NHKが現行の受信料制度のモデルとしてきた、英国公共放送BBCの受信料(ライセンス料)制度に節目が訪れている。時事通信は18日、『英、受信料制度見直し表明 公共放送の課金制を検討』を配信。英国政府のナディーン・ドリース、デジタル・文化・メディア・スポーツ相は17日、同国議会下院で「技術の変化とともに、特に若い世代の視聴者の間で習慣も変化している」と指摘し、BBCの長期的な資金調達の在り方、罰則規定を伴う受信料支払い義務について「適切かどうかを今こそ真剣に問うべき時だ」と述べという。

 同記事によると、「動画配信サービスのように、視聴に対して課金する仕組みを軸に検討する見通し」とのことだ。

「高齢者が“懲役刑になる”と脅される日々は終わり」

 BBCのライセンス料が改革されることで、NHKが“頑なに守っている”と批判される日本の受信料制度改革の議論が進むことに、日本国内で期待を寄せる声が上がる一方、英国国内のインターネット上では別の視点から物議を醸しているようだ。下院での表明に先立つ16日、ドリース文化相は自身の公式Twitterアカウントで以下のように表明したことが発端だ。

「This licence fee announcement will be the last. The days of the elderly being threatened with prison sentences and bailiffs knocking on doors, are over.

 Time now to discuss and debate new ways of funding, supporting and selling great British content.」

(ライセンス料に関して、これが最後の発表になります。高齢者が懲役刑になると脅されたり、執行人が扉を叩いたりする日々は終わりです。素晴らしい英国のコンテンツに予算をつけ、支援し、販売していくための新しい道を話し合い、議論するべき時です)

This licence fee announcement will be the last. The days of the elderly being threatened with prison sentences and bailiffs knocking on doors, are over.

Time now to discuss and debate new ways of funding, supporting and selling great British content. https://t.co/sXtK25q27H

— Nadine Dorries (@NadineDorries) January 16, 2022

 一方、ドリース文化相が、高齢者に対するライセンス料取り立てなどを改革の一因として言及したことに対し、以下のような指摘が相次いでいた。

「私は少し混乱しています。コスト削減策として、75歳以上の無料BBCライセンスの終了を要求したのは保守党政権ではなかったのでしょうか」

「無料ライセンスは、年金受給者の状態を改善する計画の一環として1999年に労働党によって導入され、費用は政府によって資金提供されました。しかし、2015年に、保守党は2020年までにこれを段階的に廃止すると発表しました」

 BBCは75歳以上の視聴者の受信料を免除していたが、2020年6月以降はこの対象を年金受給者のいる低所得世帯に限定すると発表した。新型コロナウイルス感染症の影響で、徴収は一時延期されたが、徴収方針は自体は撤回していない。

英国、視聴料の支払い拒否に刑事罰

 日本の総務省の公共放送の在り方に関する検討分科会事務局が作成した資料「諸外国の公共放送の受信料制度の状況」によると、BBCの年間ライセンス料(2018年度、以下同)は2万2168円、徴収主体はBBCが担う。ライセンス料収入の総額は5294億円、徴収費用は147億円 (総収入の2.7%)、徴収率は93.4% 。支払い対象者は「受信機を設置又は使用する者」で、配信アプリ(iPlayer)利用の場合も対象となる。強制徴収は不可だが、未払い者に対し、以下のような罰則規定があるという。

「未許可の受信機の設置者等に対し、有罪判決に基づき、罰金(最高1000ポンド)等」

「罰金未納の場合は、刑務所収監もあり得る」

 18年度の日本のNHKの年間受信料は地上1万5120円、衛星2万6760円、受信料の総収入は7122億円、徴収費用は773億円 (総収入の10.8%)、徴収率は82.1%。支払い対象者は「受信機の設置者」で、ワンセグ機能付携帯電話・カーナビも対象だ。

 英国駐在経験のある全国紙記者は次のように説明する。

「英国では近年、受信許可料未払いの非犯罪化の検討が行われてきました。ライセンス料を支払わずにテレビを設置すること以上に問題になっていたのが、iPlayerを視聴することも刑事罰の対象になり、罰金が未払いだと懲役刑になってしまうことです。

 そうしたネット配信の視聴など社会環境の変化を踏まえ、デジタル・文化・メディア・スポーツ省は『BBCの受信許可料未払いの非犯罪化に関する提案』の公開諮問を実施し、このライセンス料の徴収方法と罰則についての改革に関し議論が進められてきた経緯があります。

 BBCは、この公開諮問に対し、独自調査の結果として『国民は受信許可料未払いの非犯罪化を強く望んでいない』『非犯罪化を進めるべきとした者は25%程度』などと反発しています。今回のドリース文化相のTwitterへの投稿は一連の議論を受けて言及したもので、日本人が考えている以上に現地の事態は複雑です。

 ただし、どのような形であれBBCのライセンス料の徴収方式が本当に変革されるのであれば、NHKへの影響も少なからずあるでしょう」

 NHKの受信料のあり方に関する議論にも多いに参考になる動きだ。英国政府とBBCの今後の動向が注目される。

(文=編集部)