3月20日に任天堂より発売された「Nintendo Switch」(以下、スイッチ)用ゲームソフト「あつまれ どうぶつの森」(以下、あつ森)。大人気シリーズ「どうぶつの森」の新作で、今回のテーマは、無人島に移住した主人公がどうぶつたちと島を開拓しながら、自由気ままなスローライフを送るというものだ。

 コロナ禍の巣ごもり需要とも重なって高い人気を見せ、スイッチのゲームソフトとしては歴代1位となる初週販売本数を記録。同時に、スイッチ本体の需要も高まり、中古品が高額転売されたり、本体を譲ると騙る詐欺被害が起きたりと、さまざまなトラブルも見受けられた。

禁止行為の「リアルマネートレード」の被害も

 また、あつ森内でのトラブルも多数散見された。特に多いのが、アイテムや住民の“トレード”をめぐるものだ。ゲーム業界関係者のA氏は、トレードトラブルの内容をこう説明する。

「あつ森プレイヤーの多くは、ツイッターや攻略サイトの掲示板でアイテムや目当ての住民の“交換”を持ちかけます。たいていはアイテム同士、住民同士、または今作から登場した『マイル旅行券』というチケットを通貨代わりに交換するのですが、この交換において詐欺行為が増えているのです。また、現金でゲーム内のアイテムを取引する『リアルマネートレード』という禁止行為も多く行われているようで、リアルマネートレードでの詐欺行為も起きているといいます」(A氏)

 トレードなどをめぐるゲーム内でのトラブルは以前からあるが、あつ森は特に被害件数が多い。その背景にあるのが、新型コロナウイルスの感染拡大を受けた巣ごもり需要の高まりと、それにより、普段はゲームをやらない人もプレイしている点だという。

「あつ森が発売されたのは、コロナ禍でゲームの需要が高まったタイミングでした。また、あつ森は難しいルールや激しいバトルシーンもなく、キャラクターや世界観もかわいらしいため、普段ゲームをやらない人でも『プレイしてみたい!』と思える、万人ウケするゲームです。コミュニケーションツールとして、さらには外出できないなかでも季節の行事が楽しめる手段として、コロナ禍での人々のさまざまな欲求を満たしてくれました」(同)

 実際、あつ森発売前は週に5万台前後だったスイッチの出荷台数が、発売週は40万台にまで増えたという。スイッチを持っていない、つまり、普段は積極的にゲームをやらない人があつ森目当てに本体ごと購入した結果、出荷台数が飛躍的に増加したと推測できる。

人気住民の「amiibo」は2万円近くに高騰

 あつ森は日常的にゲームに慣れ親しんでいない人もプレイするケースが多く、そうしたプレイヤーはSNS上で持ちかけられる取引への警戒心が薄いため、ターゲットになりやすいというわけだ。

「特に、今作から島で暮らすどうぶつたち、つまり『住民』を交換できるシステムを見つけだした人がいて、ネット上では住民の交換が盛んに行われています。住民は家具などのアイテムと比べて入手できる機会が少ない上、移住してくる住民をプレイヤーが選ぶことはできません。そのため、欲しい住民を確実に手に入れるために、トレードを求める人が多いのでしょう」(同)

 A氏曰く「住民が島に移住する方法は4つある」という。そのうち3つの方法は、やってくる住民を選べない、完全ランダム式だ。

「今作に登場する住民は約300種類。そのなかから、自分の島に住み着いてくれる人数は最大10人です。定員に達した後は、すでに定住している住民が引っ越して新たな住民が来て……ということを繰り返すわけですが、そこで目当ての住民が移住してきてくれるかどうかは運次第。スマホゲームの“ガチャ”のような仕様なのです。しかし、SNS上での交換なら、お金を出せばすぐに目当ての住民を手に入れることもできます。そうした心理をうまく突いて、詐欺行為が横行していると考えられます」(同)

 多くのプレイヤーが欲する住民は3000〜8000円程度で売られているという。また、人気のキャラクターが自分の島にいることをSNSでステータスのようにひけらかすプレイヤーもいるそうで、それにつられるように、一部の人気住民のレートが高騰している状態のようだ。

 SNS上のやり取りを見ると、同じ高レートの住民でも、住民そのものよりも高額でやり取りされている代物がある。その住民のイラストが印刷された「amiibo」というカードだ。このカードは、超人気住民であれば、大手フリマアプリでは1万4000〜2万円近くで売買されている。

「amiiboは、カードに印刷されている住民を自分の島に呼び出せるアイテムなので、お目当ての住民を確実にゲットできます。さらに、その呼び出し回数には制限がないため、転売屋からすると“金のなる木”なのです。このamiiboは以前のどうぶつの森シリーズに登場したアイテムなので、あつ森発売時には品薄状態で、出荷が間に合わずに6月現在も新品はほぼ売られていません。任天堂の発表によると次回の出荷は11月末で、今でも手に入りづらいアイテムなのです。そのため、純粋に住民を呼び出したいプレイヤーも、『商品』として住民を入手したい転売屋も、喉から手が出るほど欲しいアイテムといえます」(同)

女性になりすます“あつ森ナンパ”も問題に

 リアルマネートレードや住民のトレードにおける詐欺行為などと同様に問題となっているのが、あつ森を利用したナンパ行為だ。

 ゲーム内でのナンパ行為自体は昔からあるが、あつ森はプレイヤー数が膨大な上、ゲームに慣れていないプレイヤーも多いため、ナンパ師にとっては最高の狩り場になっているという。ナンパ師はレアアイテムやレア住民の交換などを持ちかけることもなく、単純に「一緒にゲームをしようよ」と声をかけることも少なくないそうだ。やり口はリアルナンパと変わらないが、やっかいなのが、女性になりすまして声をかけるケースがあることだ。

「SNSやあつ森のアカウントでは、実際は男性でも女性になりすますことができます。同性だからと安心して仲良くなり、『実際に会おうよ』と誘いだされてオフラインで会ったら相手が男性だったというのは、オンラインゲームを介してのナンパでは珍しくありません」(同)

 ツイッターで「あつ森 住民 交換」と検索すると、交換を希望するツイートが大量に表示され、その多くは10〜20代だ。なかには、プロフィール欄に在籍している中学校名を記載しているアカウントもあった。小中学生のプレイヤーも、ターゲットになりかねないということだ。

「あつ森をプレイしている子どもの親は、SNSへのアクセスそのものを制限するのが早いと思います。詐欺行為やナンパ行為を働こうとしている人と出会いさえしなければ、あつ森はなんの危険性もない安全なゲームです。そのため、対策としては、SNSのフィルタリングなどを設定するのが有効ではないかと思います」(同)

 もうひとつは、テレビで啓発CMが放送されている「みまもり設定」だ。これは「Nintendo みまもり Switch」という保護者向けアプリを使うことで、スイッチ本体のプレイ時間を制限したり、ソフトごとに他プレイヤーとのコミュニケーションを制限したりできる。アプリを利用している親にプレイ状況が筒抜けになるため、子どもが知らない人と交流する機会を減らすことができる。

 みまもり設定を使う際には、2つの注意点があるという。小学6年生の息子のスイッチにみまもり設定を搭載している主婦の林さん(40歳・仮名)は、こう語る。

「1日のプレイ時間を何時間にするのかはもちろん、設定時間を超えたら注意アナウンスで済ませるのか、強制終了にするのかを親側で決められるため、その限度を子どもと相談するのが大事です。うちはコロナでの休校期間に朝から晩までやり続けていたため、1日1時間までで時間になったら強制終了するよう、息子と話し合い、納得の上で設定しました」(林さん)

 もうひとつは、パスワードのこまめな変更だ。

「設定を変更するためにはパスワードが必要なのですが、うちの子は私が設定を変更しているときにパスワードを盗み見たようで、勝手に利用制限時間を延長していました。うちの子に限らず、抜け道を見つける子どもは多いと、ママ友から聞きました。その対策として、子どもが推測できそうなパスワード(誕生日、生まれ年、車のナンバープレートなど)は避け、こまめに変更することをおすすめしますね」(同)

 先日、夏の大型アップデートも行われ、ますます人気が高まるあつ森のプレイヤーは、今後も増えていくことが予想される。ゲーム内の島では、トラブルとは無縁の安全なスローライフを楽しんでほしい。

(文=鶉野珠子/清談社)