オリックスは子会社で会計ソフト大手の弥生(東京・千代田区)を米投資ファンド・KKRに売却する。譲渡日は3月31日を予定している。金額は非開示としているが、約2400億円とみられている。22年3月期に子会社株式売却益として1632億円を計上する。これに伴い、22年3月期の連結純利益(米国会計基準)の見通しを前期(1924億円)比61%増の3100億円と、従来予想から600億円上方修正した。過去最高益だった19年3月期の3237億円と並ぶ水準になる。

 オリックスは21年10月までに弥生の入札手続きを開始。KKRのほか米ベイン・キャピタル、米ブラックストーンの3社が2次入札に進んだ。弥生は1978年の創業。2004〜07年にライブドア・グループ、07年からアジア系投資会社、MBKパートナーズの傘下にあった。オリックスは14年12月、弥生をMBKから800億円超で買収した。

 弥生の14年9月期の売上高は162億円。主力商品の「弥生会計」は小規模事業者向け会計ソフトで、全国に125万社以上の顧客があった。弥生の顧客は、日本の小規模事業者の4割を占めていた。オリックスは自社の営業網を活用して弥生の事業の拡大を図った。弥生の21年9月期の売上高は211億円、経常利益49億円。登録ユーザー数は250万件を超えた。

 買収した当初から、売上高は3割、顧客は倍増した。個人事業者向けのクラウド会計ソフトでは、およそ57%の国内シェアを持っていた(21年4月時点、MM総研調べ)。オリックスによる弥生の売却額2400億円は、買収額(800億円)の3倍。純資産の27倍、総資産の6.7倍で売却することになる計算で、しっかりリターンを手にしたことになる。

 社会のデジタル化やクラウド経由でソフトを提供するSaaSなど、弥生を取り巻く事業環境が変化している。SaaSは高い成長が期待されている分野とされる。オリックスは高値で売り抜ける好機と判断したようだ。

 KKRは豪州のMYOB、オランダのExactなど中小企業向けの会計・業務ソフトウエア会社のほか、米国のERP(企業資源計画)ベンダーであるEpicor、クラウド財務会計プラットフォームOneStreamなどへの投資実績がある。

 KKRは弥生の事業のなかでもクラウド型のサービスを高く評価したようだ。ソフトをパソコンにインストールして利用する従来のデスクトップ型からクラウド型に切り替える動きが広がる。導入コストが低いうえに、自動で最新版に更新できる使い勝手の良さが魅力だ。顧客に一度契約してもらえれば継続利用されることが多く、機能の拡充などを容易に提案できる。しかし、一度他社に顧客を奪われると奪い返すのは至難の業だ。利益を度外視してでもシェア獲得を急いだほうが中長期の業績拡大が狙える。

 KKRジャパンの平野博文社長は発表資料で「KKRはテクノロジー・ソフトウェア業界を成長著しい重要投資分野とみている」とコメント。世界的にソフトウェアやクラウドソフトを提供するSaaS分野などでの投資で培った経験と知見を弥生の成長支援に生かしていくとしている。

 クラウド会計ソフトを提供するマネーフォワード(東証1部)やフリー(東証マザーズ)はすでに上場している。KKRは数年かけて弥生を一段と成長させた後、新規株式公開で投下した資金を回収することになるとみられる。

オリックス株は14年ぶりの高値

 弥生の高値売却で巨額のリターンを得たオリックスは近年、投資会社の色合いを強めている。もともとリースを軸とした金融サービスが主力だったが、リーマン・ショック後、金利低下が一段と進み、リースやローンの収益の確保が厳しくなり、融資から投資に事業の軸足を移した。

 投資案件では、弥生のように成功した事例ばかりではない。20年1月に買収した後発薬メーカーの小林化工(福井県あわら市、非上場)では品質不正問題が発覚し、21年2月に行政処分を受けた。小林化工は21年12月、後発薬最大手、沢井製薬を傘下にもつサワイグループホールディングス(東証1部)に全工場を売却し、事実上の事業清算を決めた。オリックスの22年3月期の決算では、小林化工に関する投資損失が相当額発生することになるとみられている。

 オリックスの株価は年明けに急騰した。1月14日に2570円の昨年来高値をつけ、2007年10月以来、14年ぶりの高値水準まで上昇した。4月に予定されている「日経平均株価採用銘柄」の入れ替えへの思惑だ。

 SBIホールディングスに買収された新生銀行は、4月4日からの市場再編でスタンダード市場を選択した。日経平均採用銘柄から除外となる。代替採用候補について、複数の証券会社のリポートがオリックスを本命視している。長らく低迷が続いていたオリックス株が久方ぶりに動意を見せている。

(文=編集部)