2016年、業績を大きく落とした、成長機会を逃した、企業価値を大きく毀損した、危機的状況に際して拱手傍観してしまい窮地に陥る状況としてしまった、経営者としての倫理にもとった、社会に大きな損害あるいはリスクや不安を与え強く指弾された――、などの残念な結果を残した経営者を顕彰する、「2016年経営者残念大賞」。

 本連載では過去3回にわたり、第3位にシャープの高橋興三前社長、第2位に三菱自動車工業の益子修社長兼CEO(最高経営責任者)、輝くグランプリに電通の石井直社長を発表した。

 今回は上位3氏ほどまでは顕著な経営残念度ではなかったが、16年にその活動や実績が報道され話題となった経営者諸氏の何人かを取り上げ、その事跡を振り返ってみたい。

●東芝、経済事件としてのインパクトは最大

 電機業界にあって日本を代表する名門企業だった東芝の名声は地に墜ちた。いうまでも無く15年9月に公表した、歴代3社長時代に行われた累計2248億円の利益水増しと、16年3月に公表した、10〜14年度に行われたとされる累計58億円の追加利益水増し事件によってである。

 インパクトからいえば、東芝の不正会計問題は15年から16年にかけて最大級の経済事件だった。社会に対して大きな衝撃を与えただけでなく、本事件により東芝自体も深く傷ついた。一連の不祥事により、15年9月に東京証券取引所によって「特設注意市場銘柄」に指定されてしまい、企業としての信用が大きく損なわれた。

 さらに16年11月に至り、あろうことか子会社の東芝EIコントロールシステムが16年9月末まで架空売り上げを計上し続け、水増しの累計額は5億2000万円に拡大していたと報告された。

 これにより「特設注意市場銘柄」としての東芝株式への東証審査は厳しさを増すことは確実で、審査が期限の17年3月15日を過ぎてしまうと、同社株は自動的に「監理銘柄」に区分される。そうなれば、東証からの上場廃止は十分に起こりえる、同社にとって危機的な状況となる。

 これだけの経済事案がなぜ「残念大賞」に選考されなかったかというと、責任者とされる歴代3社長が、16年中に在任でなかったからだ。

・15代 西田厚聰氏(05年6月〜09年6月)
・16代 佐々木則夫氏(09年6月〜13年6月)
・17代 田中久雄氏(13年6月〜15年7月)

●日本マクドナルドホールディングス:サラ・カサノバ社長

 日本マクドナルドホールディングス(HD)のサラ・カサノバ社長は、13年8月に外人としては初めて日本マクドナルド社長兼CEOに就任。14年3月には日本マクドナルドHD社長兼CEOに就任している。

 日本におけるマクドナルドのビジネスにおける直接の最高責任者として現職にあり続けたので、「残念大賞」の選考対象に残った有力候補だった。

 実際カサノバ社長の指揮の下、同社の業績の墜落ぶりは際立っていた。年商でいえば前任者時代の最終決算となった12年12月期の2947億円から15年1894億円へと35%減、営業利益は同248億円の黒字から同234億円の赤字と、見事にプラスとマイナスを入れ替えてしまった。年商額も営業利益額もこの4年間回復することのない一途な転落だった。こんな業績の経営者が外資で留任を認められるなんて、私が現役の時代には考えられなかったことだ。これはマクドナルド米国本社でのCEO交代、日本法人の売却検討と実際に打診など、本社側が迷走状態であったこと以外に理由は考えられない。

 14年7月に中国で製造されていたチキンナゲットに賞味期限切れ食材が使われていた事件、15年1月に発覚した異物混入、両事件に対するカサノバ社長の対応は消費者の反感を買い、日本マクドナルドにとって傷口を広げるような格好となった。さらに、そんなカサノバ社長が1億円以上の年俸を受けていることも、業績結果との対照から批判されるところだろう。

 カサノバ社長が「残念大賞」の選に漏れたのは、16年に入って日本マクドナルドの業績が底を打った兆しがあるからだ。

 45周年キャンペーンとして「チーズカツバーガー」や「かるびマック」が登場した11月は、既存店の売上高が前年同月比で11.3%増、客数は同8.0%増となり、16年は年初月から既存店売上高が、前年同月比で2ケタの伸びを維持している。ポケモンGOとのコラボでも話題を呼んだ。

 17年にカサノバ社長が当賞の選考対象から遠く離れることを期待したい。何しろ、16年7月12日付東洋経済オンライン記事によれば、同社は従業員一人当たりの営業損失が968万円、つまり年収よりも大きい損失を全員がたたき出していて、その規模は上場会社中輝く37位という効率の悪さを造り上げてきた。改善余地はとても大きい。

●大塚家具:大塚久美子社長

 大塚家具が積極的な営業攻勢をかけている。首都圏では16年12月に入り、同社の折込チラシが多くの家庭に配布され、話題となった。A3サイズ相当で見開き計4ページのそのチラシの冒頭には「大クリアランスセール」「50%オフ」の大文字が踊る。もっとも、それぞれの前には「店頭掲示品」と「最大」という文字が小さくかぶってはいるけれど。

 チラシを見開くと、中の2ページには家具の写真とともに「●%オフ」という表示が。数字は50%オフがもっとも多く、下は25%オフが少数ある。中には「10000円均一」という商品も紹介されている。印象は町のスーパーの叩き売りと同じだ。

 12月が会計年度末となる大塚家具が当月の売上に追い込みを掛けているのには、もちろん事情がある。15年12月期の同社の年商は580億円だったが、16年12月期の予想では483億2700円と前年から100億円も減る。これは割合とすると16.7%減であるが、この減衰率の保持さえ危惧されているのだ。

 16年1−9月の売上高は前年同期比18%減だったが、10月は対前年同月比8.4%減で踏みとどまったかに見えた。ところが、11月の全店売上高はなんと同41.5%減となってしまったのである。

 ちなみに16年12月期は最終赤字43億5,800万円という大幅減益が予想されている(前期は3億6000万円の黒字)。しかも、これらの当期末予想は8月に下方修正発表されたものであり、さらなる悪化での着地となると市場への信頼を揺るがせかねない。16年12月期の年商予測の下割れはなんとしても避けたい、そんな大塚久美子社長の叱咤激励が聞こえてくるような12月チラシなのだ。

 大塚社長はしかし、「残念大賞」を受賞しなかった。一つは、今期がどれだけ赤字でも株主配当は一株当たり80円を公約していて、それは現在の株価に対して約6.3%の利回りに該当する。すべての上場株式の中で一番の配当利回りなのである。

 ところが大塚家具の筆頭株主はききょう企画で(129万株保有)、ききょう企画の代表取締役は大塚社長だ。わかりやすくいえば、大塚社長側に約1億320万円の配当が転がり込むことになる。赤字会社の転がし方としては「見事」ということになる。

 さらに大塚社長の巧みなことは、この赤字会社の配当原資をどう用意しようか、というところで妙手を打とうとしている。埼玉県春日部市で同社が所有する約5000坪の空き地を不動産投資ファンドに年内中に売却すると報じられた(16年12月12日付ダイヤモンド・オンライン記事『大塚家具が業績悪化で窮地、久美子体制2つの過ち』)。同記事によると、売却予定額は約20億円超で、10〜12億円の売却益が得られる予定だという。

 この土地は、久美子社長が15年の株主総会で追放した大塚勝久前会長が購入決定していたものだ。父親というのはありがたいもので、そこにいなくても足の脛をかじらせてくれるものだ。

●「残念大賞」を出光昭介氏に

 番外だが、「16年 資本家残念大賞」を出光昭介氏に贈りたい。出光興産と昭和シェル石油の合併に異を唱え、面談さえ頑なに拒んでいる様子は、いかなるものか。かつて自らが率いた出光は「従業員一人当たり営業利益が少ない会社」(7月12日付東洋経済オンライン記事より)でワースト99位の213万円損、昭和シェルは同じく93位、256万円も損を出している。

 みんな苦しんでいるのだ。出光の伝統、「和らぎの精神」はどこへいったのか。
(文=山田修/ビジネス評論家、経営コンサルタント)