洋の東西で大企業が顧客や社会を欺いた事件が連発している。

 東洋ゴム工業は10月14日に、検査データを改竄するなどして8万7000個あまりの製品を出荷していたと発表した。船のエンジンや鉄道車両、それに産業機械の振動を小さくするために使われる防振ゴムという製品である。

 東洋ゴムでは2007年に防火用断熱パネルの性能偽装が発覚。今年に入ってからは建築用免震ゴムのデータ改竄が明らかとなった。前者は住宅や建物の火災時の安全性を、後者はマンションやビルの耐震性能を損なうもので、災害時に人身に直接危害を発生させる危険がある。

 同社で非難されるべきは、製品のデータ改竄の重大事件がこれで3回目だということだ。当該製品を販売担当している東洋ゴム化工品販売のサイトには「人の暮らしに尽くします。モットーは誠心誠意。」とあったのだが、恥ずかしくなったのか本稿執筆時にはその表現が見当たらない。

 同社にはしかし、恥を知るだけではなく市場から退出してほしいと筆者は願う、いや要求する。というのは、同社が繰り返してきたのは単にビジネス上の誤りではなく、社会や市民に対して危険や被害を与える社会毀損行為だからだ。同社の欺瞞行為(不祥事とは言わない)は顧客や市場を含む社会に危険をもたらし、最終的には私たちの安全を脅かしたということだ。そしてそれを繰り返した。このような社会に対して敵対的な、つまり反社会勢力の存在を許すべきではない。

●社会への敵対行為の代償

 一方、三井不動産レジデンシャルが販売した横浜市都筑区の大型マンションの1棟が傾いた問題に対する旭化成の対応は対照的だ。同社は16日、子会社の旭化成建材が問題のマンションと同様に基礎工事に関わった物件を過去10年にさかのぼって調査する、と発表した。

 旭化成は、住宅や建材事業で「へーベル」をブランドとして展開している。このような社会敵対事件が巻き起こすペナルティの大きさを認識しているのだろう。東洋ゴムより速やかな対応だ。

 国外に目を転じると、排ガス規制で悪質なデータ隠蔽行為が発覚した独VWには、米当局から2兆円以上の制裁金を課せられる可能性があると報道されている。VWのディーゼル車は世界で1100万台以上も販売され、今回の事態でEUだけでも800万台がリコールされるとされる。さらに、購入したオーナーからの提訴、あるいは規制逃れにより環境汚染を引き起こしたことなどに関する提訴が多数予想される。

 09年にアメリカで発生した「意図せぬ急加速問題」でトヨタ自動車は、14年に米司法省へ12億ドル(当時約1200億円)の和解金を支払った。これは、トヨタの問題が悪意や意図的でなかったからそれで済んだのである。VWの場合は、その意図性からの反社会性が強く糾弾され、この世界最大の自動車メーカーの倒産の事態まで懸念されている。

●アメリカなら刑務所行き

 01年にアメリカで倒産したエンロンの事件では、少なくとも8人の役職者が収監された。決算を粉飾して投資家を欺き損害を与え、最終的には倒産させてしまった事件だ。これは経済事案で、今年問題となった東芝の粉飾類似事件はエンロン事件と構造も似ているし、悪質性も似ている。

 エンロンや東芝などの事件に比べれば、東洋ゴムの場合は直接市民の健康や安全に危害を加える恐れがあり、害悪度が高く、罪が重いのだ。

 日本はもちろん法治国家なので、対応する法規が事前に存在しなければ責任者を刑事罰に問うことはできない。東洋ゴムの品質責任者や経営者を、未必の故意で立件することも難しいのだろう。現に三菱自動車は2000年、04年とリコール隠しを繰り返し、当該する問題を抱えていた同社製自動車による死亡事故さえ起きていたのに、企業としてはいまだに存続してしまっている。

 東洋ゴムではデータ偽装の発覚が2回目となって、今年7月に山本卓司社長らが引責辞任したのは当然といえる。それに続いての3回目なので、もはや経営陣の退陣では責任を取ったということにはならないだろう。

 私の見解では、同社は社会に危険や害を成す製品を流布させた、しかもそれを知っていて隠蔽した。そんな市民に敵対する企業は速やかに解散して、遺留財産はお詫びのために社会福祉団体にすべて寄付するのがいいだろう。

「ばれなければいい、誰かに迷惑がかかっても仕方がない」という行為が3回も繰り返されたというのは、それが染みこんだ企業文化だからだ。「問題となっているのは一部の行為で、全部をそう見ないでほしい」というのは誤りで、そんな企業を許すべきでない。2回目、3回目のデータ改竄が行われたとされる明石工場を閉鎖することなどで、全社的に改善されるはずがない。

 ぜひ消費者運動によって、同社製品の不買運動をしたり、行政が購買停止、あるいは長期の入札停止などして社会的懲罰を与えるべきだと私は考える。タイヤなら、ほかのメーカーのものを買えば済むことだ。
(文=山田修/ビジネス評論家、経営コンサルタント)