大手家電量販店のヨドバシカメラはネット通販サイト「ヨドバシ・ドット・コム」の販売比率を、現在の3割から5割に引き上げる。通販の配送に使う物流拠点の整備に600億円を投じて全国で翌日配送ができる体制を整える。

 通販の配送に使う物流拠点は現在5カ所あるが、三重県などに新設し、全国9拠点体制にする。沖縄などを除くほぼ全国で、夕方までに注文を受ければ翌日には消費者の自宅や指定された場所に届けられるようになる。現在は東京、大阪など大都市以外では2日以上かかっていた。アマゾンジャパン(東京都目黒区)などネット専業に対抗する狙いがある。ヨドバシカメラは実店舗とネットが同じ売り上げ比率という、日本で初めての会社になることを目指す。

ネット売り上げ初の2000億円を突破

 藤沢和則副社長が昨年7月1日に社長に昇格した。創業者の藤沢昭和氏は代表権のある会長に就いた。持ち株会社のヨドバシホールディングスの社長は昭和氏が引き続き務めている。和則氏は昭和氏の長男でネット通販事業を主導してきた。1998年、ネット通販サイト「ヨドバシ・ドット・コム」を開設。2011年、全商品の送料を無料とし、商品の当日配送を始めた。

 13年に書籍、14年には一般医薬品(大衆薬)のネット通販を開始。15年から、注文を受けてから最短6時間で商品を届ける「エクスプレスメール便」を東京都内の中野・杉並・新宿の3地区で始めた。「6時間」と時間を明示して届けるのは、アマゾンにもないサービスだった。

 16年には東京都23区全域、他一部地域を対象に、自社の社員が最短2時間30分以内に配達する「ヨドバシエクストリーム」に乗り出した。16年に神奈川県川崎市の大型物流拠点「ヨドバシカメラアッセンブリーセンター川崎」の5階建ての新施設(約24万平方メートル)を約100億円を投じて建設。延べ床面積を6倍に広げた。

 ヨドバシがこれほどの大型投資に踏み切るのは、ネット通販で取り扱う商品を増やすことと、物流機能の強化のためだ。18年からは酒類約7000種類の販売を始めた。19年4月、アウトドア専門の石井スポーツを買収した。M&Aに手を出さなかったヨドバシカメラが石井スポーツを傘下に収めたのは、アウトドア用品の取り扱いを拡充するためだった。15年当時、ネット通販で取り扱う商品は370万点だったが、年々増えてきた。18年2月期のネット売り上げは1100億円で、総売上高の約16%を占めた。

 コロナ前に600万点だった取扱商品数をコロナ禍で840万点まで一挙に増やした。これに伴いネット売り上げが急増した。通販新聞社がまとめた「ネット販売白書」によると、ヨドバシの21年3月期のネット売り上げは2221億円。前期比60.3%増と爆発的に伸びた。3年で売り上げが倍増したことになる。アマゾン以外で2000億円を突破したのはヨドバシカメラが初めてである。

 ヨドバシカメラの21年3月期の売上高は前期比3.8%増の7318億円。全社売上高に占めるネットの割合は30.3%。ネット売上高(絶対額)はアマゾンに次いで第2位である。コロナ禍で駅前の一等地に巨艦店を構えるヨドバシカメラは来店客が減り、実店舗の売り上げは落ち込んだ。それを補ったのが、ネット売り上げの驚異的な伸びだった。

アマゾンの国内売上高は2兆円超え

 新型コロナの感染拡大は小売業の勢力地図に劇的な変化をもたらした。「ネット販売白書」によると、ネット通販最大手のアマゾンジャパンの20年12月期の売上高は19年期比25.2%増の2兆1852億円。初めて2兆円の大台を超えた。

 休業や時短営業が相次いだことが響き、大手小売り各社は減収・減益となったが、アマゾンやヨドバシカメラの存在感は高まった。ネット通販の最大の弱点は配送までのタイムラグである。店舗在庫を抱えるリアル店舗と違って、購入する意思表示をしてから、ユーザーがその商品を使えるようになるのに時間がかかる。ECの事業者は、この課題を克服するため、宅配事業者と組んだり自社物流網を整備したりして“時短”を進めてきた。

 ヨドバシカメラのライバルの1社であるビックカメラの21年8月期のネット売り上げは前期比8.9%増の1564億円。全売り上げ(8340億円)に占めるネットの割合は18.8%。ヨドバシカメラを追い上げている。

 ヨドバシカメラは実店舗とネットを両立させる大手の小売業に大変身を図ろうとしている。

(文=編集部)