ご存じの通り、加熱式たばこが三つ巴のバトルを繰り広げている。愛煙家の関心といったレベルは優に超え、さまざまなメディアが経済ニュースの文脈で報道。中には需要増を背景とした株投資に関する記事もある。こうなると、嫌煙家としてもビジネス的に注目せざるを得ない、立派な社会的関心事といっていいだろう。

 改めてラインナップを確認しておく。先行リードに成功し、すでに全国販売を行っている「iQOS(アイコス)」(フィリップ・モリス・ジャパン)に、「glo」(ブリティッシュ・アメリカン・タバコ)と、「プルーム・テック」(日本たばこ産業=JT)の2機種が挑むという構図だ。

 特にプルーム・テックは唯一の「日の丸ガジェット」だけに、多くの注目が集まっている。これまではオンラインと福岡市内の一部販売店でしか購入できなかったが、今年6月に満を持して東京・銀座と新宿三丁目に専門ショップをオープン。更に7月から中目黒の専門ショップと都内のたばこ販売店など約100店舗でも販売を開始しており、首都圏へ「殴り込み」をかけた格好だ。

 とはいえ、実際に手に入れるためにはネットでIDの登録と事前予約が必要となる。理論上では、登録から最短で2時間程度で購入が可能なのだが、人気に生産が追いつかず、現在でも品薄状態が続いているという。

 現在、日本国内における紙巻きたばこの市場は年間約1738億本(2016年度)。これが年末になると、そのうち15%が加熱式たばこに置き換えられるという予測もある。なぜ、ここまで愛煙家の関心を集めているのか、JT広報部に分析してもらった。

「やはり日本人が、周囲の人々に気を使う人間性を持っているからか、と考えています。たばこの問題点として受動喫煙が指摘されていることもあり、以前から『周りの人々に迷惑をかけずにたばこを吸いたい』という潜在的なニーズが高いことは把握していました。加熱式たばこは、そうした需要に応えたわけですが、正直なところ、予測を遥かに上回る人気には、私たちも驚いています」

 ご存じのとおり加熱式たばこはたばこ葉を燃焼しない。そのため燃やす時に発生してしまう臭いもほとんど発生しない。喫煙者側も煙ではなく蒸気を吸うため「雑味が少ない」と歓迎する向きも少なくなく、周囲の人々も不快になる確率が下がるというわけだ。

 あくまでも「社の運用」だが、JT本社内では紙巻たばこは喫煙室でしか吸えないが、プルーム・テックは自席での使用が認められているという。飲食店やタクシー、レンタカーなどの業界でも「紙巻きたばこは禁煙だが、加熱式たばこならOK」という方針を採用するところが散見されるようになってきた。

 実はJTは13年にも、プルーム・テックの前身のひとつとなる「プルーム」を発売しており、プルーム・テックはその知見が活かされている。Ploom Shop 銀座店の浅香充俊・ストアマネージャーが言う。

「改良を重ねて、やっと愛煙家の方々に満足してもらえる商品になったと自負しています。操作は簡単で、持運びも楽。1度充電してもらえば、紙巻たばこに換算して約30本分にあたるたばこカプセルを5個連続して吸うことができます。また吸引時のみ電源が入る為、吸ったり中断したりが自在です。紙巻きたばこ2本分を連続して吸うこともできますし、1本の半分で止めることもできます。『自分の好きなタイミングで吸うことができてうれしい』と喜んでおられるお客様もいらっしゃいました。また他社製品の中には燃焼の匂いを感じるものもあるのですが、『プルーム・テックは感じられないね』と驚く方も少なくないですね」

 ストアの盛況は、予想を大幅に上回ったという。

「1階でお試しと販売、2階でカフェを営業していますが、驚いたのはすでにプルーム・テックを所持しておられるお客様が多いのだと再認識させられました。もちろん、お試しに来られる方も多く、その人数は1日平均で100人を超えます」

 プルーム・テックの特徴を、クリーン(clean)、クリア(clear)、コンビニエント(convenient)の頭文字を取って「3C」と表現する動きもあるのだという。これだけの話題性を持ち、ユーザーからは好評を博しながら、iQOSの後塵を拝しているという現状には、JTも忸怩たる思いがあるようだ。

「中途半端な商品を販売するわけにはいかないと、本体設計に相当こだわったため、発売時期が遅れてしまいました。また従来の工場では製造できませんので、新規のラインを整備するのにも時間がかかりました」(前出の広報部)

 反省の弁を述べながらも、もちろんJTは巻返しを図っている。生産増に舵を切り、「2018年の上半期に全国展開をスタート」できるよう準備中だ。

 一方で、「glo」も宮城県仙台市に続いて、7月3日より大阪府大阪市で「gloストア梅田店」、そして21日には東京都港区青山に「gloストア青山店」をオープン。過熱式たばこの競争がいよいよ過熱してきそうな気配だ。

 メーカー側の負担は大変だろうが、競争が激化すればするほど、消費者が恩恵を被るのは経済学の基本だ。ここのところ、愛煙家の肩身は狭くなる一方であったが、周囲の不快感を軽減させる加熱式たばこが社会に定着することで、適度な“狭すぎる肩身の失地回復”が行われる……かもしれない。
(文=編集部)