のテレビ番組『ガイアの夜明け』(テレビ東京)は「ニッポンの“食”を守る!」をテーマにさまざまな人々の活動を追った。

 跡部美樹雄(フードイズム社長)は、どうやったら上質の熟成肉ができるかを考え続けてきた。悩んだ末に相談を持ちかけたのが、明治大学農学部の村上周一郎教授。熟成肉をつくり出す菌とそうではない菌が存在することがわかり、カビの一種であるヘリコスチラムの胞子を付着させた「エイジングシート」が開発された。何もせずに放置する従来の熟成肉のつくり方だと、40〜50日かかり半分は腐ってしまう。肉をエイジングシートでくるむと、20日ほどで熟成し、旨みも増す。

 跡部は肉以外にも可能性を求め、タラ、サーモン、ブリにもエイジングシートを試みた。その成果を得て、水産加工品の老舗企業、ニチモウフーズに売り込みにいく。味はどうなのかと首をかしげていた社長も、一口試して満面に笑みを浮かべ、「熟成ブリの刺身」というネーミングまで思いつくのだ。

 新型コロナのニュースがあふれ出した頃、普段、肉を卸している焼き肉店から跡部は相談を受ける。客からのキャンセルが相次ぎ、仕入れた肉を大量に廃棄せざるを得ないという。跡部は肉をエイジングシートで巻くことを勧める。その結果、エイジングシートは肉の長期保存にも役立つことがわかった。これは廃棄ロスなしの食の革命につながるかもしれない。

 井上和馬は、缶詰によって世界の飢餓が解決できるのではという思いから、勤めていたIT企業を辞め、「カンブライト」を創業した。少量多品種で高付加価値のものをつくるがコンセプトで、「牡蠣みそ」「豚タンの薫りアヒージョ」「ごろごろベーコンのナポリタン風煮込み」などユニークな製品を出している。

 カンブライトの理念の一つが「競争より共創」。多くの企業や農家と協力して、規格外で出荷できない農産物などから製品をつくりだしている。そのことは、もう一つの理念「食品ロス対策」にもつながっていく。

  岐阜県の明宝ハムと協力して、大量に出る端材から、新たな商品を開発。その縁で、増えすぎた鹿を狩る猟師の自分が止めた命を活かしたいという思いを受けて、鹿の製品もつくりだした。新型コロナの影響を受けて、ネギトロになるはずのマグロが大量に廃棄せざる得なくなっている現場を目の当たりにした井上は、なんとか力になりたいと頭をめぐらせる。これまで振り絞ってきた知恵がきっと活きていくだろう。

「非常に意義の大きな番組」

 厳しい状況のなかでも前向きに新たな課題に取り組む企業たちを追った今回の放送内容に対し、インターネット上では次のような声があがっている。

「新型コロナで外食危機。缶詰の人の話良かった。今回は高級食材の話だったけど、缶詰業界に希望がある感じがした」(原文ママ、以下同)

「そういえば昨日のガイアの夜明け、カンブライトさん良かったな。缶詰作るから辞めるらしい、と聞いた時にはどないしたんやろうって思っていてその時聞けなかった志、端材として捨てられるはずの食材をなんとかできないかという志、素敵でした」

「熟成&缶詰で捨てられるはずの食材を逆により美味しくするという良い話だった」

「『食品ロス』が消費者に嬉しい新ビジネスに」

 同番組を見た経済記者は語る。

「新型コロナで飲食業や宿泊業、さらには製造業まで広い範囲で悪影響を受けているという悲観的なニュースが多いなか、逆境を逆にチャンスととらえビジネスを拡大させている企業や、新たな問題を解決するソリューションを提供して困っている人や企業を助けてビジネスにつなげている企業もあります。危機を単に悲観的にとらえてばかりでは、日本全体がドン詰まりになるだけ。危機のなかでも新しい取り組みによってチャンスをつかんでいる企業の具体的な事例を紹介する今回の『ガイア』のような番組は、非常に意義があると感じます。“神回”といっていいと思いますよ」

 新型コロナという試練から、新たな道を探ろうとする姿は、食品業界以外の人々にも学びを与えてくれたのではないだろうか

(文=編集部)