(ブルームバーグ): 選挙戦終盤に差し掛かったジョンソン英首相にとって、国内の優美な田園地帯で過ごす今週の数時間が最大のリスクになる可能性がある。

  ジョンソン首相は今週、選挙運動を中断し、ゴルフコースと温泉施設付きの高級リゾートで北大西洋条約機構(NATO)首脳会議を開催する。閑静な環境だが、ジョンソン氏側近らは総選挙の勝利を揺るがす事態が発生することを恐れている。その悪夢のシナリオをもたらす可能性があるのは、同盟国である米国のトランプ大統領だ。

  12日の総選挙を控え、ジョンソン氏追い落としを狙う野党・労働党のコービン党首にとって、トランプ氏は最も期待できる危険な武器になり得る。コービン氏の主張はシンプルだ。ジョンソン氏とトランプ氏は右派的な信条を共有する気の合う友人であり、英国が大事に守ってきた国家医療制度(NHS)を前例のない脅威にさらすというものだ。

  コービン氏によると、ジョンソン氏が議会で過半数を確保し欧州連合(EU)離脱を完了すれば、米製薬業界のNHS参入を認める自由貿易協定締結に向けて米国との協議を急ぐ。薬価は跳ね上がり、英国市民にとって無料の医療制度は永遠に失われると、コービン氏は説く。

  英与党・保守党は米国との貿易交渉でNHSは対象にならないと繰り返し強調しているが、有権者の関心は高く、選挙戦が始まるかなり前からジョンソン氏らの頭痛の種となってきた。そして選挙のちょうど10日前に当たる2日にトランプ氏は英国にやって来る。トランプ氏とジョンソン氏が並んで立つ写真を、コービン氏が最大限利用しようとするのは間違いない。

  保守党幹部らは内々に、最も不安なのはトランプ氏が予想外の行動に出ることだと打ち明けた。1人はこれが選挙戦で最大のリスクだと指摘し、トランプ氏が軽率なコメントを控えるとは信用しかねると語った。

©2019 Bloomberg L.P.