(ブルームバーグ): 欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁は欧州債務危機さなかの2012年に「何でもやる」発言でユーロを救ったことで有名だが、そのマジックは薄れつつあるようだ。6日には追加利下げと量的緩和(QE)再開も辞さずとインフレ回復に強い「決意」を表明したが、市場は信じなかった。

  発言にもかかわらず、トレーダーらは利下げ観測を後退させた。ドイツ国債のイールドカーブは平坦化して経済見通し悪化を示し、市場のインフレ期待を示す指標は過去最低付近で終了した。

  ドラギ総裁は米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長に比べ手持ちの弾薬が少ない。ECBの金利はまだ過去最低水準にあり、バランスシート圧縮も始まっていない。その上、ドラギ総裁の任期はあと5カ月もない。

  コメルツ銀行の債券戦略責任者クリストフ・リーガー氏は「ドラギ総裁がインフレを回復すると考えるのは希望的観測だと市場はみている」と指摘。「不測の事態について話すのはたやすいが、インフレ期待の低下を反転させるには行動が必要だ」と述べた。

  一方、ABNアムロのエコノミスト、ニック・コーニス氏は「ドラギ総裁がどうやったらこれ以上ハト派的になれるか思いつくのは難しいくらいだった。QEと利下げに明示的に言及し、これらが選択肢だと極めて明瞭に示した」と述べ、「一致しない」市場の反応に首をひねった。

  欧州の短期金融市場は、ECBの中銀預金金利が2020年6月までに0.1ポイント引き下げられる確率80%を織り込んでいる。6日の政策委員会の前には同年3月までの利下げ確率を100%織り込んでいた。

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