森友学園問題をめぐり7月27日と31日、大阪地検特捜部による籠池泰典同学園前理事長と妻・諄子氏への任意の取り調べが行われた。容疑は運営する幼稚園への府の補助金詐取と、小学校建築に際し国の補助金を不正に受給したという点である。そして31日には、大阪地検は2人を逮捕した。

 森友問題の本質は、安倍晋三首相による縁故者への便宜供与である。籠池氏の逮捕は、たとえ安倍首相夫人の昭恵氏が名誉校長を引き受けて支援までしていた縁故者であっても、安倍首相に逆らえば弾圧を受けるという典型的な事例である。

 森友問題は、明らかに籠池氏逮捕で幕引きをしたいという安倍首相らの狙いを感じる。しかし、森友が開設する予定だった小学校(大阪府豊中市)建設予定地の土壌中にごみがどれだけ混入していたのかを示すマニフェスト(産業廃棄物管理票交付等状況報告書)が7月に公表され、国有地を8億円値引きした根拠とされた2万トンのごみがないことが判明している以上、籠池氏逮捕の前に、国家財政に損失を与えた官僚たちを取り調べる必要がある。

●事前協議

 今回の逮捕に先立ち、7月26日付「NHK NEWS WEB」記事『近畿財務局と森友学園 売却価格めぐる協議内容判明』は、近畿財務局と森友学園側が売却価格をめぐって事前協議をしていたとして、要約すると以下内容を報じている。

・2016年3月24日、近畿財務局と森友の代理人である弁護士との間で行われた。
・森友側が1億6000万円しか出せないと言ったことに対して、近畿財務局がすでに土地改良工事(担当は中道組)に伴い1億3200万円を出す予定なので、その金額以上でないと困ると主張。
・この協議の6日後、3月30日に近畿財務局は大阪航空局にごみの撤去料の見積もりを依頼し、大阪航空局は約8億2000万円と算出。それを基準にして鑑定額約9億5500万円を決め、差し引き1億3400万円を売却額にしたという内容である。

 鑑定額やごみの撤去料、売却額についてはすでに判明している金額であるが、これまで近畿財務局が籠池氏の要望を受け、ごみの撤去料を算定し、最終的な売却額を決定したことになっていた。それが、実は事前に近畿財務局と弁護士との間でやり取りが交わされていたという。

 このやり取りのなかで、なぜ近畿財務局側が「1億3200万円以上」と言ったのか。土地の改良(土壌汚染除去や地下約3mまでの埋設ごみの撤去)や3m以深のごみの撤去料の合計金額が、土地の売却収入より少ないと、森友へ土地を売却する合理的理由がなくなるからだ。土地売却によって国家財政に損が発生すれば、会計検査院のチェックは免れなくなる。

 この事前協議のやり取りで注意を引くのは、売却価格が実際の埋設ごみ量ではなく、森友の支払い能力や近畿財務局の都合によって左右されている点である。

 森友と近畿財務局の話し合いのなかでは、両者とも3m以深にごみがないことを知っていたため、ごみの埋設量などを問題にする姿勢もない。そして払い下げるために、「土地改良工事後に小学校の建設工事に入ったが、そこで3m以深から2万トンのごみが新たに見つかり、その撤去料のために大幅に値引きして売却する」というストーリーをつくったことがわかる。

図表1:土地の価格とごみの撤去費
森友学園(8770m2)       鑑定価格9億5500万円
1回目 ごみの撤去料      1億3200万円
2回目 ごみの撤去量(算定量) 8億2000万円
               (合計9億5200万円)
契約購入価格          1億3400万円     
  
 26日のNHK記事では、市民団体が「近畿財務局が大幅な値引きによって国に損害を与えた」とし、背任容疑で告発し、それが受理されていることも報じていた。そして27日付NHK記事『森友学園への国有地売却 財務局が異例の分割払い提案』では、近畿財務局が売却に当たって一括払いではなく10年の分割払いに応じたことを報じた。しかし、近畿財務局の値下げ問題の要点を報道しながら、前出マニフェストの件については触れておらず、近畿財務局の責任を問う姿勢が曖昧になっている。

 虚偽の事実を基に国有地を値引いた近畿財務局、そしてその事実を覆い隠そうとしてきた財務省は、この事実について釈明する必要がある。

●マニフェストの意味

 森友問題はマニフェストの公表で状況が大きく動いている。7月7日、衆議院第一議員会館での市民団体による記者会見の内容は、同10日の衆議院委員会における福島伸享議員(民進党)の質問でも取り上げられ、同12日付当サイト記事でも報告した。

 森友が進めた「瑞穂の国記念小学校」建設を請け負った藤原工業株式会社によるマニフェストでは、近畿財務局が2万トン存在しているとしたごみが、たった200トン弱、つまり100分の1しか報告されていないことがわかった。この報告は、一部のメディアでも取り上げられた。

 鑑定価格9億円の土地を、9割の8億円も値引きして1億3400万円で払い下げたのは近畿財務局であり、それを許可したのは財務省である。そして、8億円値引きの根拠である、3m以深に2万トンのごみがあるとの算定を行ったのは、近畿財務局と大阪航空局である。

 マニフェストは、廃棄物処理法で定められ、事業者が行政に報告する文書であり、行政は保管しなければならない、情報公開請求の対象文書である。

 2015年度に森友から基盤整備事業(土地改良事業)を請け負っていた中道組が行った土壌汚染除去の報告書、さらに約3mまでの浅い部分から撤去した埋設ごみ(総量952.6トン)のマニフェストを、筆者らは今年4月に入手していた。

 一方、16年度に藤原工業が小学校建設に伴い排出した埋設ごみのマニフェストは、提出期限が今年6月30日であり、今年7月に入手した。そこには3m以深にあるとされた2万トンのごみどころか、「新築混合廃棄物」が194.2トン、つまり2万トンの約100分の1しかなかったのだ。

 ちなみにこのマニフェストは、不法投棄や不法処分を防ぐために、事業者が産業廃棄物を発生させた段階で、都道府県(または政令指定都市や中核衛星都市など)に1年以内に報告しなければならない。そして事業者自身は5年間保管・公表できるようにしておかなければならず、排出事業者としては最重要報告書である。

 森友問題では、国は国が保有する公文書を廃棄したり、一部を黒塗りの状態で公表するなどして、国会での追及でも事実を隠し続けた。しかし地方自治体が保有している公文書まで、国家統制のもとに隠し続けることはできない。

 今回の森友問題では、3m以深に2万トンのごみがあるという点が、事実を確認するうえでの最大のキーポイントであった。そこで筆者らは、森友の小学校建設地である豊中市への情報公開請求(公文書開示請求)を行い、マニフェスト報告書を入手したのである。また、豊中市議の木村真氏が撮影した建設現場の写真も入手した。

 マニフェストは、発生した産廃を種別ごとに、どれだけの量を運送し、どこで処分したのかを、搬送・処分した業者名も明らかにして報告する文書である。そこで虚偽の事実を記載することは、業者側としては許可認定を奪われ、生活を奪われることになるので、大きなリスクを伴う。そのマニフェストで3m以深に2万トンのごみがあるという近畿財務局や大阪航空局の嘘が暴かれたのであり、その瞬間に背任罪は決定したと言える。

 国家の役人たちが、なぜこのような国家財産の損害行為、背任行為に走ったかは、取り調べで明らかにするしかないが、その対象は、国有財産を所有していた大阪航空局と、事務手続きを行った近畿財務局の担当者・責任者となるだろう。いよいよ森友問題への真相解明は、関与した官僚たちを取り調べる段階に入ったと言え、それを決定づけたのがマニフェストである。

図表2:主な経過
2010年1月    当該地、地下構造物調査報告書(大阪航空局)
2012年2月    「平成23年度大阪国際空港場外用地(OA301)土壌汚染深度方向調査業務報告書」(大阪航空局)
2013年9月    森友学園が取得要望書提出。
2014年12月   (仮称)M学園小学校新築工事 地盤調査報告書
2015年1月27日  大阪府私立学校審議会。小学校設置認可。
2月10日     国有財産近畿地方審議会。森友学園に貸し付け、売却「処理適当」
5月29日     貸し付け契約締結。
7月〜12月    学園による土壌改良工事(土壌汚染除去、埋設物撤去―第1回目の埋設ごみ撤去)中道組
12月       藤原工業(株)小学校建設
2016年3月11日  校舎建設の基礎工事(杭打ち工事)で、新たな廃棄物が埋設されていること(高深度)がわかる。
3月24日     購入希望を出す。事前協議 近畿財務局と酒井弁護士
6月20日     近畿財務局が森友学園と売買契約(1億3400万円)

●籠池氏への容疑と2万トンごみ問題

 籠池氏の逮捕容疑である補助金適正化法違反は、3通の異なった金額の契約書の内、もっとも高額な契約金額を基に小学校建設の補助金を不正に申請し、詐取したというものである。その3つの金額は以下である。

(1)23億8464万円 
(2)15億5520万円
(3)7億5600万円 (大阪府に提出の森友と藤原工業との契約書)

(3)の契約書の内容は公表されていないため入手できないが、(1)(2)は、森友と藤原工業との工事請負契約書であり、いずれも15年12月3日に森友と藤原工業の間で契約書が交わされている(写真3参照)。

 補助金適正化法違反の対象になったのは、この(1)の工事費を、国への補助金の申請に当たって請求した結果、国から約5600万円を不正に補助金として交付されたという容疑である。しかし(1)と(2)の差額に注目すると、

・23億8464万円−15億5520万円=8億2944万円

 差額は約8億2000万円であり、深部ごみの撤去料とほぼ同じ金額である。藤原工業が16年3月11日、小学校建設の工事中、基礎工事のためのボーリングを行っていて、9mの深部からごみが見つかったという報告を受け、近畿財務局と大阪航空局が、そのごみの撤去料として算定した8億2000万円とほぼ同額である。

 つまり、森友の弁護士と近畿財務局が事前協議する約3カ月前に、この金額を前提として異なった2種類の契約書が作成されていたのである。小学校建設費が15億5520万円。それにごみの撤去料を加えて請求した金額が23億8464万円だとすれば、3月11日に深部ごみが見つかったというのはつくり話であり、その3カ月前からわかっていたこということになる。

 前出の藤原工業のマニフェストでは、新築混合廃棄物が194.2トンと報告されていた。このごみには埋設ごみは含まれていない。そのために、藤原工業は森友への建設工事費の請求額では、ごみ撤去料8億2000万円を差し引く必要がある。しかし当初は23億8464万円で補助金申請していたということは、藤原工業の森友への請求には、ごみの撤去料が含まれていたことになる。

 では2万トンのごみの架空算定による背任事件の筋書を書いた主役は、国有財産を払い下げるにあたって、一切の権限を持っている近畿財務局以外に考えられない。近畿財務局は森友の小学校用地深部には、ごみがないことを「平成23年度大阪国際空港場外用地(OA301)土壌汚染深度方向調査業務報告書」(大阪航空局)で把握していた。

 そのうえで16年3月11日、森友学園から深部からごみが出たという報告を受けて、3m以深に2万トンのごみがあると算定し、8億円の値引きを決めたのである。明らかに意図的な偽装算定であった。

 近畿財務局は、安倍首相や昭恵氏の縁故者である籠池氏の森友に便宜供与することで自らの地位を守り、出世を果たすという利害関係を推し量り、それによって8億円に上る国家財政の損失をもたらしたとすれば、その責任を問われるべきであろう(詳細は6月20日付当サイト記事『【森友】国、「深部ごみない」資料作成しつつ8億円払い下げ…財務省、背任罪の疑い濃厚』参照)

 では、8億円の損失によって、利益を得たのは誰なのか、お金の流れを想定しながら考えたい。

 森友であると考えられがちだが、森友は鑑定価格9億円の土地を1億3400万円で入手した後、2万トンのごみの撤去費用8億円を請負事業者である藤原工業に支払う必要があり、もしその分を請求されれば、値引きによって得をするわけではない。

 籠池氏はごみが無かったことを知っていたのか?またいつ知ったのか?が問題となる。

 得をするのは、請負事業者が「ごみがある」として撤去料を請求した時である。つまりごみの撤去費の請求やそのやり取りの行方を明らかにすることで、不当に利得を得た者が明らかになる。

 ちなみに、森友側で3m以深にごみがないことを知っていたのは、藤原工業、籠池メール(5月16日の民進党のヒアリングで公表)の内容が正しいとしたら、地中にごみがないことを隠しておこうと相談したとされる酒井弁護士、キアラ設計研究機関である。

 前述したとおり、国の財産に穴を空けた森友問題では、払い下げを計画したのは、権限を持つ国の官僚以外に考えられない。関与した役人たちは、忖度して森友への国有地払い下げを行い、その評価で栄転を計る。一方で、その計画に協力した事業者たちには、それなりの分け前を用意していたことが、これまでの経過からわかる。

 このように、森友問題では国が全体の計画を組み立てていたと考えられ、そうでなければ補助金の不正受給は成り立ち得ない。検察がまず立件しなければならない矛先は、財務省近畿財務局であり、国交省大阪航空局ではないか。
(文=青木泰/環境ジャーナリスト)