パイオニアが香港系ファンドの全額出資子会社となり、上場を廃止することが決まった。オーディオ不況といわれて久しいが、やはりあのパイオニアが香港系企業の手に渡り、非上場会社としてやり直さなければならなくなったということには感慨を禁じえない。

 すでにパイオニアは自社ではホームAV機器は手がけていない。同じオーディオメーカーだったオンキヨーに売却しているからだ。パイオニアはホームAVを手放して香港系ファンドの傘下に入り資金を確保、今後は自動運転をにらんだ自動車市場に活路を求める方向である。一方、そのパイオニアからホームAV事業を買収したオンキヨーも、やはり経営状態は厳しい。

 オーディオ機器メーカーが厳しい状況にあるのは、娯楽の裾野が広がったこともあるが、スマートフォン(スマホ)などで手軽に音楽が楽しめる時代になったことも大きい。今回はパイオニアの身売りを機に、パイオニアからホームAV事業を買収したオンキヨーの現状とこの先について考察してみたい。

●オンキヨーが取り組む経営たて直しへの道

「ONKYO」ブランドのスピーカなどで知られる音響機器メーカー、オンキヨーは、実に2014年3月期から前18年3月期まで5期連続で赤字が続いている。

 18年3月期末時点では、自己資本比率は7.1%にとどまる。14年3月期末時点の自己資本比率は24.3%だったが、すでに10%を割り込み危険水域である。額からみても18年3月末の自己資本は27億円、この年の最終赤字は34億2,600万円だったから、今期もこの赤字水準だと債務超過転落のリスクが出てくるということになる(期初予想では10億円の黒字を確保する見通しとなっている)。

 しかし、この赤字が継続する5年間についてもオンキヨーは必死の取り組みを続けてきている。客観的にみれば、やれることはすべてやってきているという印象さえある。しかし、それでもまだ赤字が続いているところに市場環境の厳しさがある。

 オンキヨーの再建策を振り返ると、やはり2015年にパイオニアとホームAV機器事業を統合したことが最も大きい。統合というかたちだが、実際にはパイオニアのホームAV事業をオンキヨーが傘下に収めたといえ、パイオニアはホームAVを手放したかたちに近い。オンキヨーはシナジー効果を図るとともに、国内グループ2割に相当する人員削減も行っている。統合で余剰化する人員にもきちんと目配りしている。

 さらにその後も17年には中国上海の生産機能を広州に移管統合するなど海外生産体制を再編、18年には欧州販売子会社の事業を現地企業に譲渡している。欧州での事業譲渡は18年10月1日付で、ドイツに本社を置く欧州販売子会社が手がけている「ONKYO」ブランドなどの欧州地域での製品販売事業を、現地会社に譲渡するという内容だった。欧州での事業ボリュームをそのまま維持してコスト削減につなげるという狙いである。

 欧州での再編効果は今期下期からということにはなるが、これまでのところでは今19年3月期の9月中間決算も営業損益以下赤字が続いており、最終損失は縮小しているとはいえまだ3億4,700万円の赤字という状況である。

 これだけの再建策を実施しても、まだオンキヨーは黒字には届いていないというのが実態である。

●オンキヨーの最後の切り札

 国内外で人員削減もし、関連事業も統合してきた。もうこれ以上の合理化は難しいだろう。オンキヨーは今後、どこに活路を求めるのか。

 オンキヨーが今、力を入れて取り組んでいるのは、インド事業の強化と、車載用やテレビ用などのOEM生産の拡大である。

 インドについては、1年前の2017年8月に合弁会社の「ミンダ・オンキヨー・インディア」が立ち上がっており、今年になってさらに同社を増資するなど強化に取り組んでいる。インドの合弁会社は、インドの現地大手ウノ・ミンダ・グループと折半出資で、ミンダグループが保有する現地既存工場内に本社を構え、スピーカを生産している。インド工場では車載用スピーカなどを手がけ、現地日系自動車メーカー向けに販売しており、今後は合弁相手の販路なども活用して現地ローカルメーカーなどにも浸透を図る計画となっている。

 またOEM生産の拡大では、車載用OEMのほかにもテレビ用OEMも強化の方向で、シャープの液晶テレビ向けのほか、中国家電大手TCLともすでに提携している。インドとOEMはオンキヨーの最後の砦であると指摘する声もある。

 パイオニアとオンキヨー。かつてオーディオマニアを魅了したふたつのメーカーは、ともに大きな曲がり角に来ている。
(文=高橋潤一郎/クリアリーフ総研代表取締役)