ロイヤルホールディングス(HD)が展開する「天丼てんや」の不振が止まらない。2月の既存店売上高は、前年同月比1.8%減だった。2018年1月に実施した値上げ以降、前年割れが目立つようになった。それ以降、不振が止まらない。18年1月から20年2月までの26カ月間で前年を上回ったのは、わずか3カ月だけだ。

 18年1月の値上げでは6種類のメニューを10〜50円引き上げた。売り上げの4割弱を占めるとされる「天丼並盛」は、500円から540円(税込み、以下同)に値上げした。また「定食のごはんお替わり自由」を廃止し、「追加料金なしで大盛り」に切り替えた。これ以降、客数・売り上げ減が顕著になった。

 その後、19年4月に「定食のごはんお替わり自由」を復活させたほか、消費増税の際に天丼並盛など主力メニューを実質値下げし集客を図っている。だが、既存店売上高は回復していない。消費増税の際は、天丼並盛など大部分のメニューは税込み価格を据え置き、店内飲食と持ち帰りで税込み価格をそろえた。これらを店内飲食する場合、実質値下げとなる。これにより客足回復が期待されたが、昨年10月の既存店売上高は10.3%減と大きく落ち込んだ。そこから今年2月まで5カ月連続マイナスで、売り上げが回復する気配はない。

 やはり、18年1月に天丼並盛を500円から540円に8%も大幅値上げしたことが大きい。また、ワンコイン(500円)ではなくなったという心理的な割高感も影響していそうだ。消費増税時の“実質値下げ”も、実際に価格が下がったわけではないので、割安感の演出は限定的にならざるを得ない。さらに、一部商品は値上げとなったので、その影響もありそうだ。

 てんやの天丼・天ぷらは、天丼並盛以外は価格が高い。定番の天丼・天ぷらの並盛サイズでいえば、「野菜天丼」が店内飲食で560円(以下、すべて店内飲食の価格)と、まずまずの価格だが、ほかに手頃な価格な商品はない。たとえば「上天丼」は690円、「天ぷら定食」が730円、「海老と貝柱のかき揚げ天丼」が840円と、いずれも高めだ。

 季節商品も高いことがもっぱらだ。2月下旬から販売を始めた「桜海老天丼」は、並盛で820円にもなる。1月上旬に発売した「西京風銀ダラと白魚天丼」は890円、昨年11月下旬に販売を始めた「蟹と帆立の天丼」は980円だ。季節商品は概ね700円台から900円台となっており、どれも高額といえるだろう。

 こうしてみると、天丼並盛以外は大半が600円以上だ。これはチェーン店のなかでは高いほうだ。「吉野家」など大手牛丼チェーンや「日高屋」など大手ラーメンチェーンは、てんやほど高くないので、こうした競合と比べると、てんやの高さは突出している。それでも天丼並盛が500円であれば、こうした競合に十分対抗できた。しかし、値上げして540円になったことで対抗できなくなった。

店舗数も伸び悩み

 値上げ以降、既存店売上高の不振が顕著だ。前述した通り2月が1.8%減で、1月は4.1%減だった。通期ベースでは17年12月期が2.1%減、18年12月期が3.2%減、19年12月期が前期比4.2%減と、3期連続で前年割れが続いている。

 てんや事業の業績も低迷が続いている。19年12月期の売上高は3.7%減の127億円、経常損益は3100万円の赤字(前期は3億7000万円の黒字)だった。てんや事業が足を引っ張り、ロイヤルHDの19年12月期連結決算は増収ながらも減益となってしまった。売上高は2.1%増の1405億円、純利益は31.1%減の19億円だった。

 てんやは業績低迷もあり、店舗数が伸びていない。18年2月に発表した中期経営計画では、18年から20年までの3年間で国内では62店を出店し、20年には250店以上に増やす計画だった。だが、19年末で200店にとどまっている。20年末の見通しは201店にすぎない。目標の250店は遠い彼方だ。

 てんやは同業の競合が増えているので、今後も厳しい戦いを強いられそうだ。和食レストラン「和食さと」のSRSホールディングスは「天丼・天ぷら本舗 さん天」を現在、関西を中心に約40店を展開する。390円の天丼を武器に成長を続けている。牛丼チェーン「松屋」を展開する松屋フーズHDは、390円の天丼などを提供する「ヽ松(てんまつ)」を展開している。うどんチェーン「丸亀製麺」を展開するトリドールHDは、関西を中心に天ぷら専門店「まきの」と「天丼まきの」を計10店超展開している。

 こういった同業の脅威が高まっているが、もっとも現状の競争相手は、同業よりも異業種の大手チェーンだろう。すでに熾烈な戦いを繰り広げ、“胃袋の争奪戦”を行っている。

 この競争のなかで重要となるのが価格だ。大手牛丼チェーンの「吉野家」「すき家」「松屋」は、主力の「牛丼並盛」をいずれも300円台で提供しており、圧倒的な価格競争力を持っている。とんかつチェーンの「かつや」は主力の「カツ丼(梅)」を539円で提供しているが、会計の際に次回来店時に使える「100円引き券」をもらえるので、これを活用すればもっと安く食べられる。ラーメンチェーンの「日高屋」「幸楽苑」は主力の「中華そば」を300〜400円台のお手ごろ価格で提供している。

 こうしてみると「手軽に食べられる価格」というのは、500円以内になるのではないか。客離れが続いていた「ケンタッキーフライドチキン」は、主力商品のオリジナルチキンやツイスターなどをセットにした「500円ランチ」を投入したことで客足が回復した。550円のランチメニューもあるが、ワンコイン以内かそうでないかの違いは大きい。無理をしてでも500円にしたことが奏功したといえる。

 こうしたことに鑑みると、てんやが天丼並盛を500円から540円に値上げしたのは明らかに失敗ではないか。元の価格に戻したほうがいいのかもしれない。いずれにせよ、全体の価格の見直しは不可欠だ。もっとも、ロイヤルHDはそのことを意識しており、19年12月期の決算説明会資料において、てんやの価格について「“日常食”としての適正価格設定へ」と記している。価格の見直しを示唆しているのだ。今後、どのような対応をとるのかに関心が集まる。
(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)

●佐藤昌司 店舗経営コンサルタント。立教大学社会学部卒。12年間大手アパレル会社に従事。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。企業研修講師。セミナー講師。店舗型ビジネスの専門家。集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供。