コロナ禍でさまざまな業界が痛手を被る中、大人数での集まりを回避する動きが業績に直結したのがカラオケ業界だ。帝国データバンクの調査によると、2020年度の国内カラオケルーム市場(事業者売上高ベース)は前年から半減が見込まれている。

 大幅に減少した需要が戻らず、テレワークスペースとしての提供など新たな利活用プランの導入を模索するカラオケ業界の現状について、帝国データバンクデータソリューション企画部情報統括課副主任の飯島大介氏に話を聞いた。

ビッグエコーの第一興商は売上が4割減

――カラオケ業界の現状について、どう見ていますか。

飯島大介氏(以下、飯島) 20年は新型コロナの感染拡大に伴って3密を避ける動きが広まり、歓送迎会シーズンで稼働率が高い3〜4月に休業を余儀なくされるなど、カラオケ業界にとっては強い逆風となりました。休業や時短営業などで店舗の稼働率が低迷し、各社で売り上げが急減。

 5月に緊急事態宣言が全面解除された後は順次営業が再開されましたが、昼夜ともに街への外出が手控えられたことで利用客の回復は鈍く、特に都市部の繁華街の店舗では平常の営業状態に戻るメドが立っていないところで、今年1月から2度目の緊急事態宣言が発令されました。今回の調査は20年11月時点ですが、各社の業績推移を基にした20年度のカラオケ市場は、前年から半減すると見込まれています。

――大手も苦境に立たされていますね。

飯島 上場3社の業績は、いずれも厳しい経営環境を反映したものとなっています。「ビッグエコー」などを展開する第一興商は、20年4〜12月期で前年から4割近く売り上げが急減しました。20年度決算を迎えた「まねきねこ」で知られるコシダカホールディングスは通年で3割超の減収、翌期の9〜11月期も前年から6割近くの減収と、厳しいスタートを余儀なくされました。「カラオケの鉄人」を運営する鉄人化計画も、20年8月期の決算は2割の減収となり、3社の中では比較的落ち込みが少なかったものの、9〜11月期はやはり前年比3割の大幅な減収を強いられています。

 大手・中小に関わらず、客足の急減はカラオケ機器メーカー、ホットスナックやアルコール類をはじめ飲食料品を納入する事業者などの業界も直撃しており、関連産業を含めて経営面で大打撃となっているのが実情です。また、中小事業者の方が影響は深刻で、街のカラオケ喫茶などをはじめとして、すでに閉店や休廃業、さらには倒産といった形で淘汰が進むものと思われます。

――コロナ禍以前からカラオケ離れを指摘する声もありましたが、実態はどうだったのでしょうか。

飯島 確かに、一時は他のアミューズメントに押される形でカラオケ人気に陰りがみられた時期もありました。しかし、近年は特に中高生など若年層を中心に、安価で手軽に楽しめるレジャーとしてカラオケは再注目されていました。

 帝国データバンクの調査では、19年度のカラオケ市場は前年度比1.4%減の約3400億円でしたが、近年は概ね横ばいで推移しています。また、レジャー白書(日本生産性本部)によれば、19年のカラオケ参加人口は2980万人。10年前(4680万人)に比べると約6割の水準に留まるものの、最も落ち込んだ16年(2810万人)からは増加しており、近年は微増傾向にありました。そのため、大手各社は繁華街を中心として積極的な出店や新機種の投入、フードメニューの拡充などで、利用者の獲得を進めてきたのです。

――カラオケ業界の今後の見通しについて、教えてください。

飯島 現在、高い防音性能やプライバシー保護性能の高い個室などを生かした「歌わない」カラオケルームとして、新しい使い方を模索する動きが進んでいます。たとえば、ブラザー工業傘下で「JOYSOUND」を展開するエクシングでは、一人で楽しむ「ヒトカラ」のほか、無観客ライブなどの生配信も行う「みるハコ」など、カラオケ以外のアミューズメント需要を捉えています。

 第一興商は、駅に近い店舗立地を生かし、「ワーキングスペース」としての利活用を目的としたレンタルオフィス事業を17年から展開しています。さらに、法人向けのテレワークプラン利用を500店舗にまで拡大し、東京都などの自治体とも連携して、サテライトオフィスとしての利用促進を図っています。こうした新たな営業スタイルの取り込みが本業のカラオケルームの売り上げをどこまで補えるか、という点は、今後注目していく必要があるでしょう。

(構成=長井雄一朗/ライター)