(ブルームバーグ): 日産自動車は28日、前期(2020年3月期)の純損失が6712億円だったと発表した。事業規模適正化に向けた固定資産の減損損失などにより、これまで示していた見通しから赤字幅が拡大し、カルロス・ゴーン元会長が経営危機に陥っていた日産に大ナタを振るった00年3月期以来の巨額の赤字となった。

  日産の決算資料によると、前期は自動車事業用資産に関して減損損失として5220億円を特損計上したことなどが響いた。今期(21年3月期)の業績予想については新型コロナウイルスが事業に与える影響が未確定で合理的に算定するのが困難な状況だとして未定とした。

  今期の配当予想も未定とした。前期の年間配当は1株当たり10円と前の期から47円の減配。

  日産は同日、新たな中期経営計画を発表。24年3月期までの4年間で生産能力を20%削減して540万台体制とし、稼働率を80%以上に高めるなどの措置で年間固定費を18年度比で3000億円削減する計画を正式に発表した。

  さらに、不採算商品の打ち切りなどによりモデル数を20%削減する。スペイン・バルセロナ工場については閉鎖に向けて協議と準備を進めるとした。ビジネスチャンスが限られているとして韓国市場からも撤退するという。

  仏ルノー、三菱自動車のパートナーとの協業も強化。日産は日米中を中核市場と位置付けて注力。中期計画の期間中に営業利益率5%や市場シェア6%を目指す。

  日産の内田誠社長兼最高経営責任者(CEO)は横浜市内の本社での会見で、前期の業績を踏まえて自身とアシュワニ・グプタ最高執行責任者(COO)が業績連動報酬を全額辞退することを明らかにした。基本報酬についても上期(4−9月期)は内田氏が50%、それ以外の役員は20ー30%カットするという。

  内田社長は当面の新型コロナウイルスの影響を踏まえても手元のキャッシュは十分にあるとし、「コロナの状況が7月以降は回復していく見通しのもと、ささまざまな準備とシミュレーションをしている」と話した。

V字回復は不透明

  ゴーン元会長の時代に拡大した値引きの抑制や新型車の投入の遅れなどで低迷してきた日産の販売は新型コロナの影響が重なったことでさらに悪化した。感染が中国から欧米などにも拡大したのに伴い、日産の世界販売は2月、3月と大きく落ち込んだ。20年3月期の世界販売は前年比13%減の479万台と生産能力を大きく下回っていた。

  1999年に経営危機に陥った日産は2000年3月期に6844億円の赤字を計上。日産に出資したルノーからCOOとして送り込まれたゴーン元会長の指揮の下、工場の閉鎖や人員削減を断行しV字回復を遂げた。  

  そのゴーン元会長の逮捕後、日産は昨年7月、22年度までに1万2500人規模の人員削減と生産能力を約60万台減らし660万台とすることなどを柱とする事業計画を発表したが、わずか1年弱で見直しを迫られた。

  欧米や日本などで経済再開に向けた動きが広がる一方、新型コロナ感染拡大の第2波に対する警戒感が広がっており、かつてのような業績のV字回復の達成に向けては不透明感が漂う。

  しんきんアセットマネジメントの藤原直樹運用部長は前期の純損失の規模について「結構思い切った印象」だと指摘した。

  「数字だけみるとネガティブな印象でとらえられる可能性もある」としながら赤字決算でも現時点で日産の財務面に問題はなく、余裕のあるうちにスピード感を持って思い切った施策を取った点は評価できるとし、「立ち直りも早いのではないか」と話した。

(決算会見での日産幹部のコメントや識者のコメントを追加して更新します)

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