2020年11月12日、ソニー・インタラクティブエンタテインメントの「PlayStation5」(以下、PS5)が発売された。新型ゲーム機の発売はいつもお祭り騒ぎとなるが、今回はコロナ禍による巣ごもり需要でさらに注目が集まり、初日から予約なしで買えた店舗やショッピングサイトは皆無。大手販売店はほぼ抽選販売となり、12月末時点でも多くの人が手に入れられない状況が続いている。

 クリスマスや年始にPS5で遊ぶことを楽しみにしていたゲームファンは悲嘆しており、子どもにPS5をねだられたが手に入れることができなかった大人もいるだろう。なぜPS5はこんなにも買えないのか。そして、品薄の状況はいつまで続くのか。IT・家電ジャーナリストの安蔵靖志氏に聞いてみた。

「1994年に初代が発売されて以降、歴代のPSは発売初日から爆発的に売れて品薄になるという状況が、もはや恒例になっています。PS5も、あと半年以上は抽選販売が続くでしょう。コロナによって事情が変わることもあり得るので、下手すると2021年末ぐらいまでは店頭に並ぶことはないかもしれません」(安蔵氏)

 そもそも、なぜ新型ゲーム機は発売後すぐに品切れを起こしてしまうのだろうか?

「PS5の場合、理由としてまず挙げられるのは、日本国内の販売数が絞られたということです。全体の生産数は今までとあまり変わらないと言われていますが、日本国内の出荷数はPS4の32万台に比べて、PS5は12万台しか売られていません。これは、ゲームのマーケットの中心が日本ではなく欧米になっているからです。特に今回はマイクロソフトの新型ゲーム機『Xbox Series X』が11月10日に発売されており、その対抗戦略としてアメリカに多く出荷したと言われています」(同)

 つまり、日本ではあまり売れないから出荷台数を絞ったという、ビジネスとして当然の判断があったというわけだ。確かに、2000年に発売されたPS2は日本市場だけで2日で100万台を売り切っていたが、当時と比べて国内の需要は落ちてきているといえるだろう。

 とはいえ、新型コロナの影響で家にいる人が増え、2017年3月に発売された任天堂の「Nintendo Switch」(以下、Switch)がいまだに品薄状態であることを考えると、12万台という初期出荷数は少なすぎるようにも思える。安蔵氏は、出荷が少なかった要因として、転売屋対策もあったと指摘する。

「対策をしても転売屋はそれを上回る方法で買い占めてしまうので、いくら出荷しても転売屋にしか行き渡らないという状況が続いていました。今回も、有力なネット通販サイトや量販店のほとんどが転売防止を掲げて条件付き抽選販売を行いましたが、あまり効果がなく、ソニーもPS5の本来の需要を見極めるために積極的に出荷しなかったのかもしれません」(同)

販売店が“乗り気”でない事情とは

 また、積極的でなかったのは販売店も同様だという。これは、ゲーム機の特殊な流通事情にも関係する。

「もともと、ゲーム機やソフトの流通には玩具のルートが使われていました。かつては問屋の力が強かったので、返品ができず、定価が高くなる上に値崩れも激しかったんです。しかし、ソニーがPSでゲームビジネスに参入してからはCDのような流通システムが導入され、ソフトの価格を下げ、リピート(追加販売)もしやすいように整備されました。

 ただ、販売店にとってゲーム関連は薄利で、たとえばソフトの粗利は約10%。量販店としてはあまりおいしい商材とはいえず、それでも数はさばけるので、店舗の“客寄せ商品”として扱ってきたという歴史があります。しかも、現在はネット通販が主になってきており、実店舗としては、儲からないのに管理や販売の手間ばかりかかるゲーム機やソフトの販売には消極的なんです」(同)

 現在、ゲーム機メーカーは数年おきに最新のハードを世界市場に投入し、ソフトを売っていくというビジネスモデルを展開している。しかし、販売店にとっては、新たなハードが発売された瞬間に旧世代機の周辺機器やソフトが在庫化してしまうリスクを抱えることになるのだ。

「現実的な解決策として、次世代機くらいからは、メーカーの直販だけになるかもしれません。そして、ソフトもダウンロード販売のみ。そうなれば欲しい人にだけ届いて、品薄が解消されると思います。転売屋が跋扈(ばっこ)する状況を見ると、そういう形がこれからの常識になっていくのかもしれませんね」(同)

 欲しいときに手に入らないという状況は、メーカーが思う以上に消費者にストレスを与えている。今PS5で遊べなかった子どもが、今後もゲームファンであり続けてくれるかどうか。メーカーには、そのあたりの心情も考えて、きちんと需要に合わせた供給ができるようにしてほしいものだ。

(文=武馬怜子/清談社)