どんなに楽しい気分でショッピングしていても、いざ会計しようと思ったら、レジが長蛇の列で苛立ったという経験はないだろうか。また、自分が会計しているとき、小銭やポイントカードを出すのに手間取ってしまい、店員の視線が痛くなることもあるかもしれない。

 その一方で昨年11月、次のような一般人のツイートが、約3.5万リツイート(今年2月時点)を記録するほどの大反響を呼んだ。

「ユニクロの無人レジで『なんやこれ、わけわからんな…』とぶつくさ言いながら操作してたおじさんが、商品価格が一瞬で計算されて表示された時に『なんやこれ! すごいなこれ!!』って叫んでて、素直な人だなって思った」(編注:一部修正)

 そう、ファーストリテイリング傘下の大手ファストファッションブランドであるユニクロとGUは、数年前からセルフレジ(無人レジ)の導入を始めている。このツイートには「あれ年齢関係なく凄いって思うよね」「言葉には出さなかったけど同じ気持ち」といった賛同コメントが相次いでおり、その仕組みを不思議がっている人が多いようだ。

 そこで今回は、筆者がユニクロで実際にセルフレジを体験したのち、ファッション業界におけるセルフレジ普及の可能性について、流通ジャーナリストの西川立一氏に話を聞いた。

セルフレジ初体験…商品の読み取りは本当に一瞬だった!

 2月某日、筆者はユニクロの「アキバトリム店」(東京都千代田区)へ。さっそく4台のセルフレジを発見するも、閉店まで1時間を切っていたからか、そのうち2台は稼動していなかった。

 空いているセルフレジの1台を男性客が利用していたので、それとなく様子をうかがうも、操作に困ったような素振りはない。横の有人カウンターでは店員がなんらかの作業をしており、仮にセルフレジでトラブルが発生したときは、すぐ駆けつけられるようになっているのだろう。

 筆者はこの日、ユニクロの大ヒット商品である「ヒートテック」を含む、4点のアイテムを購入することに。買い物カゴに商品を無造作に入れ、セルフレジまで運んでいった。

 セルフレジにはくぼみがあり、購入商品をいちいち仕分けしなくても、買い物カゴごと置けるようになっている。続いて、タブレット端末の「お会計をはじめる」ボタンをタッチし、「(ユニクロの)会員IDバーコードはお持ちでしょうか?」という質問に「はい」or「いいえ」で回答。

 すると次の瞬間、4点の商品名と価格が、画面にパッと表れたではないか。

 厳密に計ったわけではないが、体感としては1秒も待たされなかったように思う。なるほど、これは確かに「すごいな」と叫びたくもなるだろう。

 その後「読み取った商品の数が合わない場合は、商品を動かしてください」と指示されるも、今回は4点で間違いないため、支払いへと移る。現金や電子マネー、QRコードなど、全6種類の決済方法から選ぶことができ、筆者はクレジットカードを指定。専用のカード読み取り端末を操作する必要があったが、こちらも特には難しくなかった。

 ちなみにセルフレジの反対側には、紙袋やビニール袋の陳列棚が。

 会計がセルフなら、袋詰めもセルフというわけだ。まったく面倒ではないといったら嘘になるが、それ以上に、会計をスムーズに終えられたという感動のほうが勝っているのも事実。店員にわざわざリクエストしなくても、好きなサイズや材質の袋を自由に選択できるので、むしろ好都合だとさえいえる。

セルフレジの要である電子タグは、ようやく実用段階に?

 ここで種明かしをすると、ユニクロとGUのセルフレジのカギとなっているのは、各商品の値札に埋め込まれた「RFID(電子)タグ」だ。

 バーコードのように一つひとつ「ピッ」と触れてスキャンしなくても、RFIDタグならば非接触の無線通信により、複数まとめて読み取ることができる。さらには商品名と価格はもちろん、サイズや製造時期といったあらゆる個別情報が記録されているため、会計時のみならず、棚卸しの簡略化や盗難防止にも役立つのだという。

 もっとも、RFIDタグ自体は前々から存在しており、ユニクロとGUのオリジナル技術ではない。2017年には経済産業省が、2025年までにコンビニの全商品にRFIDタグを取りつけようという、“コンビニ電子タグ1000億枚宣言”を策定していた。

 それだけ便利なRFIDタグを、他のアパレル店が採用していないのはなぜなのか。その背景を、流通ジャーナリストの西川立一氏はこう語る。

「RFIDタグを使ったものに限らず、コンビニやスーパーなどでは少しずつセルフレジが登場していますが、これらの小売店に比べるとアパレル業界はまだまだ遅れています。

 というのも、今でこそ1個あたり10円以下でつくれるようになったとはいえ、かつてRFIDタグは非常に高価でした。バーコードと違い、ただ印刷するだけでは済まないため、コスト面が普及のネックになっていたのです。

 また、アパレル業界には、客とのコミュニケーションをウリにしている部分もあります。これがファストファッションやカジュアル系ブランドなら抵抗はないでしょうが、高級ブランドになりますと、客自身に会計から袋詰めまで行わせるというのは考えにくい話ですよね。

 なお、ファストリの場合は、“情報製造小売業”を目指しているという事情が大きいです。さまざまな“情報”を集め、それに基づいた商品企画をしたり、生産量を調整したり、物流を合理化したり……といった具合ですね。実際2018年には、東京・有明の倉庫を自動化するのに成功しています。ユニクロとGUでセルフレジを推進しているのも、同社が情報製造小売業を実現するための一環だといえるでしょう」(西川氏)

 しかし西川氏は、「そのペースに差はあれど、アパレル業界でもセルフレジの導入は着実に進んでいく」と予言した。

「これからは人手不足の時代になってきますので、やはりユニクロとGU以外の店舗でも、セルフレジに頼らざるを得ないはずです。とりわけファストファッションやカジュアル系ブランドのユーザーは、丁寧な接客を求めているわけではありません。機械化によって手の空いたスタッフを他の業務に回し、効率化を図るのが妥当でしょう。

 そして、先述したように、RFIDタグのコストは年々下がってきています。アパレルは食品や生活雑貨よりも商品単価が高いため、RFIDタグのコストが負担になる割合は低いですから、それも追い風になるのではないでしょうか」(同)

 客にも店員にもメリットをもたらすセルフレジ。その快適さに、街のあちらこちらで驚きの声が上がるようになる日は、そう遠くないのかもしれない。

(文=宮元大地/A4studio)