2009年に登場して以来、世界中で加速度的に普及しているビットコイン。今や世界各地にビットコイン取引所ができ、ビットコイン決済が可能な店も増え続けている。ただ、日本ではまだビットコインは一般的でなく、「一過性のもの」「怪しいもの」として捉えている人も少なくないのが現状だ。

 最近では、ビットコインを使った日本発のサービスとしてVALU(バリュー)が話題になった。VALUは「仮想株式市場」という新たなプラットフォームで、仮想株式の発行者が自分自身の価値を、ビットコインを介して他人に買ってもらうというものだ。このVALUに、人気ユーチューバーのヒカルが参入したところ、多くの買い注文がついて価格が高騰した。だが、値段が高まったところで自身の保有する仮想株式を一気に売却したほか、関連する人々も立て続けに売却に動いたことから、インサイダー取引との疑惑が持ち上がり、大きな騒動となった。

 この騒動は多くの関心を集めたため、日本人のビットコインへの不信感をより高めてしまったのではないだろうか。

 しかし、ビットコインが世界的に認められている状況を考えると、日本人のビットコインに対する認識は正しいのか、疑問が湧いてくる。ビットコインの価値を正しく判断するためには、ビットコインがどのようなものなのか、持っていることによってどのような利点があるのかなどを知っておく必要があるだろう。

 そこで、『ビットコインは「金貨」になる 円崩壊に備える資産防衛策』(朝日新聞出版)の著者で、千代田国際経営法律事務所代表の石角完爾氏に、ビットコインの実態について話を聞いた。

●ビットコインは安全性が非常に高い新時代の通貨

「ビットコインというのは、コンピューターの暗号技術と、ブロックチェーンというコンピューター技術の組み合わせによって生み出される暗号通貨で、現在の通貨システムを変える可能性を秘めた、まったく新しい通貨といえます。ですから、『ビットコイン=投資・投機商品』という捉え方は100%間違っています」(石角氏)

 石角氏の言うように、ビットコインを株式のようなものとして認識している人は多い。しかし、実はそれはまったくの誤りだという。それでは、ビットコインが世界中で注目されている理由は何なのだろうか。

「まずは、その安全性でしょう。暗号化されているため、ハッキングされて盗まれる心配がありません。2014年に起きたマウントゴックス事件のようにビットコインを盗まれた例は、取引所の保管システムが安全性を欠いていただけで、ビットコインそのものの問題ではありません。

 ポータビリティー(持ち運び性)の面でも大きなメリットがあります。通貨史において、持ち運びやすさというのは一番重要な要素で、そもそも紙幣が発明されたのは硬貨の持ち運びづらさが要因です。今はクレジットカードの登場によって、紙幣すら持ち運ぶ必要がなくなりましたが、カード情報を盗み取られるリスクを抱えている点では不完全です。

 しかし、ビットコインであれば不正利用される恐れもなく、自分のスマートフォンかパソコンさえあれば使うことができますから、今後はクレジットカード、ひいては現在の通貨システムに取って変わる可能性があるといえるでしょう。

 さらに、自分のスマホかパソコンがあれば利用できるということは、銀行を介した金銭のやり取りが必要なくなるということでもあります。ですから、銀行を介するハッキングのリスクなしに自分の元から相手の元へ瞬時に、かつ手数料なしで送金することができるのも大きな利点です。

 こうした点から、アメリカをはじめとする諸外国では、ビットコインが国レベルで認可されており、税金をビットコインで納められるところも増えていますし、イギリスでは年金をビットコインで支払う研究が進められています」(同)

 世界中がビットコイン研究に躍起になっているのは納得のいくところだ。ただ、日本ではビットコインにマイナスイメージを与えるような事件ばかりが注目されている印象がある。記憶に新しいところだと、先述したVALU事件が挙げられる。この件について石角氏の見解を聞いた。

「VALUは、株式会社の株をデジタル化したようなシステムゆえ、手続きが容易なビットコインが使われたのだと思います。ただ、そもそも個人の価値という価格の変動が激しいものを、VALUとして世の中に売っていくのは極めて危険性が高いことですから、このような事件が起きるのは必然といえるでしょう。ビットコイン自体にはなんの問題もないのに、このようなサービスに活用されると、『だからビットコインは危険だ』という思い込みを助長することになってしまうでしょう。

 もちろん、アメリカなどでもビットコインに関する事件や犯罪はあります。ただ、アメリカは、シークレットサービスや国家安全庁といった機関で、ビットコインを追いかける技術者を大量に抱えているのです。しかし、日本にはそういったIT集団が存在せず、ビットコインに関する取締能力が極めて低いのが現状。こうした状況では、VALUのような投資目的でビットコインを買うのは非常に危険といえるでしょう」(同氏)

●ビットコインは資産運用ではなく資産保全のために買うべき

 ビットコインにはさまざまなメリットがあることがわかった。だが、ビットコイン普及の土壌が不完全な日本においては、飲食店や各種料金支払いなどはもちろん、石角氏の言うように投資目的としても、ビットコインを買うべきではないのかもしれない。

 そうであれば、日本人はその恩恵を受けられないのだろうか。石角氏は、あくまで超長期的な資産保全のためにビットコインを買うべきだという。

「そもそも、現在我々が使っている通貨には、権力者が通貨の発行量を自由に左右することができるという非常に大きな欠点があります。経済学の原則でいうと、たくさんあるものは値段が安くなりますから、大量に発行された通貨は、どんどん価値が下がっていくことになります。こうしたもの(現在の通貨)に“自分の将来”を託しているということ自体、私は間違っていると思うのです」(同)

 通貨の価値が乱高下する恐れがあるというのは、過去の物価の変動を見れば明らかだ。また、日本円に限っていえば、通貨価値の下落にとどまらず、それ自体が崩壊する恐れもあるという。

「米ドルもそうですが、本来、日本円というのは金との“兌換通貨”です。すなわち、円の価値というのは金によって裏打ちされていたわけです。しかし、円が金との兌換通貨でなくなった今、円の価値を裏打ちするのは国力、すなわち税収能力ということになります。そうすると、日本は世界でも類を見ない少子高齢社会ですから、税を納める人口が少なくなり、円の価値が下がっていくのは目に見えています。

 また、日本は今、北朝鮮という極めて危険な国家に狙われているという状況で、国が抱えるリスクが大きいため、日本円の価値もリスクに晒されているといえます」(同)

 多くの要因が絡み合い、今、日本円は非常に危険な状態にある。そして、円崩壊のリスクがある今こそ、ビットコインに目を向けるべきだと石角氏は続ける。 

「もともと日本円が金に裏打ちされた通貨というのは先ほど述べたとおりです。それでは、なぜ金が価値の裏付けになるかというと、たくさんあるものは価値が下がるということの逆、つまり金の生産量は限られており、希少性があるからです。そして、実は、ビットコインを産み出すことの困難さは金と非常に似ているのです。

 ビットコインを生み出すことをビットマイニングといいますが、その作業はまさに金脈を採掘するかのようなものです。ビットコインが今ほど注目されていなかった時代と比べ、今は金脈が減ってきており、まさに毎年掘るのが難しくなる金と同じです。たとえば、ビットマイニングを個人で行おうとすると、かなり大きなサーバーとパソコンを20台くらい買ってきて、3カ月から4カ月運転し続けて、やっと1ビットコインを掘り出せるかどうかというレベルですから、その難しさがわかると思います。

 このようにビットコインは生産量が限られているため、不変の価値を持っているというわけです。日々、ビットコインの価格は変動していますが、それはあくまで円やドルと比較した価値です。したがって、ビットコインを持つことは、自分の資産を守ることでもあるのです。

 また、資産を増やしたい場合でも、5年前にビットコインを買った人は、今はその資産は何百倍にもなっているわけですから、決して1日単位で儲けようとせず、少なくとも5年はしっかり持っておくといった意識が大切です」(同)

 石角氏は「日本人は物事を短期的に考える傾向がある」とも語る。そういった考え方ゆえに、日本ではビットコインに関する正しい知識が広まらず、間違った運用の仕方で損をする人が出てきてしまうのかもしれない。

 ビットコイン普及が遅れている日本では、それがいかなるものなのか正しく知らなければ、思わぬ危機に瀕したり、大きなチャンスを見逃すことになってしまう恐れがある。
(文=中西俊晶/A4studio)