(ブルームバーグ): 日米両政府は25日の首脳会談で、2国間貿易交渉に原則合意し、9月末の協定署名を目指すことで一致した。現時点では、米国が検討する日本製自動車・部品への追加関税25%の発動回避は確約されておらず、市場では米国側に今後の交渉カードを残した形になったとの見方が出ている。

  安倍晋三首相とトランプ米大統領は、フランス・ビアリッツでの会談で、日本側が牛肉や豚肉など米国産農産品の関税を環太平洋連携協定(TPP)水準まで引き下げる一方、米国が自動車を除く一部工業品関税を引き下げることなどで原則合意した。ただ日本が求めていた自動車・同部品の関税2.5%撤廃・引き下げは見送られたほか、米国による25%追加関税発動の回避も確約されていない。

  みずほ総合研究所政策調査部の菅原淳一主席研究員は、貿易交渉中は適用されないことで合意している日本の自動車・同部品に対する米通商拡大法232条に基づく輸入制限措置について、今後の扱いが明らかにならなかったことなどから、「重要な部分がかなり先送りされており、日本にとって良い合意になるのか判断するのは時期尚早」との見解を示した。

  その上で、「コメも乳製品も枠はなく、牛肉・豚肉もTPP水準なので、それだけ見ると日本としてはかなり上出来となるが、それが最終形かどうか分からないところが一番怖い」と指摘。今後、自動車関税について再協議することになれば、「米国側から当然、コメや乳製品の問題が出てくる可能性がある」とし、少なくとも9月の署名まで評価を待つ必要があると述べた。

  菅義偉官房長官は26日の会見で、「日米共同声明に沿って関係閣僚で一致したわけで、極めて有意義なことではないか。米国側に押し切られたという指摘は全く当たらない」と述べるとともに、署名に向け残された課題の交渉を加速させる方針を示した。

  伊藤忠総研の武田淳チーフエコノミストは、米国が合意を急いでいる中で、今回の結果は日本側が「少し譲歩し過ぎている感じ」と指摘。ただ自動車追加関税を回避して、「数量制限も多分ない。為替についても一応ノーコメントなので、無難なところに落ち着いた」との見方を示した。

  農林中金総合研究所の南武志主席研究員は、「予想の範囲内。特に変な譲歩もなかった」と評価した上で、米国は「今後とも日本とか欧州連合(EU)に対して自動車への追加関税を交渉のカードとして使い続けるだろう」との見方を示した。

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