7月1日、家庭用フローズンミール(冷凍食品)「ロイヤルデリ」から、スペインの伝統料理であるパエリアやアヒージョが数量限定で発売された。今回の商品は「海の幸のパエリア」(税込み1280円、以下同)、「きのこと砂肝のアヒージョ」「海老とブロッコリーのアヒージョ」(ともに980円)の3種類だ。

 ロイヤルデリは、傘下にファミリーレストラン「ロイヤルホスト」を持つ、ロイヤルグループが手がける冷食で、2019年12月から本格展開した。

「ご家庭でもレストラン品質の味をお楽しみいただける」を掲げ、「コスモドリア」(650円)や「ロイヤル欧風ビーフカレー」(730円)、「黒毛和牛と黒豚のハンバーグ 洋食ドミグラスソース」(1080円)など、50種類以上のメニューで訴求。消費者は、店舗やECで購入した商品を電子レンジや湯煎などで温めて食べる。

 コロナ禍での在宅時間増の流れにも乗って成長し、冒頭の商品のように、期間限定で世界各国の料理を展開する「おうちで旅気分!」シリーズも人気だ。一方で、最近はロイヤルデリ事業の立ち位置も少し変わってきた、と聞く。

 外食大手の同社は、こうした「中食」(なかしょく/総菜や弁当などを買って自宅で食べること)事業を今後どう進めていくのか。事業の責任者に取材しながら考えた。

「外食・中食・内食」の境目がなくなってきた

「2020年から続くコロナ禍で、消費者の『飲食に対する意識』は一変しました。それまで『外食25兆円・中食10兆円・内食36兆円』と言われていたのが、外食のデリバリーやテイクアウトが増え、業態の境目がなくなっています」

 ロイヤルホールディングス(HD)の常務執行役員・佐々木徳久(のりひさ)氏は、こう語る。

 佐々木氏は現在、同HDで食品事業(商品部門・ロイヤルデリ事業)・コントラクト事業を担当する一方で、空港や高速道路エリア内の飲食事業などを担うロイヤルコントラクトサービス株式会社の社長も務める。2020年までロイヤルホスト社長を務めた人物だ。

 そのロイヤルホストはコロナ禍で大きく売り上げを落としたが、最近は持ち直し、2022年に入ってからの既存店売上高・来客数・客単価は、いずれも各月で前年超え。最新の6月は同「売上高127.0%、来客数125.0%、客単価101.6%」だった。

「ロイヤルホストでは、各店のコックがレストランの味を提供し、おもてなしの精神で接客します。一方のロイヤルデリは、主にご自宅で食べる料理ですが、多くの方は野菜を盛りつけるなど、ひと手間かけて楽しまれています」(同)

飲食は「時間と場所を選ばなくなった」

 ロイヤルデリが「自宅で食べられるレストラン品質の冷凍食品」なのは、外出着に着替えなくてよいので気がラクだ。だが、たとえば「パジャマ姿でドリアが楽しめる」という声もあった。こうした飲食のされ方は、ブランドとしてどうなのか。

「お客さまのココロが豊かになれば、いいと思います。ロイヤルデリ事業を本格展開して3年目ですが、コロナ禍の飲食で『時間と場所を選ばなくなった』のを痛感します。一方で、その時の気分や状況に合わせて使い分けるケースも聞きました」(同)

 佐々木氏はこう話し、夫婦と20代の娘の3人家族の例を紹介した。

「そのご家族は現在、お父さんが単身赴任中。単身赴任されている時は、お母さんと娘さんでロイヤルデリを楽しんでいただき、赴任先からお父さんが戻られた際は、3人でロイヤルホストにお越しいただくそうです」(同)

 ブランドの責任者としてはうれしい話だろう。ちなみに、ロイヤルデリはロイヤルホストの冷凍食品ではなく、ロイヤルグループの冷凍食品であると強調する。

「レストランのドリア」と「冷食のドリア」は別設計

 少しわかりにくいが、こうした位置づけだという。

「ロイヤルホストでは、自社グループが運営するセントラルキッチン(工場)でつくられた食材を、各店のコックがひと手間かけて仕上げます。たとえば『シーフードドリア』の場合、セントラルキッチンでシーフードドリア用のソースをつくります。それを各店舗に運び、店内でバターライスを炊く、ソースを加える、シーフード具をのせる、粉チーズをふる、オーブンで焼くなどの調理作業を行い、注文されたお客さまに提供します。

 一方、ロイヤルデリのシーフードドリアは解凍した商品を外袋から取り出し、お皿に乗せてラップをかけ、電子レンジで温めるだけ。出来上がりから逆算して商品設計を細かく行う必要がありました。料理の味の総責任者である西田光洋(商品本部・首席料理長)を中心に、試行錯誤しながら仕上げていったのです」(同)

 同社グループでは1960年代から冷凍技術の開発をスタートさせたという。長年培った調理ノウハウの象徴がセントラルキッチン(福岡県福岡市)だ。

 筆者もコロナ前、同社のセントラルキッチンを見学したことがあるが、巨大な釜でさまざまな料理メニューの下準備がされていた。ここで作られた食品は、レストランにも空港や高速施設内の飲食店にも配送されていく。

コロナ禍でさらに進んだ「消費者の変化」

 少し引いた視点で消費者心理を考えてみたい。

 マーケティングや商品開発の現場では、「消費者はどんどん変化する」という共通認識がある。ここでいう変化には「時代の変化」や「消費者自身の変化」がある。

 たとえば、夏の職場の服装を考えてみよう。クールビズの浸透により、何年も前から多くの職場ではポロシャツ姿での執務が認められていた。それが2020年からのコロナ禍で出勤する人が減ると、さらに緩和され、出勤者もTシャツ姿で執務する姿が目立つようになった。

 飲食店に行く際の服装も、昔とは大きく変わった。よほど高級な店以外は、ジャケット着用などのドレスコードも減っており、多くの人は気軽な服装で店に行く。

 飲食店の店内も様変わりし、特にカフェの場合は、明るい店内が好まれる。それが標準と信じる人も増えた。昔ながらの上質感で訴求する喫茶店が、あえて照明を落としていると「薄暗い(笑)」とネットに書き込まれる時代だ。以前からの傾向だったが、コロナ禍でさらに意識が進んだと感じている。

 共通するキーワードは「カジュアル化」。前述の「パジャマ姿でドリア」にも通じる。

「時短」を重視する消費者への訴求

 もう1つのキーワードは「時短」だろう。

 コロナ禍での家庭内調理も取材してきたが、消費者はさまざまな思いで調理と向き合っている。たとえば、カレーライスをつくる際、カレールーを野菜ジュースで味付けする人もいた。「野菜を洗って切り、煮込むのに比べれば時間短縮でき、衛生面でも安心できる」という。

 以前から、トンカツなどの揚げ物は家庭で行わず、総菜を買ってくるのが一般的となっていた。一方で記念日などの特別な日には、少し手間をかけてつくろうとする。

 レストラン品質の冷凍食品は、こうしたシーンに向くだろう。たとえば、「オニオングラタンスープ」を最初からつくると手間もかかるが、湯煎すればよい、というのは時短だ。

 時代の変化、消費者自身の変化として付け加えれば、近年は料理への意識も変わった。市販の総菜などを買ってきて、自分で切った野菜と一緒に盛りつければ“手作り料理”だ。

「BtoB」にも可能性が広がるが……

 ここまでは「BtoC」(企業対消費者)の視点で見てきたが、最近は「BtoB」(企業対企業)からも、ロイヤルデリの引き合いが増えているという。

「先日、関東地方の給食会社の役員の方と商談をしました。先方が運営する施設内にある飲食店向けにロイヤルデリを供給できないか、という話でした。これ以外に、コロナ禍で以前のように社員が出勤しなくなったため、社員食堂の運営に苦慮している会社も多い。ロイヤルデリの新たな展開として考えています」(佐々木氏)

 大企業でも「社員食堂が休止中」という話を聞く。一方で、出勤する従業員に向けて昼食や夕食の提供をどうするかの問題は残る。全国のオフィス向けに廉価の総菜を配送し、社食的に利用されている事例もある。価格帯などの課題は残るが、各社の従業員向けに弁当や総菜を配達する企業などが、今後は競合になるかもしれない。

 こうして考えると、「外食・中食・内食」の境目が低くなり、一段と「その日の気分で選ぶ」時代となっているようだ。コロナ禍だからか、新たな基準なのか、注視していきたい

(文=高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント)