(ブルームバーグ): 外国人投資家が見込み違いで先物の買い戻しを迫られ、日本株を意外な水準まで押し上げた。ただ、特別清算指数(SQ)算出という来週の需給イベントを通過すれば、高値波乱となる可能性を指摘する声も出ている。

  新型コロナウイルスの感染拡大を受け、海外勢は2月3週に日本株先物(ミニ含むTOPIX、日経平均株価の合計)で1年4カ月ぶりとなる大幅な売り越し(約1兆4000億円)を記録。5月2週までの約3カ月で、売越額は計約4兆800億円まで膨らんだ。半面、5月3週、4週の2週間では先物を一転して約7400億円買い越した。

  三井住友DSアセットマネジメント・調査部の生永正則氏は「欧州中心とみられる海外勢は新型コロナをきっかけに流動性の高い日本株のポジションを落とし、ヘッジや投機も交えて先物を思い切って売った」と語る。しかし、「日銀ETF買いで思ったほど株価は下がらず、損失を抱えた先物のポジションは残ったまま。慌てて上値で買い戻さざるを得なくなっている」と言う。

  日経平均は3月19日にことし安値1万6358円を付けて反転し、5月以降は世界的な経済活動再開期待から上げに拍車がかかり、2万3000円に急接近した。来週12日にオプションとともにSQ算出を迎える株価指数先物6月限は、3月に1万7000−1万8000台水準で連日大商いとなっていた。先物の売りはいずれ反対売買する必要があり、3カ月ぶりのメジャーSQがポジション整理の機会となる。

  海外勢が買い戻しを迫られた背景には、株高でも利益確定売りが出にくいという需給環境の特殊性があった。日銀は3月16日、上場投資信託(ETF)の年間残高増加ペースを約6兆円から上限約12兆円へ引き上げた。2月3週から5月2週までに買い入れた通常のETF計3兆4284億円は、この間の海外勢の売越額の8割程度に匹敵した。

  大和証券投資情報部の石黒英之シニアストラテジストは「日銀や信託銀行、企業の自社株買いが下落場面で海外勢の売りを吸い上げた」と指摘。これらの主体はいったん買えばすぐに売らない。利益確定売りが出づらいために「ちょっとしたボリュームでの買い戻しでも値幅が出やすくなっている。買い戻し余力は大きい」と言う。同氏によると、海外勢の日経平均の先物売りコストは5月2週時点までで2万0100円。

  ゴールドマン・サックス証券が今月に入ってTOPIX先物を大量に買い越すなど、海外勢の先物の買い戻しは足元で一段と加速している。もっとも、売りが乏しい中での踏み上げ相場はテクニカル的な過熱感も生みつつある。東証1部の上昇・下落銘柄数の百分比を示す騰落レシオは150%まで上昇し、経験則的に「過熱気味」とされる120%以上を大きく上回る。

  バンク・オブ・アメリカの山田修輔チーフFX・日本株式ストラテジストは、このところショート気味のアセットで買い戻し主導の上げになっていることから、「上がったところは慎重になるべき」と指摘する。同氏は「来年の海外経済は回復基調に入るが、かなり緩慢な回復が予想される。企業業績もそれほど伸びない」とみる。

  「特殊な買い戻し局面だからこそ株価は値幅を伴って大きく戻った。買い戻しが終わった後に純粋な相場観から判断して、この株価を維持できるかは難しい」。三井住友DSアセットの生永氏は、ことし3月が象徴するように、需給の節目であるメジャーSQで株価の方向性が変わることも過去に多かったとし、「短期的には急伸相場はせいぜいSQ前後まで。買い戻しが一巡したらそろそろ注意が必要」とも話していた。

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