国が東京電力ホールディングス(HD)改革で推し進める最大の課題が、原発事業の統合再編だ。建設を中断している東電の東通原発(青森県)に関西電力や中部電力を参画させるように“にんじん”をぶら下げ始めた。ただ、東電のアキレス腱である福島第一原発の事故処理費用は膨らむのが確実で、画餅に終わる可能性もある。

 東電HDが2017年5月に発表した新々・総合特別事業計画(新々・総特)では、17年秋をめどに具体的な方向性を示すと記載した。時期を秋と自ら明確にしてしまった手前、11月30日に文挟誠一副社長が急場しのぎに記者クラブ向けに記者会見したが、他電力会社との交渉は「意見交換」にとどまっていると述べ、進捗の実りのなさを露呈する結果になった。

「東電と組んで、なんのメリットがあるのか」

 地方電力の関係者は口をそろえる。負のイメージしかなく、国民に負担を強いる東電に多くの国民の感情は複雑で、地方電力は東電の肩を持てば地場の顧客の離反を生みかねない。経産省が根回しなしに、他電力会社の頭越しに原発再編を打ち出したことも各社の姿勢を硬化させている。

 もちろん、国は百も承知で、にんじんをぶら下げ、切り崩しを始めている。年明けに主要メディアが一斉に報じたが、関西電力は使用済み核燃料を青森県むつ市の中間貯蔵施設に搬入し一時保管する方針を固めたとされている。関電は高浜、大飯、美浜の3原発で使用済み核燃料を敷地内に保管しているが、全体の約7割が埋まっている状況。再稼働後に保管先が問題になっていた。

 使用済み核燃料の一時保管は電力各社の課題で、政府は関電以外の電力各社の使用済み燃料もむつ市に集約させる方向で調整している。

 問題はこのむつ市の施設が、東電が8割出資する「リサイクル燃料貯蔵」の施設で、事実上、東電傘下にあることだ。むつ市の施設は東電の東通原発の使用済み核燃料を受け入れる予定だったが、東通原発は建設開始直後に東日本大震災が起き、工事が止まっている。

●使用済み燃料の受け入れと東通建設が交換条件か

「新々・総特でも、東通原発に他電力会社を相乗りさせることを原発再編の具体例として挙げている。もちろん首根っこを押さえつけて参加しろと言っても、他社がうなずくわけがない。経産省は使用済み燃料の受け入れの交換条件として、東通原発に共同投資させる狙いだろう」(地方電力幹部)

 関電関係者は「むつ市の話と東通原発は別。保管に必要な資金を拠出すれば良い話」と煙に巻くが、額面通り受け取る者はいない。国の強烈な後押しでの事業再編で体質改善を急ぐが、東電は「時限爆弾」を抱えている。福島第一原発事故に伴う廃炉・賠償費用だ。従来想定額の2倍の約21兆円まで膨れあがっているが、東電関係者ですら、「ベストケースの甘い試算。ここからさらに3倍程度まで膨らむ可能性もある」とこぼす。

 50兆円、60兆円かかるとなれば原発再稼働の気運に水を差しかねないので、曖昧な試算を重ねるが、それでもすでに2倍に膨らんだのだ。いつまでもごまかし続けるわけにもいかず、実態が白日の下にさらされれば東電再生プランは一気に崩れ去る。

 17年6月に会長に就任した日立製作所元会長の川村隆氏は、就任時に任期2年の約束で会長職を引き受けたという。おそらく日立の経験から2年で方向性を示せる自負があったのだろう。だが、蓋を開ければ、事業再編は遅れている上に、おそらく在任中に廃炉・賠償費用の見積もりを修正せざるを得ない状況に追い込まれるだろう。2年で道筋を示すのは絶望的な状況だ。果たして、続投してでも東電を蘇生させ「ラストマン」の意地を見せるのか、それとも逃げ出す準備をしているのか。
(文=江田晃一)