(ブルームバーグ): ヘッジファンド業界は鼻っ柱の強いプレーヤーに事欠かないが、クリス・ホーン氏ほど手ごわい相手も少ない。合併などを阻止したりトップを交代させたり、企業を訴えたり脅し同然の行為もある。こうした攻撃的なアプローチをてこに、ホーン氏のTCIファンド・マネジメントは昨年、世界の大型ヘッジファンドの中で最高の成績を上げた。

  ホーン氏は今、その強硬な戦術を地球温暖化との闘いに持ち込んでいる。 同氏は温室効果ガスを劇的に削減し二酸化炭素(CO2)排出量を開示するよう、TCIの投資先企業に迫っている。そうしなければ取締役を退任させるか株式を売却すると言って圧力をかける。

  自身のコミットメントを示すため、昨年秋には気候変動対策を求める急進的な団体のエクスティンクション・リベリオン(XR)に20万ポンド(約2900万円)を自分の慈善団体の分も含めて寄付した。

  資産運用会社GMOの共同創業者で気候変動についてかねて警鐘を鳴らしてきたジェレミー・グランサム氏は、「化石燃料との闘いでは、協力する相手をえり好みしてはいられない」と指摘した。ホーン氏は「圧力をかけることで企業に大きな影響を与えることができることを示した」と述べた。

  20億ドル(約2200億円)の資産を持つホーン氏(53)にとって自身のキャンペーンは、地球の危機を無視している資産運用業界を変える最初の一歩にすぎない。同氏はCO2排出削減を企業に迫らない運用会社と取引を打ち切るよう投資家に呼び掛けるほか、気候変動問題を無視する企業への融資を銀行にやめさせたいとも考えている。

  ただ、環境問題への強い熱意の一方で、同氏の投資が全てグリーンなわけではない。TCIはインドの石炭会社に大きく投資した時期もあり、現在も、大量のディーゼル燃料を消費し化石燃料を運ぶ鉄道会社3社の株式を所有している。

  ロンドンの投資会社、シュミット・リサーチ・パートナーズのジェイコブ・シュミット最高経営責任者(CEO)はホーン氏について、「環境に優しくあろうとしている一方で環境を汚染する企業で金を稼いでいる」と指摘する。

  ホーン氏は、CO2排出企業を無視するより、そうした企業に関わる方がはるかに生産的だと主張。TCIは昨年 11月30日、ポートフォリオ企業17社のCEOに修正すべき点を具体的に指示する書簡を送った。目標を達成しない企業の取締役や「重大な気候リスク」を報告しなかった監査法人に不信任票を投じ、場合によっては全株式を売却すると警告した。

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