原材料価格高騰などの影響で、生活に直結する食品の値上げが相次いでいる。帝国データバンクが上場する食品メーカー主要105社における価格改定動向について行った調査によると、5月19日までに累計8385品目で値上げの計画があり、そのうち5割超の4770品目では5月までに値上げした一方、6月以降も3615品目で値上げが行われる見通しとなっている。価格改定率は平均で12%となっている。

 ロシアによるウクライナ侵攻や円安相場などの影響もある中、食品の価格は今後も上昇傾向が続くのか。帝国データバンク情報統括部主任の飯島大介氏に話を聞いた。

加工食品と調味料で全体の約7割に

――スーパーに行くと、食品の価格が上がっていることがわかります。

飯島大介氏(以下、飯島) 今年に入り、値上げをする企業が相次ぎました。消費者は食品の価格に敏感なので、本来であれば値上げしにくい分野なのですが、原材料高騰などの製造コスト増に耐えられなくなったことが反映されています。食用油、小麦粉、大豆や砂糖など主原料系の高騰が周辺食材へ急速に波及する中、直近でも冷凍食品、醤油、食肉加工品、水産練り製品、豆乳や菓子などで原材料高を価格へ反映させる動きが急増しています。食品分野別にみると、最も多いのは加工食品で3609品目、全体の43%を占め、値上げ率平均は13%でした。

――なぜ加工食品の値上げが特に多いのでしょうか。

飯島 もともと加工食品というカテゴリ自体が広いという事情もあります。ハムなどの食肉加工品から、カマボコなどの水産加工品、即席めんなど、幅広い品目が当てはまり、いずれも値上げの動きがみられました。加工食品に多用される小麦や食肉に加えて、食用油の価格が高騰していること、原油高でラップなど包装材の価格が高騰していることが影響しています。

――次いで、調味料の値上げも目立っています。

飯島 調味料は1702品目で、値上げ率平均は10%です。加工食品と合わせて、全体の63%を占めています。ドレッシングやマヨネーズを中心に、特に食用油の価格高騰の影響が目立ちました。国内油脂供給量の約4割を占める菜種が主産地のカナダで天候不順により生産量が落ち込む一方、脱炭素社会に向けたバイオ燃料向けの需要が拡大し、相場価格は上昇傾向が続いています。菜種油はマヨネーズやドレッシングなど調味料の原料として使われるため、これらの品目を中心に値上げが相次いでいます。

――サラリーマンが晩酌で楽しむ酒類などはいかがですか。

飯島 酒類・飲料は1188品目で、バイオ燃料の原料生産に使われるサトウキビなどから作られる粗粒アルコールの価格高騰のほか、物流費高騰や円安の影響で値上げが実施されています。輸入ワインでは、1本あたり約400円値上げしたケースもあります。菓子の523品目も、ジャガイモの不作のほか、油脂や砂糖といった原料高、包装資材の高騰が響いた結果です。輸入小麦の価格高騰による影響を大きく受けるパン(454品目)は、年内に複数回の値上げを行ったケースもみられます。

――これほど多くの品目で一気に値上げが行われた背景には、何があるのでしょうか。

飯島 これまで、食品メーカーは値段を据え置いたまま内容量を減らす「ステルス値上げ」でコストアップに対応してきました。3月上旬時点で値上げを発表した企業の多くは、世界的な食料品相場の上昇や原油価格の高騰に伴う物流費や原材料費の値上がりが要因でしたが、為替でも円安がここまで進むとは予想していなかったはずです。5月初旬の段階で1ドル130円という水準は想定外だったでしょう。今回の調査では累計8385品目で値上げの計画があることがわかりましたが、全方位のコスト増と円安傾向が続けば、各企業はさらに価格への転嫁をせざるを得ない状況にあります。

食品価格の上昇は止まらない?

――食品の値上げラッシュは小売業界への影響も大きそうですね。

飯島 顧客獲得競争の激しいスーパーなどは、卸価格が上がっても販売価格に100%転嫁しにくい事情があります。それでも大手はプライベートブランド(PB)を展開しているため、ナショナルブランドの商品が高くなっても、PB商品に誘導すれば集客を維持できる上に、自社の利益になります。そのため、大手は体力的に乗り切れるかもしれませんが、PBを持たない中小は厳しい情勢が続くと思います。

――食品価格の上昇トレンドはしばらく続きそうですね。

飯島 そもそも、現在スーパーで販売されている食品価格の多くは1ドル130円の相場を反映したものではありません。今後も円安が長期化すれば、食品価格の上昇も続いていくでしょう。円安の継続に加えて、世界的な原材料価格の高騰、食品工場の人手不足などの要素もあるため、食品の価格が下落するトレンドにはなりづらいのが現実です。言い換えれば、今まで価格維持のために無理を重ねてきた食品業界の限界がきたということでしょう。

(構成=長井雄一朗/ライター)