(ブルームバーグ): 1月15日。米国と中国は新たな冷戦に突入するのを回避したかのように見えた。

  ワシントンでは、トランプ米大統領が中国との第1段階の貿易合意に署名し「中国との関係はこれまでで最高だ」と述べた。トランプ大統領と中国の習近平国家主席の合意は世界の超大国である米国が台頭する中国との意見相違を平和的に解決できるとの期待感を高めた。

  それと同じ日、中国湖北省武漢市の保健当局は市内の新型肺炎患者41人について、人から人への感染を否定できないことを認めた。また、新型コロナウイルス感染症(COVID19)と後に称されるこの病気の感染が米国で初めて確認された男性が、武漢から帰国しワシントン州の自宅に戻ったのもこの日だった。

  あれから4カ月。新型コロナは少なくとも1世紀で最悪の世界的健康危機を引き起こし約30万人が死亡。世界経済は深刻な不況に陥った。米中関係に関する最悪のシナリオを全て復活させ、40年前の国交正常化以降で最も激しい対立に近づいている。

  サプライチェーン(供給網)や査証(ビザ)、サイバー空間や台湾などを巡り世界の2大経済大国は、複数の分野で論争をエスカレートさせており、トランプ大統領は米中の対立激化を防ぐための数少ない成果である第1段階の貿易合意についてすらいら立ちを表明した。14日には中国の習近平国家主席と今は話をしたくないと発言し、中国と断交した場合に米国は「5000億ドルを節約できるだろう」とも述べた。

  11月に米大統領選挙を控えて対立はさらに表面化する公算が大きい。トランプ大統領は新型コロナ感染拡大で再選の可能性が損なわれる中、今回の混乱を巡り中国を非難。大統領選で民主党候補指名獲得が確実とされるバイデン前副大統領や議会、複数の州も同調している。一方で習政権は、輸出鈍化と失業増加を受け数世代で最悪の景気悪化に見舞われる中で国家主義的な姿勢を強めている。

  最高指導者、鄧小平氏の通訳を務めた経歴を持つ高志凱氏は「COVID19が米中両国に与えた打撃は両国の関係を限界点にまで悪化させたようだ」と述べ、「1979年の国交正常化以来、中米関係が今日ほど危険で対立的になったことはない」と指摘した。

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