(ブルームバーグ): 日米両政府は25日、貿易協定交渉で前週に続き閣僚級協議をワシントンで開いた。安倍晋三首相とトランプ米大統領による首脳会談を翌日に控え、自動車や農産品といった物品中心に関税撤廃や削減を協議し、早期合意を目指すことで合意した初会合の内容を再確認。為替条項の扱いを巡っては双方がそれぞれの要求を主張、平行線に終わった。 

   日本側からは交渉責任者の茂木敏充経済財政・再生相と麻生太郎財務相が出席。 米通商代表部(USTR)のライトハイザー代表との再協議に臨んだ茂木敏充再生相は、会談後記者団に、「物品貿易の議論で日米ウィンウィンとなる成果の早期実現へ率直に議論した」と述べるとともに、「焦点は見えてきている」と説明した。自動車数量規制を求める要求は米側から出なかったという。

  為替条項を盛り込みたい意向を示してきたムニューシン米財務長官と会談した麻生太郎財務相は、日米協議で貿易政策と為替政策をリンクする議論には日本として「賛同しかねる」と反対したことを明らかにした。米側から為替で要求あったかには言及しなかった。今後の扱いについては財務相間で議論していくことを確認した。財務省幹部は会談後、農業や自動車、サービスなどの協議が先行し、為替はその後になるだろうとの見方を示した。

  米財務省報道官は会談後の声明で、ムニューシン財務長官と麻生財務相が「日米経済関係の重要性を再確認」するとともに、「6月の20カ国・地域(G20)財務相会議に向けた準備について話し合った」と説明。さらに、ムニューシン、麻生両氏が「中国や北朝鮮、イラン制裁を含む他の重要問題も議論」したことを明らかにした。

  日米両政府は今月15、16両日ワシントンでの同交渉の初会合を開催。茂木再生相とライトハイザー代表は、農産品や自動車などの物品分野の話し合いを開始し、「できるだけ早期の合意を目指す」ことで一致。デジタル貿易についても「適切な時期」に議論する方針を確認した。米国側は巨額の対日貿易赤字削減に強い意欲を示した。

  米トランプ政権は17年1月に環太平洋連携協定(TPP)から離脱し、各国との個別交渉に転換。日本に対しては対米貿易黒字の縮小を求めるとともに、昨年3月に鉄鋼・アルミの追加関税を適用し、日本車への追加関税も検討。昨年9月の日米首脳会談で、同交渉中は日本車への追加関税適用は回避されることを確認している。

  日本は、欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)や米国を除くTPP11に相次ぎ合意し、米国の保護主義的な通商政策に対抗してきた。経済連携協定に乗り遅れた米国の農家は、米農産品を多く輸入する日本市場でのシェア低下を懸念。昨年9月の日米首脳会談の共同声明では、農産品の市場アクセスについては過去の経済連携協定で約束した条件内容が最大限との認識を共有している。

  為替については、17年2月の日米首脳会談で、財務相間で議論されることに合意しており、今回の財務相会談でも、貿易協議に為替を入れ込むのか入れ込まないかという取り扱いを含めて、今後議論していくことを確認した。ムニューシン米財務長官はこれまで、貿易協定に通貨安誘導を防ぐ為替条項を含めることを要求してきた。麻生財務相はこれに対して、為替変動と貿易収支に相関性はないとして、「共通の認識はできている」との見方を再三示していた。    米国は北米自由貿易協定(NAFTA)に代わる新協定(USMCA)に為替条項を盛り込むことでメキシコ、カナダと合意、中国との貿易交渉でも導入を要求している。

  国際通貨研究所の渡辺博史理事長(元財務官)は、日本は東日本大震災後に円高となった2011年秋以降為替介入を実施しておらず、為替条項で封じる対象が、「為替介入だけであれば考える余地がある」と指摘。一方、自国通貨の価値に影響を与えるすべての政策が対象となった場合、ゼロ金利政策は通貨安誘導だという隙を与えかねず、「為替政策ではなくマクロの金融政策まで、よその国の話に首を突っ込める話になってしまう」とし、その可能性は排除すべきだとの考えを示した。

(米財務省報道官の声明を追加して更新しました.)

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