新型コロナウイルスで苦戦している外食大手で資本増強が相次いでいる。ファミリーレストラン「ロイヤルホスト」を運営するロイヤルホールディングス(HD)は2月中旬、総合商社の双日と資本業務提携した。

 双日への第三者割当増資で約100億円、新株予約権の発行で約78億円を調達する。みずほ銀行、日本政策投資銀行、福岡銀行、西日本シティ銀行に対し議決権のない優先株を割り当て60億円を調達する。払い込み期日は3月末。双日が新株予約権を全て行使すれは株式の20.07%を握り、ロイヤルHDは双日の持ち分法適用会社となる。

 現在、筆頭株主の公益財団法人江頭ホスピタリティ事業振興財団の持ち株比率は6.20%から4.95%へ、第2位株主の創業家の資産管理会社キルロイ興産は4.11%から3.28%へそれぞれ低下。双日が断トツの筆頭株主となる。

 ロイヤルHDの機内食事業の子会社ロイヤルインフライトケイタリング(RIC、大阪府泉南市)も双日が第三者割当増資で株式の60%を取得して連結子会社に組み入れる。同事業はロイヤルHDの連結対象から外れる。RICは4月1日付で社名を双日ロイヤルインフライトケイタリングに変更する。

主力4事業はすべて赤字

 ロイヤルHDはファミリーレストランの「ロイヤルホスト」や「天丼てんや」の外食事業、空港・高速道路内のレストランなどのコントラクト事業、機内食事業、「リッチモンドホテル」のホテル事業が主要4事業だ。

 コロナの直撃を受けた。不採算の飲食店約90店の閉店、315人が応募した希望退職の実施による人員削減による構造改革を進めてきたものの、20年12月期の連結決算は惨憺たる結果に終わった。

 連結売上高は前期比40.0%減の843億円、経常損益は198億円の赤字(その前の期は46億円の黒字)、最終損益は275億円の赤字(同19億円の黒字)と過去最大だ。主力4事業が軒並み経常赤字に転落した。外食事業は38億円の赤字(その前の期は23億円の黒字)、コントラクト事業は26億円の赤字(同14億円の黒字)、機内食事業は18億円の赤字(同10億円の黒字)、ホテル事業は69億円の赤字(同36億円の黒字)である。

 その結果、自己資本比率は19年12月末の49.6%から19.7%に急降下。需要がいつ戻るか見通せないため、20年12月末の自己資本208億円を食い潰し、債務超過に転落するのは時間の問題となった。双日や金融機関から第三者割当増資などで約240億円を調達して自己資本を増強。回復が見込めない機内食事業を双日に売却し、連結決算から切り離した。

双日の傘下に入ることを決断した理由

 ロイヤルHDの菊地唯夫会長が双日の傘下に入ることを決断した。菊地氏は日本債券信用銀行(日債銀、現あおぞら銀行)出身。日債銀が経営破綻した後、ドイツ証券を経て04年、ロイヤル(現ロイヤルHD)に入社。10年、社長に就いた。

 菊地氏が社長になった時、榎本一彦会長は最高顧問に退き、今井明夫社長が会長に。榎本氏は創業者の江頭匡一氏から事業を託された後継者で、地元のデベロッパーの福岡地所のオーナーでもあった。その榎本氏がロイヤルの社長に日債銀の後輩である菊地氏を就けた。すぐに内紛が勃発した。11年、“反榎本”の今井会長が榎本派の菊地社長に退陣を迫ったが、菊地社長が逆に今井氏らを解任し、反乱を鎮圧した。これ以降、菊地体制が続いている。

 菊地氏は主力のファミリーレストラン「ロイヤルホスト」の低迷が続いたため、ファミレスに代わる事業の柱としてリッチモンドホテルに注力した。政府のインバウンド推進を受け、ホテルは42施設まで増やした。だが、新型コロナの直撃を受け、インバウンドを含めて宿泊客が激減。巨額赤字を計上する破目に陥った。多角化が完全に裏目に出たわけだ。ギリギリ踏ん張っているのはファストフードの「天丼てんや」ぐらいだ。

 新型コロナの感染拡大を受け、菊地会長は資本増強に動いた。昨年9月頃から、証券会社を通してパートナー選びを進めた。ファンドなども候補になったが、最終的に双日が選ばれた。空港ビジネスを手がける双日との提携が魅力だったようだ。双日はロシアのハバロフスクやミクロネシアのパラオで国際空港を運営している。

 最大の難問は創業事業の機内食事業の扱いだった。創業者の江頭匡一氏は日本経済新聞の「私の履歴書」(1999年5月連載)で、1951年10月25日、日本航空1号機が就航した日を、こう回想した。

<最初に板付(いたつけ)の空港に降り立った乗客はわずか十七人だった。(中略)機内食も当初はサンドイッチをふろしきで包み、魔法瓶入りの紅茶を客室乗務員に渡すというもの。(中略) 機内食と空港レストランこそロイヤルの、そして私の飲食業の原点だと思っている>

 ロイヤルは機内食を創業事業と定めている。ロイヤルの原点であり聖域ともなった。だが、その機内食事業を売却することになり、「ロイヤルの関係者は大きな衝撃を受けた」という。機内食事業を運営するRICは関西、福岡、沖縄の3カ所に機内食工場を持つ。福岡空港、関西国際空港、那覇空港の国際線の旅客数はほぼ壊滅した。24年まで国際線の旅客数がコロナ前まで戻ることはないと予測されている。

 菊地会長はRICを双日に譲渡し、連結対象から外すことになった理由を「創業事業で参入障壁も高い事業だが、(海外への渡航が制限される中で)どなたかの手を借りないと回復は難しい」と説明した。空港ビジネスを手がける双日なら機内食を売却せず、手元に残すだろうとの読みが働いたのかもしれない。RICは連結からは外れるが、ロイヤルHDの持ち分法適用会社にはとどまる。

 菊地氏は「他の総合商社と比べても双日を選ぶだろう」と当初から双日と決めていたようだが、双日にとって、ロイヤルHDからの資本提携のオファーは想定外だったようだ。双日の藤本昌義社長は2月15日の共同記者会見の席上で「千載一遇のチャンス」「渡りに船」と本音ベースで語った。M&Aを共同で発表する席での発言としては異例のものだった。

 双日は他の総合商社に比べて川下の小売業で出遅れている。ロイヤルHDを傘下に収めることは、小売り部門の強化につながる。双日にとっては「棚からぼたもち」だったことを、藤本社長の発言が物語っている。

(文=編集部)