GMS(総合スーパー)は長らく低迷が続いており、イオンリテールやイトーヨーカ堂は再生に向けてさまざまな取り組みを行ってきた。ユニーは自力ではなく、昨年11月、ユニー・ファミリーマートホールディングスとドンキホーテホールディングスが資本・業務提携し、ドンキの力を借りて他力で既存店の活性化を図るという思い切った策に打って出た。

 今年2月21日、「MEGAドン・キホーテUNY」の1号店「大口店」(横浜市神奈川区)、3月に入り、愛知県で3店舗、神奈川県と三重県に各1店舗、合計6店舗を矢継ぎ早に出店した。いずれもユニーのGMS「アピタ」「ピアゴ」をリニューアルした業態転換店舗だ。

 大口店は1991年3月、JR大口駅前から移転して、高級雑貨も扱う「雑貨創庫ユニー大口店」としてオープン。その後、雑貨の比率を下げて「ユニー大口店」として営業、さらに「ピアゴ」となり、四半世紀にわたって紆余曲折を経てきた。それはさまよえるGMSの歴史でもあり、GMSの苦悩の深刻さを表すものでもあった。

 そして今回、その苦難の連鎖を断ち切るべく、GMSの衣を脱ぎ捨て、ドンキとユニーのダブルネームのフルラインディスカウンターとして再出発することになった。両社はユニーとドンキの強みを活かしたと言うが、ドンキのノウハウを多数導入し、ユニーの売場を上書きし、実質的にはほぼドンキの店舗に仕上がっている。

 MEGAドン・キホーテUNYは、ユニー時代のシニア狙いからニューファミリー狙いに切り替え、顧客層の若返りを図ることで、GMSの顧客の高齢化に歯止めをかける。そして、主婦だけではなく、学生や単身者などより幅広い所得者層の獲得を狙い、売上の拡大をもくろんでいる。

 若年層はドンキの得意とするターゲット、加えて近年は郊外の店舗を中心に食品を拡充し、主婦層も取り込んでおり、ユニーの既存顧客が客離れしなければ、プラスアルファの集客が見込めるだろう。

 取り扱う商品は、GMSの不振の要因で戦犯ともいうべき衣料品と住関連商品に、思い切ってメスを入れた。大口店では低価格を前面に押し出し、インナーやホームウエアなど実用衣料に絞り込み、住関連も洗剤、トイレットペーパーなどの日用消耗品やコスメを従来の約3倍と売場を大幅に拡大した。確実に売上が見込めるアイテムを強化することで売場効率を上げて改善を図る。

●従来とは一変した取り組み

 反転攻勢にも出た。GMSが家電量販店の攻勢やネット通販の台頭で縮小を余儀なくされた家電売場を復活させ、電子レンジ、ドライヤーなどの調理家電や理美容家電を中心に山積み展開している。至近距離にある「コジマ×ビックカメラ」とは異なり売場面積も大幅に小さいことから、持ち帰り品をメインとすることで正面衝突を避けながら、価格で真っ向勝負する。

 子育て世代を取り込むため、NB(ナショナルブランド)の玩具も充実させた。ただ、キッズのファッションは品揃えが不十分で今後修正が必要となろう。スポーツも強化し、ウエアとグッズを拡大して展開し新たな需要を取り込もうとしている。専門店にシェアを奪われ諦めていた分野に再挑戦する取り組みだ。

 GMSで比較的堅調な食品では、ディスカウント性を強め、競争力を高めようとしている。ドンキの得意とする集客マシンとなる菓子、酒は、スポット仕入れも活用し安さをアピール、売り場も倍増させた。ユニーの強みである、野菜や肉、魚といった生鮮品も拡充した。特にニューファミリーの需要が旺盛な精肉は売り場を1.5倍に広げ、近年ニーズが高まる惣菜では、198円の弁当など低価格帯の商品を投入している。

 仕入れ全般において、定番商品を6割に抑え、スポット商品を4割にし、競合店の価格を調査する「プライスチェッカー」を置き、地域一番価格を追求することで、プライスで徹底的に戦っていく。

 従来とは一変した取り組みで、売上を以前より直営ベースで1.5倍に増やし、収益面では粗利益率を下げて低価格を実現させることで、売上を伸ばし粗利額を増加させ、利益を確保する。部門別にみると食品のディスカウントで客を集めて、利益率の高い非食品で稼ぐという構図だ。

 売場の演出もドンキ流の買い物の楽しさを表す計算された宝探し的な「圧縮陳列」をやや薄めながら展開、目玉商品を大量に積み上げ、POPライターによる手描きPOPも売場の至る所に掲示され、とにかく安さを強調する。ピアゴ時代の客はその変わりように驚くだろう。

●ポストGMSとして唯一無二の存在に

 こうしてGMSを再生し、フルラインディスカウンターに生まれ変わらせて総合業態として生き残りを図るMEGAドン・キホーテUNY。出足は新たな顧客を取り込んでおおむね順調で、今後1年かけて検証し業態の完成度を高めていく。

 今回のプロジェクトには、長崎屋の再建で手腕を発揮しMEGAドン・キホーテ業態の骨格を創り上げた関口憲司執行役員を送り込んでおり、狭小商圏での新たな業態づくりに挑もうとしている。食品と非食品の双方を強化することで、ポストGMSとして唯一無二の存在にしていく考えだ。

 小売業界の異端児ドンキが、中京地区を中心にかつてのメインストリームを歩んでいたユニーの救世主となり事業を再構築し、生き残りを目指して主導的な役割を果たすという下剋上的な出来事は、業界が曲がり角を迎え変革期にあることを如実に物語っている。

 ドンキホーテホールディングスは2020年までに、500店舗に拡大し売上高1兆円を目指している。さらにその先は、小売業界の新たな盟主として君臨する野望も見え隠れする。

 小売の歴史を振り返れば、もとはといえば百貨店は定価販売、スーパーはダイエーの価格破壊に象徴されるディスカウンターであり、ユニクロやニトリもSPA(製造小売)による低価格で既存勢力を脅かした。価格が歴史を塗り変え盟主が交代してきた。その行方を占う意味でも、MEGAドン・キホーテUNYの成否がきわめて注目される。
(文=西川立一/流通ジャーナリスト、マーケティングプランナー)