障がい者雇用は促進されているのか――。厚生労働省は昨年12月24日、『令和3年 障害者雇用状況の集計結果』を発表し、「雇用障害者数、実雇用率ともに18年連続で過去最高を更新した」と発表した。着実な社会変革を匂わせる政府発表の影で、実際には企業規模による対応の格差や、「専任の対応人員を確保できない」といった課題は尽きないようだ。

中小企業の6割が「障がい者雇用枠」なし

 IT・人材大手レバレジーズが運営する障がい者就労支援サービス「ワークリア」は17日、中小企業の障がい者雇用の実態調査の結果を公表した。回答した企業担当者の約6割が、一般採用枠で対応している実態が明らかになった。

 調査は今年3月23〜30日、ウェブアンケート形式で、中小企業の採用担当者196人から回答を得た。「障がい者の採用枠は、一般枠と別に設けているか」との設問(96人が回答)に対し、「設けていない」との回答が57.3%、「設けている」が42.7%という結果になったという。

 また、「障がい者雇用専任の担当がいるか」との設問(86人が回答)に対し、「いない」と回答した企業は70.9%で、「専任がいない場合、主にどこの部署が担当しているか」との問い(61人が回答)を聞いたところ、「総務(54.1%)」がもっとも多く、次いで「人事(32.8%)」「労務(4.9%)」となったという。

法定雇用達成率の低下と精神障がい者の伸び率の増加

 一方で厚労省が昨年末に発表した集計結果によると、民間企業(法定雇用率 2.3%)の雇用障がい者数は59万7786人で対前年比 3.4%上昇、対前年差1万9494人増加した。実雇用率 2.20%、対前年比 0.05 ポイント上昇となり、雇用者数、雇用率ともに18年連続で過去最高となっている。

 国の障害者雇用促進法は、事業主に対し、常時雇用する従業員の一定割合(法定雇用率、民間企業の場合は 2.3%)以上の障がい者を雇うことを義務付けている。だが同集計では、法定雇用率達成企業の割合は47.0%で対前年比1.6ポイント低下した。

 雇用者のうち、身体障がい者は35万9067.5人(対前年比0.8%増)、知的障がい者は14万665人(同4.8%増)、精神障がい者は9万8053.5人(同11.4%増)と、いずれも前年より増加し、特に精神障がい者の伸び率が大きいようだ。

 企業規模別の雇用者数では、新たな報告対象となった43.5〜45.5人未満規模企業では2080人。従来から報告対象だった45.5〜100人未満規模企業で6万2175人(前年は5万8350人)、100〜300人未満で11万4905人(同11万3199人)、300〜500人未満で5万1657.5人(同5万824.5人)、500〜1,000人未満で6万7920.5人(同6万6588人)、1,000人以上で29万9048人(同28万9330.5人)という結果だった。全ての企業規模で前年より増加したのだという。

 雇用者数が増加しているのに、法定雇用率が達成できた企業数が減り、しかも中小企業の多くは「雇用枠」がないという実態をどのように見ればいいのだろうか。

一般から障がい者雇用、転換に壁?

 埼玉県の小規模食品製造業関係者はワークリアのアンケート結果を見て、「うちも何人か採用していますが、こんな感じ。特に採用枠を設けていません。担当は総務でしょうね」と語る。

 一方で大手機械機器メーカー系IT関連会社の人事担当者は次のように話す。

「人手不足や新型コロナウイルス感染症の拡大などのさまざまな環境変化で、業界全体でメンタルに不調をきたす社員は増えている感覚があります。昔は社会的な偏見などから拒否する人が多かったようですが、精神障害3級の認定を受け、休職などを挟んで、そのまま勤務を続ける事例を多く見ます。

 企業としては、すでに業務の知識があって、戦力になる人材をあらためて『障がい者』として雇用できるし、結果として法定雇用率のクリアにつなげたいという思惑があります」

 だが、そうであるのなら法定雇用率をクリアできる企業も増加していなければならない。

 うつ病で精神障害3級の認定を受けた神奈川県在住のシステムエンジニアの30代男性は「会社には(障がい者雇用の)打診を受けましたが、断って退職しました」と話す。

 東京都内の中規模情報通信企業で勤務していたが、人手不足に伴う過労と部署内の人間関係の軋轢で不眠、抑うつ状態になり、3カ月間休職した。職場復帰しようとしたところ、会社から福祉手帳の取得を薦められたという。

 男性は「社会的に障がい者に対して寛容になっているとは言いますが、元の会社は“脱落者”への風当たりが厳しい社風でした」と振り返り、次のように話した。

「建前として上司も同僚も『大変だったね』と口にしていても、職場の雰囲気はハレモノに触るような感じでしたし、社内で『いわくつきの人』が勤務する部署に異動になりました。当然、障がい者雇用専任の担当者など会社にいませんでしたし、会社が社会保険労務士などの専門家にアドバイスを受けていたかどうかも不明瞭でした。継続して勤めていくのは無理だと思いました」

 退職後、知人が創業した小規模ECサイト運営会社の一般枠の採用を経て、雇用されることになった。なお現在の会社では“障がい者雇用第一号”だったという。男性は語る。

「単純に考えれば、雇用者数や雇用率、企業の法定雇用率達成率は正の相関になりそうなのに、そうはなっていません。社会全体の認識が変わってくれるといいのですが」

(文=Business Journal編集部)