いまや多くの人が利用しているQRコード決済。一時期はさまざまなサービスが乱立し、過酷な生存競争が勃発していたが、現在は登録者数4100万人、加盟店340万カ所を誇るPayPayが覇権を握り、次のフェーズに移った感もある。PayPayがこれほどまでのシェアを獲得したのは、ユーザー向けの大型キャンペーンの乱発もあるが、今年9月まで加盟店の決済手数料が無料だったことも大きい。

 PayPayは同社と直接契約しているMPM方式(店舗にあるQRコードをユーザーがアプリで読み取る方式)の個人店に対して決済手数料を無料にしていたが、10月から有料化となる。そのため、負担が大きくなる小規模店舗の一部ではPayPayの扱いを終了するところも相次いでいると騒がれている。

 それでは、今回の手数料有料化は加盟店や消費者にどんな影響をもたらすのだろうか。

「PayPayマイストア ライトプラン」による変化

 PayPayの手数料有料化にならうように、他の主なQR事業者も10月から一律で有料化にする。各社の手数料は次の通りだ(一部事業者は1年間新規加盟店の手数料を無料にするなどの措置がある)。

・PayPay 1.6%/1.98%

・LINE Pay 1.98%

・d払い、au PAY、メルペイ 2.6%

・楽天Pay 3.24%

 これらの数字は一般的なクレジットカードの手数料(2.5〜3.75%)よりも安く設定されてはいるが、やはり売り上げの1〜3%ほどを取られる加盟店の負担は少なくない。

 ただ、今年10月からの有料化は以前からすでにアナウンスされており、加盟店や消費者にとっても寝耳に水というわけではなく、想定済みではあった。

 そもそも今までの無料措置によって、事業者側は莫大な赤字を垂れ流している。例えばPayPayのここ3年の最終赤字累計額は1931億円で、同期間の売上高397億円に比べるとその数字は約5倍。いわゆる「市場獲得のための先行投資」であり、今後は手数料の有料化なしでは事業の存続は厳しいといえるだろう。

 予想される加盟店の離脱を防ごうとするPayPayは基本手数料1.98%に対し、条件付きで1.6%に下げる施策を打ち出した。それが「PayPayマイストア ライトプラン」という月額1980円の有料プラン。PayPayでは「PayPayマイストア」という店舗情報やキャンペーンをユーザーに告知できる加盟店向けのサービスがあるのだが、今回のライトプランは、それへの加入をすすめるものだ。

 このライトプランを契約した加盟店は決済手数料が1.6%に減額されるだけでなく、いまなら最大6カ月間は売上の3%が還元されるなどのキャンペーンも実施しており、加盟店の離脱を食い止めようと必死な様子が伺える。ただし、このライトプランの金額1980円は月50万円以上の決済がなければ相殺しない計算になるため、店舗によっては加入しないで離脱するという選択肢も大いにある。

 とはいえ、PayPayは今後もマイストアのサービス拡大をうたっており、加盟店がライトプランを契約することで新規顧客の開拓や集客につながる可能性も高い。消費者にとっても加盟店が多ければ馴染みの店の情報やクーポンがキャッチしやすくなるなど、双方にメリットが生じることも考えられる。

CPM方式の店舗にメリットは少ない

 このライトプランのメリットを享受できる加盟店はMPM契約店である。PayPayの加盟店にはMPM方式とCPM方式がある。MPMは先述したように、店にPayPayのQRコードが掲示されており、客が読み取って金額を打ち込むものだ。このケースでは加盟店はPayPayと直接契約をし、システムもPayPayのものを利用している。加盟店にとってQRコードを掲示するだけで初期費用がほぼかからないことから、小規模店になるほどこの方式が多い印象だ。

 一方、CPM契約店舗では客のアプリに表示されたバーコードやQRコードをレジのバーコードリーダーや、スマホ、タブレットで読み取って決済する。こちらは既存のクレジットカード決済などに使われるネットワークを経由しているため、システム利用料が追加で発生するという。またCPM契約店舗のなかには代理店を介してAirPAYなどでPayPayの利用ができるようになっている店もある。こうした代理店を介した場合、決済手数料は前述のPayPayが定めるものとは異なる設定となっている。例えばAirPAYにおけるPayPayの決済手数料は3.24%だ。

 街中で見かける、ユーザーがQRコードを読み込む店舗と店が読み取る店舗には、こうした違いがある。また、AirPAYなど代理店を介している店舗はPayPayと直接契約していないため、仮にPayPayマイストアを利用したとしても、店舗情報が登録されていない場合もある。そのため、このような一部CPM店舗には今回のライトプランのメリットはほとんどない。

PayPayマイストア普及のためキャンペーンを実施

 PayPayは、これを機にCPM店舗を直接契約へ切り替えさせ、PayPayマイストアのさらなる拡充を狙っているように見える。

 例えば、現在、街のお店や有名店のクーポンをアプリ上に多数展開させるPayPayアプリのテイクアウトサービス「ピックアップ」では10%還元のキャンペーンを実施中。アプリ内のサービスに関係するキャンペーンを多く実施することでユーザーのアプリ滞在時間増加を促しているのは、PayPayマイストア普及のための布石なのではないかと考えられる。

 実際にPayPay取締役副社長執行役員COOの馬場一氏がPayPayマイストアを含む「PayPay for bussiness」でも市場占有率の高い「スーパーアプリを目指す」と語っているように、社をあげてサービス向上を行っていることが伺える。

 また、PayPayは「街のPayPay祭」と題し、自治体単位で還元キャンペーンを多く展開するなど、さらなる普及を目指している。こちらのキャンペーンでは個人店も対象となっていることが多く、PayPay効果を実感させることで、手数料による加盟店の離脱防止を狙っているのかもしれない。

 このようにPayPayと加盟店の間には10月からそれぞれの思惑が渦巻いており、それは我々ユーザーにとっても大きな影響を与えることは間違いない。

 PayPayは10月18日から大型キャンペーンの「超PayPay祭」を開催予定だが、有料化と重なる時期ゆえに、これまでにない販促を展開すると予想できる。有料化によって加盟店の負担は一時的に増えるかもしれないが、ユーザーにとってはお得かつ便利な決済法であり続けることを期待したい。

(取材・文=清談社)