Uberは、台頭するIT関連企業のなかで最も注目されている企業のひとつである。

 注目を集める理由はいくつかある。ひとつはその新興性だ。世界本社である米サンフランシスコでUber Technologies (ウーバー・テクノロジーズ)が創立されたのは2009年のことだ。まだ10年もたっていない。

 2つ目はその規模感だ。Uberはまだ上場していないが、投資会社の間での評価として、企業価値が700億ドル(約7兆8000億円)に達したといわれる。ちなみに日本最大の企業価値を有するとされるトヨタ自動車のそれが1560億ドル強(17年6月末)なので、未上場のUberがトヨタの半分の企業価値をまもなく達成するだろう。ユニコーン企業(企業価値10億ドル以上のベンチャー企業)としてはUberが世界最大といわれている。

 3つ目は、ビジネスモデルの革新性だ。Uberが創出し、提供しているのはシェアリング・エコノミーの概念に基づいた配車アプリである。

 前回に引き続き、今回もUber Japanの高橋正巳(まさみ)社長に、日本におけるUberビジネスの現状と展開をうかがった。

●世界のUber、日本のUber

――6月にUber米国本社が「世界中で50億回目のUber乗車を達成した」と発表されましたね。

高橋社長(以下、高橋) はい。Uberは現在、世界77カ国・地域でサービスを提供しています。20億回目が達成されたのが2016年だったので、その後1年間で倍増以上しました。

――主として利用されたのはuberX(ウーバーエックス)というサービスですね。

高橋 はい。uberXは、遊休資産として眠っている自家用車を運転したい人の隙間時間を活用し、お客の移動に提供するものです。登録運転者のことをドライバー・パートナーと呼んでいます。世界のUberのなかで、一番使用頻度が高いサービスです。

――その場合、顧客が知らない運転手への信頼などはどう担保されるのですか。

高橋 お客様は、乗車前にドライバー・パートナーの名前や顔、評価がわかる仕組みになっています。また、移動終了後に、お客様にドライバー・パートナーへの評価を入力していただくようにしています。評価が高いドライバー・パートナーには、より多くのサービス機会が提供できるようにシステム設計されています。

――すると、移動料金も変動的なのですか。

高橋 お客様のほうでピックアップしてほしい場所を入力、たいてい「現在地入力」で済むのですが、それと目的地を入力すると、近くのドライバー・パートナーの待機地点や料金も表示されます。降りるときには事前登録のクレジットカードで決済されますので、支払い行為も不要となります。イベント時や雨で需要が集中するようなときは、提示される料金も変わります。それを最適化するのがUberのテクノロジーです。

――AI(人工知能)やシステム・オペレーターを活用しているのでしょうか。

高橋 現時点で最善と思われるやり方で実践しています。

――普通の人が運転する車で事故が起きた場合は、どうなるのですか。

高橋 uberXを展開している多くの国では、Uberのサービス用に開発された自動車保険が適用されます。Uberのサービス実施時のみを対象とした自動車保険です。

●Uberは新興企業にして大企業

――Uberのサービス、そして会社自体もまだ新しいものですよね。

高橋 はい、2009年に米サンフランシスコで創業されました。最初のサービスはUberBLACK(ウーバーブラック)というもので、ハイヤーを配車するサービスです。これはどちらかというとプレミアムなもので、黒塗りの高級なハイヤーを配車します。実は私が初めてUberを利用したのも、このUberBLACKだったのです。

 当時私はサンフランシスコでソニーの投資部門に勤務していました。12年に友人とコンサートに出かけて帰ろうとしたら、バスも終わり、タクシーなどがまったくつかまらない状況になってしまいました。

 途方にくれていると友人が「問題ないよ」と言って、スマートフォン(スマホ)を操作しました。すると魔法のように数分のうちに黒塗りのハイヤーが現れ、私たちを迎えてくれました。友人は行き先を告げることもなく、まるで自分のお抱え運転手であるかのようにしていました。到着して、降りるときも支払いをしません。聞くと、事前登録したクレジットカードで支払いまで済んでいるというではありませんか! それまで、シリコンバレーで投資事業を担当していて、Uberについては毎日のように聞かされていました。しかし、あの夜の出来事は本当に衝撃的でした。

――それで入社を決意されたのですか?

高橋 実際に参画したのは14年のことで、7月にUber Japanの社長として赴任しました。しかし、始まりはあの夜のわくわく感、どきどき感であることは間違いありません。あれからずっと、Uberのユニークなサービスを日本に導入したらどんなことが起きるか、そしてどんなことができるのかに興味を持っていたのです。声をかけていただき、改めてUberのことを知ると、とにかくものすごい技術、そしてものすごいビジョンを持っている会社だと思い、参画を決意しました。

●今後のビジネス展開

――日本における今後のビジネス展開について、どのようにお考えですか。

高橋 プロダクトとして本格的に導入しているのは、UberBLACKとUberEATS(ウーバーイーツ)の2つです。この2つが現在でのビジネスの軸になっています。これらを軸にサービス提供エリアを拡大し、事業を大きくしていきたいと考えています。加えてグローバルな、つまり世界で共通のUberサービスを日本で提供するという使命もあります。外国人訪日客が他の国でいつも使っているUberのサービスを、日本ではまだ使用したくても使えないというのが現状です。今年の1月から3月の間に、東京でUberBLACKをお使いになったユーザーの方の国籍は78カ国に上りました。それだけ高いニーズがあるわけです。

――UberBLACKはハイヤーの配車サービスですが、すでに既存の競合他社はいくつもあります。

高橋 高級車両が来るだけでなく、配車アプリそのものも徹底的に洗練され、透明性があります。提供するハイヤーの料金も変動できるようにしています。

――規制の面はどのようにクリアされているのですか。

高橋 当社が旅行代理店として登録しており、ハイヤー会社から車両を借り上げることで
、サービスを実現しています。料金が変動することにより、お客様の利用状況とドライバー・パートナー稼動との需給マッチングが可能となります。Uberのテクノロジーによって、配車依頼が発生しそうな時間帯や場所が、ドライバー側のアプリに表示されるため、効率的にお客様を乗車させることができます。UberBLACKのハイヤーは営業所で待っているのではなく、需要が予測されるサービス提供エリアで待機しているのです。

――Uber全体としては、他にも多くのサービス・メニューがありますね。

高橋 Uberは世界中で展開していますが、それぞれの国・地域での特性や地域性も考慮しています。日本なら高齢化などの状況を踏まえて対応していきたいと思っています。

●GDPの成長にまで寄与

――高橋社長は、Uberというビジネスの価値をどうとらえていらっしゃるのですか。

高橋 Uberが提供するサービスは、既存のものを置き換えているわけではありません。新しい仕組みを提供して、それが使われることにより関連する経済のパイ全体を拡充しています。移動が簡便化し、利用が増えることにより、たとえば高齢者の皆さんの外出が増える、そして消費が拡大する、ということが起こっています。そして雇用の提供まで生み出しています。社会に対しても貢献できるサービスだと思っています。フランスではuberXのドライバー・パートナーとして新しく1万人以上の雇用が発生しましたし、GDPの成長にまで寄与したという報告がなされています。

――米国ではカラニックCEO(最高経営責任者)の退任が発表されるなど、トップの交代が重なっています。

高橋 日本に直接の影響はありませんし、私たちが日本でやらなければならないことは、わかっています。私たちは粛々とビジネスの拡大に励んでいくつもりです。Uberの使命は、それぞれの国での交通の課題を解決するソリューションを提供することです。高齢者や過疎化、増加する海外観光客の移動、そのような日本が直面する交通課題に対してチャレンジしていきます。

――とても大きな可能性があると思います。本日はありがとうございました。

高橋 ありがとうございました。

●対談を終えて 山田の感想

 シェアリング・エコノミーの新ビジネスの代表として、いつもAirbnb(エアビーアンドビー)と並んで論じられるのがUberである。世界中でビジネス展開しているが、従来からの法制などの問題でそのまま導入できないサービスが国によってはある。

 日本市場におけるひとつの可能性は、物流部門への参画ではないか。たとえば、アマゾンの配送。ヤマト運輸から値上げ要請を受けているアマゾンは、ヤマト以外で「ラストワンマイル」のお届けの方策を樹立しようと動いている。丸和運輸機関がこれに呼応し、1万人の配達ドライバーを採用したい、と報じられている。

 しかし、運送業界で喫緊の課題は、なんといっても人手不足である。丸和運輸が必要としているのは配達要員だけなので、UberEATSの配達パートナーがそのまま貢献できると私にはみえる。

 またコンビニ店舗からの個別配送にもマッチできるだろう。UberEATS側からすれば、配達する拠点がレストラン・パートナーに加えてコンビニとなるだけだ。UberEATSの配達パートナーがお届けすることができる。

 物流クライシスといわれる現在、シェアリング・エコノミーは経済合理性に基づいて自ずと拡充していくことだろう。
(文=山田修/ビジネス評論家、経営コンサルタント)