(ブルームバーグ): 経営再建に取り組む日産自動車は年間約3000億円規模の固定費削減を進め、追加のリストラ費用も計上する方向で検討している。事情に詳しい関係者が明らかにした。新型コロナウイルスの感染拡大で需要が激減する中、事業の立て直しを急ぐ。

  公表されていない情報だとして匿名を条件に語った関係者によると、日産が今月28日に決算と同時に発表する予定の今後3年間の中期経営計画では新興国市場向けのブランド「ダットサン」の段階的な廃止のほか、最近生産から撤退したインドネシアに加えてさらに生産ラインを一つ停止する予定。

  同計画では現在の日産の年約700万台の生産能力を540万台まで削減することを想定しているという。また研究開発や生産、マーケティング分野などを中心に計3000億円規模の年間固定費削減を年内に目指す。

  関係者らによると、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大で同社を含む自動車業界が甚大な被害を受ける中、日産の業績は悪化しており、新中計での追加リストラ策は従来の想定より厳しい内容になる見通し。それに伴う費用は今月発表予定の決算に計上する方向という。

  これらの計画は28日までに開催される取締役会で精査される予定で、変更される可能性もあるという。

  日産が2月に発表した業績見通しでは2019年度の売上高は前年度比12%減の10兆2000億円としているのに対し、関係者によると新中計では3年の間に引き下げた固定費の水準を維持しつつ売上高を11兆5000億円に回復させることを目標にする。

  日産広報担当の百瀬梓氏は電子メールでの取材に28日に決算と合わせて中計の見直しを発表の予定とした上で、「将来の商品計画など、具体的な内容についてはコメントしない」と述べた。

  日産は昨年、生産能力を削減することで稼働率を86%程度まで上げるとの目標を掲げた。しかしその後も販売低迷には歯止めがかからず、19年度の世界販売台数は約479万台と大幅減となり、余剰生産能力のさらなる削減が課題となっていた。

  関係者によると、生産能力の削減により日産の工場稼働率は80%程度になる。中計の見直しに伴う構造改革費用の規模はまだ決まっていないという。複数の関係者によると、経営合理化策の一環としてタイやインド、ベトナム、台湾など多くの国で展開している研究開発拠点の合理化なども検討されているという。

  また主力市場である米国、中国、日本に注力するのに伴って新興国向けのダットサンブランドを廃止する一方、高級車ブランド「インフィニティ」は強化していくという。

待ったなし

  日産は18年11月にカルロス・ゴーン前会長が逮捕されて以降、経営が大きく混乱し、業績の悪化が鮮明化した。新型コロナウイルスの感染拡大により販売不振に拍車がかかる中、日産は前期に11年ぶりの通期赤字となるとの見通しを明らかにしており、経営の立て直しは待ったなしの状況だ。

  内田誠社長兼最高経営責任者は3月のインタビューで、固定費の削減について足元の販売急減や新型コロナの影響など経営環境の激変を踏まえて「もう一段踏み込んだことをやっていく必要性」があると話していた。 

  日産の主力市場の1つである中国では新型コロナが収束に向かう中、明るい兆しが見えてきている。中国自動車工業協会(CAAM)の暫定集計によれば、中国の4月のディーラー向け自動車販売台数は18年6月以来の前年同月比での増加となった。

  アシュワニ・グプタ最高執行責任者は2月の決算会見で、北米市場では今後2年間で8車種の新車を導入する方針を明らかにしており、今後は新車効果で世界販売のてこ入れを図る。

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